公務員住宅(おまけ2)

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チャイナタウンでバスを待っていたら白人警官2人がパトカー2台で乗り付けてきてベンチに座っていた黒人のおいちゃんに何やら質問していると思ったら立たせて後ろ手に手錠かけてパトカーのボンネットに伏せさせて持ち物検査始めたよ(挨拶)。昨日はいきなり「よう3ドル持ってるか、3ドルくれよ3ドル」とかわめく乗客が後ろの方にいて運転手さんが無線で支援を求めはじめたしやべえバス面白い

ところで待遇を悪くしても公務員は辞めないとか良い人材が民間に行くのはいいこととか言っている人がおり、あれだな幸せな人だなと思う。どういうことかというと、

(1) まあご近所で見かける地方公務員とか出先機関の国家公務員の皆さんというのは正直あまり他に能力・技能を生かせる場所がないかもしれず、多少待遇を切り下げたって辞めないよと言われたらそうかもと思う。だがそれは霞が関の官僚に当てはまる話ではない。というかもともと彼らは人事構造上一定のペースで本省を辞めて次の人生に移らなければならないのであり、従来はこれを計画的に実現するためにいわゆる「天下り」が使われてきたところ、それ以外のルートで早期辞職して別のキャリアに移る人が増えてきたという話はあちこちで指摘されている。

一つの実例は、実は民主党の国会議員のなかに結構見受けられる元官僚の人たちであり、もちろん自民党にも元官僚の人たちはいたのだがそれと比べて政界に転じるのが十年くらい早いと指摘されていた。典型的には同じ財務省出身の片山さつき氏(自民党)と故・永田寿康氏(民主党)で、前者が在省23年・主計官経験後の課長で辞職しているのに対し、後者は在職6年で転身している。民主党では他にも、野田内閣の(政務官等を含めた)名簿から見るだけで古川元久氏(財務省6年)、北神圭朗氏(財務省10年)、末松義規氏(外務省14年)、大串博志氏(財務省16年)などが見受けられ、全体的に(天下りの対象になるような年代よりは)かなり早く転身していることが見て取れる。

あるいは学界やシンクタンクもあり、まあ典型的には岸博幸氏(経産省18年)とか、朝比奈一郎氏(経産省13年)の青山社中とかそういう話であろう。もっと真面目に学問の道に転じた方も、当然おられる(まあ私の同僚とかな)。もう脱出は加速しているし、若年化しているんだよねという話は踏まえておいたほうがいい。

そもそも霞が関に来ないよねという話もある。法科大学院制度が始まって法曹ルートの成功率がかなり高くなったことや、外資系企業への就職が増えてきたことなどを背景に官界の志望者が減ってきたという話は、少なくとも関係者の経験レベルではかなり出ている(新司法試験制度が定着してどうなったかという話もあるが)。2005年に農林水産省のキャリア組内定者のうち東大法学部卒業者がゼロになったとか、2007年には従来年間100人水準だった東大法学部からの官公庁就職者が66人まで落ち込んだという報道もある。まあでもこういう変化は普通の人の日常からは見えないんだろうねと、そういうことでもあろう。

(2) 一方、まあしかし民間に優秀な人材が集まるのは良いことではないかという議論は別途検討する必要がある。脱出傾向があっても、仮にこのような議論が成り立てば逆に良いことかもしれない......のだが結局それがどうなるかというとアメリカ社会だよなと。ウォール街に集まった優秀な人材が世界中から富を集めて経済活況を作り上げていたはずなのだが、要するにその実りを享受していたのは当のウォール街の特権階級だけであり、しかもドジをこいたら税金で救済される一方、国民全体で見ると再分配が縮小して貧困化が進んでいたことが露呈するようになってきている、というのが報道されているデモとかの背景にある話。オバマ政権はこの状態を是正するために富裕層課税強化を提唱しているが、まあ政権側自体の戦略に稚拙な部分があったからというのも事実ながら、富裕層に支えられた共和党に阻まれている。人材がとにかく民間に流れるというのはこういう事態につながる可能性も秘めており、そうさせないためには所得再分配をきちんと実行できるように公共セクターに人材が必要であるところそれが流出するという想定なのであった。さてどうなる

より問題なのは流出後の公共セクターの人材の品質で、まあこれは書きかけたら長くなったのでよしにして簡単にだけ言うと正直こういうこと言う人は日本以外の公共セクターの水準がどうなのか、特に一定以下に下がってまず警察官を警戒しないといけないような社会ってものが特に社会的弱者にとってどれだけ過酷かという点をナメとるよなとは思うわけである。昔ある先生がアメリカ留学中に道に迷い、たまたまパトカーが通りがかったので声をかけて知っている場所まで乗せてきてもらったそうである。ところがそのことを話すと周囲の人々からは「おまえ何してんだあいつらがどんな人間かわかってんのか」とえらく怒られたという話。アメリカでもこのレベルなわけでな(ロースクールにいるようなエスタブリッシュメントがブルーカラーである現場警察官をどう見ているかという階級社会的問題とか、ベトナム反戦的反体制的メンタリティとニクソン的「法と秩序」メンタリティの対立とかいう話かもしれんが)。

***

おまけとして、公務員たたきで国民を納得させるのは自民党時代から続いているのではないかという趣旨のご指摘もあり、これは一面その通りだがもう半面あるという気もする。つまり自民党時代はオモテでたたいてもウラで補充するという手法が結構使われていた。たとえば天下りというのも実質的な所得補填の意味を持っていたわけであるし、「給与の激変を避ける」という理由で調整手当の低い地域に転勤しても3年間は支給割合が下がらないようにしましょうとか言い、実際には地方から3年以内に戻ってくるキャリアの調整手当を東京の割合に張り付けていたりしていたわけである(この点はのちに改められた、はず)。

