続・岡崎市立図書館事件(3)

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でまあその。企画者の側からは当日のプレゼンテーションを公開してもらえないかという依頼も受けたのですが、いやソースに基づく議論という研究者であれば基本中の基本と言ってよいふるまいができないのか故意にしないのか、とにかくそういう人々がこれだけ群れているところに・口頭で説明/補足することが前提の資料を出すとか、さすがに私でもそういう餌の与え方はできないねえ。教祖さまが自分の無謬性を守るために好き勝手利用しはじめるに決まってるんじゃないかな。

しかしまあ私はいらんこと親切なので、当日来ていた方なら個々の話題がどのように全体の枠組に対応しているのかがわかるように追加の説明をする。ちょっと参加者の興味を引くために構造が見えにくくなったところはあるかなあと思ってもいるのでね。なお刑法理論の観点から「そんなに簡単に書いていいのか」と思う人はいるでしょうが、そこは割り切ってわかりやすさを優先しました。さて。

  • (1) 犯罪=違法かつ有責な行為 ......両方が揃わないと刑罰の対象にはならない。
    • (2A) 違法性=構成要件に該当し、被害と因果関係があること。また違法性を否定する事情がないこと。
      • (3A) 構成要件該当性:ここでは欺罔・誘惑、あるいは錯誤・不知を利用したこと。
          「相手が甚しく困惑」したことが構成要件である「偽計」にあたる=無言電話の事例(*)
      • (3B) 被害:アクセス不能状態の発生。
      • (3C) 因果関係:物理的な因果関係があっても、刑事法上は否定される事例もある。(**)
          未知・予測不能の相手方の問題は、それに該当しない=脳梅毒の事例
      • (3D) 違法性阻却事由がない:ほぼ争いなし
    • (2B) 有責性=故意・過失があり、責任能力があり、他に責任を否定する事情がないこと。
      • (3E) 故意(原則)・過失(定めのある場合)の存在:今回は故意犯のみ
          客観的事情から判断することになる=オーバードーズ事例
      • (3F) 責任能力:今回は争いなし
      • (3G) 責任阻却事由がない:ほぼ争いなし

(*) 被害・因果関係が肯定される場合でも元々の行為に通常は危険性がまったくないような場合はどうか、というのは正しい疑問。私は脳梅毒事例で「頭をやさしく撫でた場合」というのを考えたが、「握手したら相手の手のひらに予期せず経絡秘孔があった場合」を挙げている人がtwitterにいて面白かった。まず答は、どちらも傷害罪の構成要件に該当しないので2Aで終了ということになる。今回はどうかというと、つまりクローリングが無言電話の事例に近いのか遠いのかという問題として議論の対象になり得るとは思うのだが、(1)通常のブラウザによる個別の利用とは異なる・頻回のアクセスであること、(2)結果として「相手が甚しく困惑」したことが共通していることから、近いとされてもやむを得ない、程度には考えた。この点が「個別には合法な行為の総和であることが全体としての合法性を担保しない」という話につながっている。ただし本件判決には学説上は批判も多いようなので、そもそも先行事例の正当性自体を争うという方法はある。
(**) 典型的には第三者の故意の行為が介入した場合が挙げられる。相手に軽度の傷害を負わせたところ、救急車で搬送された先の病院に被害者に恨みを持つ第三者がたまたまおり、抵抗不能な状況に乗じて被害者を刺殺したという事例を考えると、最初に怪我をさせなければ被害者が救急搬送されることはなく、従って病院で第三者に発見されて殺害されることもなかったであろうから、物理的には傷害行為と死という結果のあいだに因果関係があるわけである。しかしまあだからこれ傷害致死だというのはひどいよねえという話があり、途中でより強く結果と結びついた第三者の故意行為が介入した場合には元の因果関係が切断されるというような説明をする。

