公務員住宅(1)

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念のために最初に言うと私が現在住んでいるのは民間の賃貸集合住宅ですし就職以降官舎に入っていたことはありませんので本件に関する利害関係はありません(挨拶)。さて。

何かというと公務員住宅に関する件で、まあ正直最終的な賛否についてはいろいろと意見があろうなという感じなのだが「問題がある」と主張する側がダメなことをいろいろ言っているように思うので、その点だけ指摘しておこうということ(まあ仕分け人がどうこう言っている段階でその程度の水準に決まってるじゃないかという話も)。

「公務員宿舎Q&A 都心一等地で家賃4万円...格差は歴然?」(MSN産経ニュース)だが、一見してわかるダメは最後の値段の比較をした部分。

「政令で規定されている算定方法で決められるが、民間の社宅賃料とおおむね同じ水準となっている」というのが財務省の説明だ。今回問題となった埼玉県朝霞市の宿舎であればファミリータイプの3LDKで月約4万円。東京都港区南青山にある幹部職員用官舎(94平方メートル)の場合、家賃は月6万7千円から9万2千円という。だが、民間のある不動産業者では「同様条件の一般住宅の家賃は朝霞で13万~15万円、青山では20万~30万円が相場だ」としており、格差は歴然だ。

「一般住宅の家賃」=たとえば私が不動産屋に行って借りるときの値段と「民間の社宅賃料」=私が名古屋大学の職員住宅を借りるときの値段を比較してどうする。一般的に社宅は住宅に関する負担軽減策(住宅手当の代替)なので社宅賃料=通常の賃料ー実質的な補助額に決まってるだろうが。

もちろん問題はじゃあ実質的な補助額は民間の場合どのくらいで社宅賃料はどの程度が相場かという点に移るところ、私には民間企業に勤務した経験がないので自分のこととしてはわからない。借り上げ社宅(各自手配した上で社宅扱いにして会社から補助が出る)の場合で(上限はあるのだろうが)「半額出るよ」という民間企業社員の友達の話を聞いたことがあるような気もする(あまりちゃんとした記憶ではない)。検索すると、やはり借り上げ社宅の場合で(共益費等を含む)調達家賃の50%〜70%を社員に払わせている例が多いとか、なかには役員社宅を全額会社負担にしている企業の例などもあるという話が出てくる。

自社所有の社宅だと事情が多少違うかもしれないと思うところ、2008年の・かつ自社所有社宅は企業にとっての負担が多いので減ってますよという記事だが、こういうのが見つかった。「5部屋で2万8335円、社宅を廃止する企業が急増」(Business Media誠)。労務行政研究所の調査に基づくもので、社宅の平均賃料は3LDK・4DKだと2万8335円とのこと。もちろん場所や築年数などを考慮しないと実際にどの程度の差があるかはわからないのだが、同記事は一般の賃料を比較して「社宅賃料は6分の1~7分の1で、社宅に入居する従業員にとって金銭的なメリットは大きい」と結論付けている。さて産経記事をもとに公務員住宅の場合を計算すると、最大に見積もって4.48分の1、最小の場合2.17分の1か。あれ、公務員は優遇されていますとかいう話なんじゃなかったっけ

もちろん(1) この調査は2008年のものであり、かつ自社所有社宅は減っていると指摘されているので現在ではそれほど条件のいい社宅は減っているかもしれないとも考えられるが、他方民間の場合その代わりに借り上げ社宅制度があれば(たとえば)50%の実質補助があるのに対し、公務員は上限27000円/月の住宅手当しかないよなとも言える。また、(2) この調査は全国の上場企業およびそれに相当する大企業を対象にしたものなので、中小企業の待遇は一般的にこれほど良くないだろうから、それと比較すれば公務員のほうが優遇されているかもしれないとも考えられる。

(2)の点は産経記事に登場する仕分け人が語っているところで、「社宅がある中小企業は少ない。公務員は一定の給与をもらっているのだから、民間と同賃料で賃貸住宅に住むべきだ」というのだが、あのね今回問題になっているような官舎に入る公務員の待遇を中小企業基準で考えてどうするのバカなのという気はするわけである。

