英語。

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途中だがちょっとこの話。「就職有利・不安...ほぼ全講義を英語化する国立大」(Yomiuri Online)ということで、山梨大学が「ほぼすべての講義でテキストを英語の書籍とし、英語で講義することを決めた」という報道だが、そもそも高等教育を英語で行なうのが望ましいかどうかという話は横に置いておいて大丈夫なのかこれは

* * *

まず記事内容について補足すると、全学的に英語による授業だけで学位取得まで終えることができる大学というのは確かに国際教養大学くらいしか聞いたことがないが、同趣旨の課程(学部とか学科とかコースとか)は他大学にもそれなりにあり、2009年にはグローバル30というプロジェクトで13大学が選定され、すでに教育も始まっている。名古屋も選定校に含まれており、5学部で5コースが設置されていたり他大学には珍しい社会科学系の教育をやったりしている。いや正直山梨大とかグローバル30のときに申請すらしていないわけでなにをいまさら感のただよう話ではあるのだよな。でまあ私のように英語講義にさんざん動員されている身からすると、主な懸念は以下の三点になる。

第一には生産される人材と社会側の需要のマッチングという問題で、まあ基本的に学生は従来通り日本で中等教育を終えた日本人を考えているのだろうから日常会話などは問題ないとしても技術に関する話が日本語でできないエンジニアとか企業は採用してくれるんだろうか。あるいは医学部の講義を英語でやって医師国家試験に受かるのかとか、そういう話。

第二には教員の能力の問題で、名古屋大学の経験からもはっきり言えるのは担当可能な教員がごく限定されていること。印象としては、特に文系がひどい。理由はいくつかあるが、(1) 理系は少なくとも論文の読み書きで英語を多用しているのに文系はそうではないとか、(2) 理系教員の方が本格的に留学している可能性が高いとか、(3) 留学していても文系だと独仏などで英語以外を使う環境が相当にあるといったあたりだろう。私学の雄W大学が国際教養学部を作った際に英語で講義のできる法学者・政治学者を全国から買い集めたので人材が枯渇したと、某政治学者が言っていた。本当かどうかは知らない。しかし国際教養大学もそうだが新設であれば英語能力を条件に入れて教員採用を進めることができるところ、現在いる教員がやるという話だとまあ大いに不安だよねえという話。

第三は学生の方で、たとえば名古屋大学のG30だと応募条件としてTOEFL 550点(PBT)というのを要求している。これはまあ留学生と帰国子女を前提にしたものなので多少は妥協するとしても、大学レベルの専門教育をするのであれば500点くらいの実力は学生側にも必要になってくる。それでその、そのレベルの高校卒業者というのがどのくらい日本にいるかというのと、いたとして山梨大学とか受験しますかねという話。

正直に言えば理念としていいかどうかという議論以前に現実化能力がないんじゃないかと(第三者としては)疑う話。大学本部がそういう決定をしたのかもしれないが学部レベルで話が通っているのかとか、今後の展開が注目されるところです。どっとはらい。


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同感です。医学の場合、日本語で教育しても基礎医学の場合、学生サンの理解は今ひとつという状況があります。しかも、文科省の方針でベッドサイド教育を増やすんだそうで、そうなると、今よりも学力が不十分な時期に基礎医学教育をやることになります。ますます理解不足になる可能性は大です。
1970年代に大学にいた私たちの頃は、日本語で良い教科書がなかったこともあって、大半の科目が英語の教科書を使っていました。講義自体は日本語をベースに古い教授はドイツ語まじり、若い教授は英語まじりでしたが、日本語の専門用語ですら覚束ないのに、英語の教科書というのは大変でした(私が英語が苦手なせいもあるのでしょうけど)。今の学生サンがかつての私たちより英語が得意ということもなさそうですし・・・。
で、もう一つ、そういう英語教育を受けた学生サンが卒業したとして、大半は日本人相手の医者をやるワケですよね。英語がどこで役に立つのか、良く判りません。もちろん、在日外国人が増えることには対応できるでしょうけど、大半の患者サンは日本人です。大半の患者には役に立たない英語を、教育効果の効率を下げてまで強制する意味が実は良く判りません。
あ、一応、国外の大学での正規の教員歴はあります。

渦中の中の人です(笑)

これは新聞の勇み足というか、USO800というか…。

実際には「グローバル化推進の一環として、25年度から講義に用いる教科書に少しずつ英語テキストの導入をお願いします」というレベルの話で、それも「いつまでに」ということすら言われていません。
「英語で講義」とか「入試では英語に高い比重を」とか、一体どこから出てきた話なのか...と上の人も火消しに躍起になっているようです。
学生がニュースを聞いてビビッていましたが、何よりも当の教員が驚愕したというところです、はい。

学生は大学を選べますので、日本人相手の医者だけをやるならそんな大学には行かなければいいのではないでしょうか。

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