法律学の基本手法というのは、このように最終的な論点をより部分的な構成要素へと分解していって、それぞれについて、その限定的な範囲において似ている過去の事例などを参照しながらYesかNoかを決めていき、その総和として結論を出すというところにある。今回で言えば、脳梅毒事件はあくまで「未知・予測不能の被害者側の事情が(法的)因果関係を切断するか」という論点の範囲でのみ類例として参照されているので、「『蹴った』という行為とクローリングを同一視するのか」と聞かれても「それは構成要件該当性の問題だから知らないよ」ということになる。そもそもまったく同じ事件というのが二度起きるわけはないし、特に新しい技術とか社会現象が関係している場合には全体としてそっくりとか似ているとかいう事例があるわけはないのであって、一方、ないから「裁判官とか人民の『常識的で正しい法感覚』に任せましょう」というのは(特に少数派にとって)危なくて仕方がない。

だから上記のような分解・再構成を通じて一定の相場というか、法感覚を維持していきましょうということになっている。刑法の場合、上記のように分解した上でそのすべての論点について「Yes」ということにならなければ最終結論が「犯罪あり」にならないという基本的な枠組があるので、教科書などはそのすべての個別の論点がどういう場合にYesになり・Noになるかを検討しているわけだ。その際、構成要件該当性については個々の罪名罰条によって当然要件が変わってくるのだが(だから刑法各論の方でそれぞれ念入りに議論していくわけであるが)、因果関係が切断されるかとか故意の有無などといった論点では結局犯罪がどういうものだろうが一緒なわけで、なんとなく派手なので殺人とか強盗とかが使われる傾向はあるだろうが、それはあくまで因果関係についてとか故意についての議論であり、殺人にしか通用しない分析でもなければあらゆる犯罪を殺人や強盗と同じものと考えているわけでもない(行為自体が故意によるものか過失によるものかという論点と、行為と結果の因果関係が肯定されるかどうかという論点は独立なので、犯罪類型に過失犯規定があるかどうかは後者の議論にまったく影響しない)。

まあもちろん、近代科学一般に対してと同じように、そういう「分解・再構成」という方法論ではモノゴトの本質を見失うのではないかという批判は可能だと思うが、オルタナティブがいるよね、とはすでに書いた通り。まして、その方法論自体をまったく読み解けずに

「しかし、刑法の教科書等を読み漁って思うのは、元々犯罪が成立する行為を事例に、別の犯罪も成立するかとか、より重い罪が成立するか否かの議論ばかりで、今回のようなそもそも犯罪が成立するかしないかにかかるような論点というのは見かけず、ちっとも参考にならなかった。」(twitter)

とか書いてしまうのは、プログラム言語の教科書を読んで「僕の欲しいプログラムのソースコードが載ってない!」って文句言ってるのと同じなんだよね。そういう人間に対して高木浩光氏がどう言うのかを録音しておいて耳にタコができるまで聞かせたいなあ。

***

おまけ。

「中川氏の事案は因果関係があるのは自明であり、論ずる必要がない。私たちはそんなことを問題にしているのではない。」(twitter)

「自明」なんだって。すごいね、これだけで相当因果関係説ぜんぶ葬り去りましたよ。すでに述べたように、物理的な因果関係の存在が「自明」でも法的には切断できる場合があるよねということを議論しているのが因果関係論なんだけど、何のためにそういう細々した検討をしているかという目的がまったく理解できなかったということですよね。教科書を読み漁ったことが何一つ役に立っていないということを示している好例と言えようかと思います。

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   簡易版らしいけど,続・岡崎市立図書館事件(3) - おおやにきで提示されている「全体の枠組み」の表に,#librahack 等で指摘された問題点や... 続きを読む

コメント(25)

先生!大前提が間違っています。

Librahack氏が行ったのは「大量アクセス」ではなく「通常より多いが常識の範囲内のアクセス」です。
なぜサーバーが応答しない状態が発生したかは「大量アクセスによるサーバー負荷」ではなく、「MDISのLibraの仕様上の欠点によるAPPの停止」です。
つまり2Aも2Bも構成できていません。

ではなぜLibrahack氏が浮上したかというと「すでに別の図書館上ではLibraの欠点を修正していた」MDISが調べた結果です。
で、警察はMDISの言うことを信用してLibrahack氏を逮捕した節があります。