典型的には記事に出てくる南青山のものだが「幹部職員用官舎」であり、住むのはキャリア官僚のうち出世した人なわけである。そういう人は公務員にならなければ銀行だの証券だのの大企業に就職するか・司法試験を経て法曹界に進むかしてたわけであり、そういうところが人材獲得にあたっての実質的な競争相手なわけである。待遇を比較するならそこと比較しないと意味がないだろうと、そういう話。

もちろん(広義の)待遇というのは収入とかこういう福利厚生だけで成り立っているわけではなくて、仕事のやりがいとか公共性とか名誉とか自由とかも含まれるだろうから、まあ福利厚生がイマイチでも天下国家のためになる仕事に取り組むぜという徳の高い人とか、発言の自由がないと死ぬので給料はえらいこと限られていても大学に残ろうとかいう(私のような)へんないきものもいるわけである。だが、だからといってそれにつけこんで買い叩くような真似をされると公徳心も底をつくよなという気がするわけ。

まあ、そういう公徳心が枯れ果ててあとはどう政府を食い物にするか考えてる官僚とか、あるいは買い叩かれた待遇でも民間に進んだときに期待できるのよりいいんだよねというレベルの実力しかない役人に統治されるのが素敵なことだと国民の皆さまがお考えになるならそれはそれで仕方がないのかしらねえと最近思っているわけではあるんですけどね。もう一回つづく。

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はじめまして、こんにちは。民間企業で働くものです。
民間では、成果主義の導入に伴い、住宅手当を含む諸手当を廃止し、基本給に一本化する流れが数年前にありました。
弊社でも住宅手当が廃止されました。また新卒四年以内の若年向け借り上げ社宅(ワンルームマンション1棟借り上げ)も廃止し、代わりにレオパレスのアパートを一部屋単位で借りる形になっております。

弊社の場合、基本給に一本化といっても、支給されていた手当の全額が基本給にプラスされたわけではありませんでした。住宅手当でいえば、東京近郊勤務者の場合12000円あったものが8000円に減らされて基本給にプラスされました。そして、このプラス分も翌年には半減、三年目にゼロになりました。これは当初から説明されていたもので、プラスされた額はただの激変緩和措置だったのです。

そんなわけで、民間では諸手当を基本給に一本化するといいつつ、実質的な賃金カットが行われております。

以上、ご参考にして頂ければ幸甚に存じます。

後ろめたさが無いのなら、建築計画・課程、入居者や入居条件など包み隠さず情報公開し、理解と一定の納得を得られるQ&Aでも用意しとけという話。

闇給与と糾弾される現行制度の問題点と話をすり替えるな。

http://swinglike.ojaru.jp/

かなり前ですが、民間の社宅も社員に2円で払い下げたことがあり、そのときは物議を醸したものです。
公務員住宅は入居者に払い下げられることはありませんが、社宅とか一般公営住宅(現在は国交省の指導で原則としては払い下げはしない方針)は入居者に払い下げられることがあります。
マスコミもただ公務員を目の敵にしていますが、民間だってかなり安い賃貸料で社員に貸しています。
それもときには臨時雇用の契約社員にもです。
テレビニュースで去年だったか、派遣切りが話題になったときにやっていましたが、そのときは1DKで5千円だったと報道していました。
それに地方自治体によっては条例で職員組合が職員住宅を建設することになっているところもあり、実質的に建設は不可能なところもあるものの、そういうところでも同じ市の職員でありながら教員に関しては住宅を建設して貸しているのだから不平等ですよね。
筆者の論理はアパートとか民間経営の住宅との賃貸料との比較は間違っているとということなのでしょうが、確かにその通りですが公務員も十把一絡げにするのもおかしいし、社宅などと比べれば公務員住宅の家賃はそんなには高くはないと思われます。
それと警察が「待機宿舎」という名目で、実質的には職員宿舎として建設しているのはおかしいのではないかと思います。
「待機宿舎」というのは何かあったときに一時的に寝泊まりする宿舎ですから、家族まで一緒に住むのはおかしいでしょう。

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