それはいいのか? と聞かれれば民主政における国民の主権というものをゴマかす話であってよくない、政府として上級公務員にはこれこれの待遇が現実的に必要であると考えるのならそのように国民に正面から問うべき、と思うのであるが、しかしまあ統治の民主的正統性の問題を抜きにして効率性の面だけで考えれば一応の解決にはなっている。で、問題はこのオモテとウラの使い分けをやるにも批判するにも制度に関する相当の知識がないといかんという点で、ああそういうの民主党の政治家からあまり聞かないよなあと思うわけである(自民党の若手もこの点心もとないのではないかと言われれば、そうかもしれない)。どっとはらい。

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上級公務員については同意ですが、下級公務員について異論があります。

 公的セクターの人材の品質が下がりすぎるのは問題だというのは同意ですが、今の日本の下級公務員は明らかにオーバースペックではないでしょうか?

 国民の役に立ちたいという理由から(下級)公務員になりたい若者が、公務員になれず、代わりに経済的合理性から(下級)公務員を選択した若者が公務員になるレベルの待遇は必要ないと考えます。

ご存じかと思いますが、24年度から国家公務員試験が抜本的に変わるようです。
法律も経済も詳しくないが「政策の企画立案の基礎となる教養・哲学的な考え方」は有している、というスケールの大きい新人や、ロースクールに行って30歳までに新司法試験に受かってはみたけれど、月額24万の給料で良いので是非役人になりたい、と大胆な方向転換をした志の高い新人など、「多様な」人材が25年以降は続々と入省してくるようです。

「キャリア・システムと慣行的に連関している採用試験体系を抜本的に見直すことにより、能力・実績に基づく人事管理への転換の契機とする」ということも見直しのポイントとして挙げられていますが、もはや何をしたいのか全く分からない内容ですね。

http://www.jinji.go.jp/saiyo/shiken_minaoshi.htm

>蜃気楼さん
ども。下級公務員がオーバースペックかは、正直に言ってよくわかりません。大学職員を見ていると「このくらいはできてくれえ」と叫びたくなる瞬間はあります(待遇を考えろよと逆襲されそうな予感)。学生に「○○市役所に就職しました」と報告されて、大丈夫かいなと思ったこともあります。実際には職務とのバランスになり、そこがよくわからないので断言は避けたいなあと。ただ地方上級レベルに求められる職務は今後増えていく・難しくなっていくことは確実だとも思います。
現業レベルについては、理想的水準には届いてないよねという気も、現実的に必要な水準よりは高いんじゃないかという気もします。アメリカでバスに乗っていると日本の市バスの運転手さんには感謝状でもあげたほうがいいんじゃないかという気はしてきます。
一方で、スペックを切り下げるためには「こんなもんだよね」ということについて社会的な合意が必要で、たとえばアメリカとかイギリスの社会には明確にそれがあるように思いますが、日本社会にはないような気がするなあとも思います。
より根本的には、経済的合理性から公務員を志望したくなる民間の状況を問題にした方がいいのではないかとも思います。実のところ、いまでも同一の学歴等から選択できる公務員と民間正社員の待遇を比較すると、後者のほうが高いことが多いと思います。問題は民間雇用が非正規化しているために民間正社員>公務員>民間非正規となっているところ相当のウェイトが1項目から3項目へと移動したことではないのかと。
# なお読者のために付言すると公共セクターでも非正規化が進んでおりその待遇は民間非正規より悪いことが多いとか(だから市役所の窓口の若い人にやつあたりするのはよしたがいい)、守衛さんとか給食のおばさんとかが行政職(二)の公務員できちんとした給料をもらっていたのにはちょいと知的能力の低い人の雇用対策という側面もあり、そこを削ったら行き先がなくなって結局社会福祉負担にツケが回るとか、そういう話もある。いろいろあって本当は難しい話。

>一役人さん
あまりちゃんと見ていませんでしたが(いやなにせ私はもう受けられませんので)、前者については要するに各官庁において採用されなければいいんじゃないですかね。なんか人事院の説明資料にもそんなことがちらりと書いてありましたが。
後者は、まあその、弁護士事務所が就職難になっている状況もあり、それなりに希望者はいるのではないかとも思います。修習を終えたあとで、途上国支援を志して某大学講師として2年間タシケントに赴任してくれた人材というのもおり、それが彼の人生にとって幸福をもたらすかという点には自信がないのですが能力・性格とも優れた人だったと思っていますので、悪い話ばかりではないよなと思います。従来も在学中司法試験合格→入省→在職のまま司法修習というルートをたどって省内法制官僚化した方々がおられたと思いますので、その順序がひっくり返ったと思えば後者はそんなに不思議ではないんじゃないですかな。何が言いたいかというと前者についてはほんとうに不思議ですねえということなんですが、ええ。

>守衛さんとか給食のおばさんとかが行政職(二)の公務員できちんとした給料をもらっていたのにはちょいと知的能力の低い人の雇用対策という側面もあり、そこを削ったら行き先がなくなって結局社会福祉負担にツケが回るとか
むしろそこに絞って、最低賃金くらいまで引き下げる代わりに障害者優先雇用なおかつ総定員法廃止(あるいは障害者を枠外に)した方がいいと思うんだけどなぁ。
キャリアから地方初級まで、行政職公務員は対人関係能力に「障害」を抱えた人のすくつになっている(だから労働環境自体は民間よりはるかにマシなところでもメンタルヘルスの発症率が高い)なんていう人もいるし。

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