と、ここまでは#Librahack上では共有知識(まとめにまとめてある)なので、たぶん話がかみ合ってないのだと思います。

すでにはてなブックマークに書いたことですが、こちらにもコメントします。

先のエントリで、警察が積極的に介入するからには、

> 確率的に「誤認逮捕」が出ることは覚悟

しなければならない、とされたことは理屈だと思います。しかし、今回の件では、結果的に誤認逮捕だったとは認められていません。それどころか、嫌疑なし/嫌疑不十分ですらなく、不起訴処分(起訴猶予)になっています。

市民の安全のために間違いが起きる可能性が増えたとしても、最終的に間違いが訂正されれば、市民(今回の場合は技術者)が不安になることもあまりないと思います。間違いのパターンが蓄積されていけば、間違いの起きることも少なくなるでしょう。しかし今回のケースでは、警察も図書館も、メンツのためなのか間違いが訂正されず、「正しい措置だった」「(公判を維持できないかもしれないから?)起訴猶予にしただけだ」という態度を取り続けています。これでは、また同じことが起きるかもしれないという懸念をぬぐえません。大屋氏の「誤認逮捕」という前提は、今回のケースとは違うシナリオで語られているようにしか見えません。

>@Liriruさん
その程度の事実関係は理解した上で書いております。「大量」の趣旨については、前エントリに対するコメントもご参照ください。また、エントリ中にも書いた法律学の基本手法による場合、直接肯定できたり否定できたりするのは分節していった個々の要素(この説明では第3層)なので、2Aではなく3Aから3Dのどれが・どのような理由で否定できるのか、あるいは2Bではなく3Eから3Gのどれが問題なのかということを言わないと意味がありません。また私見では、言及された事実関係のうち第一のものは3A(構成要件該当性)、第二のものは3C(因果関係)に関するものであり、2B(有責性)のいずれかの構成要素に関するものではありません。ご指摘は不適切かと思います。
警察とベンダーの関係については、最初のエントリ(「続」のつかないもの)へのコメントでも言及していますのでご参照ください。

了解しました。
では3Aをとりあえず否定してみますね。

3Aで「相手が甚だしく困惑した」のは大量アクセス(Librahack氏によるアクセス)に対してではありませんよね?
LibraのAPPがよく停止することに対してのはずです。
これに対し、MDISより、大量アクセスが原因であるという説明を受けた後にLibrahack氏の行為に対しての困惑が発生しているはずです。
しかし、実際は大量アクセスは発生していませんから3AはLibrahack氏に対しては満たさないはずです。

次に3Cですが、そもそもAPPの停止という不具合は通常のブラウザアクセスによっても引き起こされる類のものです。
Libraに多数のPCが接続してくるだけで発生するものです。また、Cookieを切ることは特殊な状態とはいえません。
※セキュリティを気にする人は切っているでしょうし、ネットカフェなどでカード情報の漏洩などの対策のために切っている例もあります。
物理的な因果関係すらありません。

あとついでに「Librahack氏の対策は完璧ではなかった」はどうかと思いますが。
多くの技術者サイドが攻撃的態度を取るのはこの部分が大きいと思いますよ。
普通、「対策を施した」ものでももっと過剰にアクセスを繰り返していると思います。
※実際、MAC付属品はもっとひどいし、WWWCなんかももっと激しくアクセスしてたはず。
少なくとも「完璧に近かった」はずです。

警察とベンダーに関してはエントリのコメントを読ませてもらいました。
ぶっちゃけ、あれを最初に書いておけばもっと穏便に話は進んでたと思います。

犯罪の構成要件に関する分かり易い説明ありがとうございました。
プログラマーなので、プログラムに置き換えるとこうなります。

違法性?(2A) = (3A and 3B and 3C and 3D)
有責性?(2B) = (3E and 3F and 3G)
犯罪? = (2A and 2B)
つまり、一つでも、変数(3A-3G)にfalseが入れば、犯罪は、falseになるということですね。なんかプログラマ向きな解説で分かりやすかったです。

それでは上から、条件を当てはめて行きましょう。
3A = true
3B = true
3C = true
3D = true

3E = false
3F = true
3G = true

3Cは、必ず、 (第三者の故意の行為)で無ければならないわけですね?(第三者の過失の行為=MDISのプログラムの不具合)の場合も、3Cはtrueになるのですね?例えば、土台が腐った建造物を蹴って、建造物が倒壊しても、3Cは、trueであるということですね?

3Eの、故意は、否定出来ます。普通の、Webプログラムにおいて、1秒は十分長いです。1秒間に一回のアクセスは、故意で落とそうと考えるには、アクセス頻度が低すぎます。それに落とすことが主目的であるなら、アクセスする感覚を徐々に縮めて行くはずです。コードにそのような履歴が無いのであれば、落とすことを故意に考えたとは言えないでしょう。

つまり、1秒のアクセス頻度から初めて、落ちないと分かれば、すぐに、0.5秒、0.1秒へと、アクセス頻度を変えたはずです。そのようなソースコードの履歴が無いなら、故意とは言えないだろうと思います。時系列の資料では、3/13日に、運用を始めて、3/15に落ちています。もし故意なら、3/13日の段階で、徐々にアクセス頻度を縮めるプログラムを書くことでしょう。つまり、二日も三日もかけて、のんきにWebサーバを落としたりしないです。

もし落とすのが主目的なら、Webサーバの状態を見ながら、アクセス感覚をすぐに縮めるはずであり、落とすのに、2-3日もかける理由が見つからないです。そのため、3Eは、falseになると考えます。

クローラーによる連続アクセスのみが被害を発生させられる …わけではない。

岡崎図書館 Web サーバーのプログラムと同型のプログラムが別の図書館から流出しており、それを解析することによってプログラムの欠陥が明らかになっています。それは「一定時間内に、一定数の『新規』アクセスがあると、『閲覧不能状態』が発生する」という欠陥です。ここで、一定時間と一定数は図書館ごとの設定によって異なり、岡崎図書館の設定は公表されていないので不明ではありますが、岡崎図書館 Web サーバーの挙動を観察することにより、10分間程度(便宜上10分ちょうどと仮定する)と数百回(おそらくは600回とか1000回といった数。便宜上600回と仮定する)であると推定されます。

さて。
「(3B) 被害:アクセス不能状態の発生」
の原因となった行為は、
「クローラーによる連続アクセス」
である
というのが、警察・検察の認識であるようです。

それは誤りだとは言えないのですが、しかし、たまたま偶然だったのです。
今回の警察・検察の誤謬は、
「クローラーによる連続アクセス」という行為により、
かつ、その行為によってのみ、
被害が発生すると考えたことにあるでしょう。
次の4つのケースを考えます。

(1) LibraHack氏のクローラーだけが、10分間に600回アクセスした(他には誰もアクセスしなかった)
 → 「(3B) 被害:アクセス不能状態の発生」

(2) LibraHack氏がクローラーで、10分間に599回アクセスし、
第三者のA氏がブラウザで600回目のアクセスをした
 → 「(3B) 被害:アクセス不能状態の発生」

(3) 10分間に誰か(大勢)がブラウザで599回アクセスし、
第三者のB氏がブラウザで600回目のアクセスをした
 → 「(3B) 被害:アクセス不能状態の発生」

(4) 10分間に誰か(大勢)がブラウザで599回アクセスし、
LibraHack氏がクローラーで600回目(クローラーとしては1回目)のアクセスをした
 → 「(3B) 被害:アクセス不能状態の発生」

4ケースともまったく同じ「被害」を発生させます。
もちろん4ケースともまったく同じ「(3C) 因果関係」によります。
したがって4ケースとも同じ「(2A) 違法性」があることになります。

・「被害」を引き起こした直接の行為は、(2)ではA氏、(3)ではB氏です。A氏やB氏に違法性が認められますか?

・あるいは、その前の599回に違法性がありますか? 不特定多数の数百人に違法性があったことになりますか?

・A氏やB氏や不特定多数の数百人に違法性が認められないとすると、ケース(4)はどうですか?

※ 実際、他の人のアクセスもあったため、LibraHack氏のクローラーが「600回目」のアクセスをするよりも前に「被害」が発生していたようですし、LibraHack氏のクローラーのアクセスでも「被害」が発生しなかった(Web サーバーからの応答が遅く、10分以内に「600回」のアクセスができなかった)こともあったようです。

※ A氏やB氏や不特定多数の数百人にも違法性が認められる、という結論ならば、いちおうの納得は得られるでしょう。(インターネットを使うなら逮捕されてもあたりまえだと思え、という司法からの「脅し」として。)

>mohnoさん
というわけでスパムフィルタに引っかかっていたのでご返事漏れしました。

ご懸念自体については正しいと思います。ただ、「続」の付かないエントリのコメントで書きましたが、議論の順序の問題からいって図書館かベンダーが「問題」(後者はカギ括弧いらんか)を認めない限りどうにもならん、とは率直に思います(そんなん行政の論理やと言われることは覚悟しますが、堺O-157事件を含めて行政の「向こう傷」を認めてこなかったのは国民の選択です)。
また、システムの不具合が実際にあり(あったわけでしょうが)、そちらの寄与度が非常に大きかったとしても因果関係は否定されないだろうというのが脳梅毒事件からの議論ですから、上掲無言電話事例などから構成要件該当性が肯定できるとすれば(そして警察・検察は「裁判例だ」と主張すると思われるわけですが)、結局故意の点を除いて犯罪の成立を認める要素が揃ってしまう。かつ、どうも行為者としてはそのつもりはなかったということでしょうが、IPアドレスのブロックを別IPアドレスからのアクセスで回避した点など、故意の存在を推認させる客観的事情(と警察・検察なら主張するだろうしおそらく過去に裁判で認められてきた例もあるもの)がある以上「嫌疑なし」はなく、あくまで故意の存在が十分には立証できなかったという扱いで「嫌疑不十分」から・本人の供述などから「予期と認容」が認定できるとして「故意あり」=「起訴猶予」という扱いになってしまうでしょう。結局後者になったことについては、当日にも言及しましたが警察からの要請というのがあったのかもしれません。あるいは「予期と認容」を認める基礎となった供述について、警察・検察からの誘導等があった可能性は否定できません。しかしどちらも第三者の立場としてはその有無について確定的なことは言えません。「仕方がないのかな」という元エントリの記載に至った趣旨としては、そういうことです。
そこで再発防止という観点についてですが、本件にナシをつける→諸アクターの将来の行動を改善するというルートを主眼に置けば、図書館側に「問題」を認めてもらう・認めさせるためにどうすれば良いかというのが課題になるでしょう。いろいろな意見があるとは思いますが、「おまえらの責任だ、認めろ」と言うだけでは難しいのではないかな、と率直に思います。まして、リソース問題や行為者側の「問題」を無視したり、事実に基づかない論評を横行させるような運動によるのではね、というのは良いかどうかは別にして事実的な予測として言うのですが。
そこで本件のナシについては棚上げないし「実質的な解決」を図ることにして、直接各アクターの行動改善を目指そうというのが(私の理解した限りでの)岡本さんの方向性かと思います(棚上げではなくて実質的な名誉回復をいかに実現するかという方向だと思いますが)。私が述べたことは、とはいうものの問題解決のリソースが十分に割り当てられていなければ当事者が「改善しよう」と思っても不可能なので、そこから考えるべきという提案として理解できると思います。当事者の人生を考えればナシの問題が重要だということはまったく否定できませんが、率直に言って、それにこだわることで全体の問題を悪化させる例も多くあるよね、とは思います。


>@Liriruさん
3A(構成要件該当性)について、先行例は《頻回の無言電話という行為類型が、欺罔・誘惑/錯誤・不知の利用と言えるか》という問題に対して、《その行為によって、被害者の「困惑」という状態が生じ、業務が妨害されているので、言える》と判断したものです。本件でも(隠された因果関係があったわけですが)、「行為者のアクセスが原因でシステムがアクセス不能状態となったために「困惑」した」という関係はありますから、さきほどの判断が該当します。ベンダーの説明は《当該アクセスが「大量」だったために結果が発生したのかどうか》という点について(意図的かどうかはともかく)誤っていたわけですが、それは因果関係に関する問題です。
3C(因果関係)について、「他の態様でのアクセスでも同様の結果が発生しえた」こと(これを否定する気はありません)は、「今回の事例では、行為者のアクセスによって結果が発生した」ことを否定することに、まったくなっていないでしょう。この点についてはご説は端的に失当です。
第三点について、技術者サイドで反発する方がいるだろうことは予測済みですが、それによって議論が深まるならよろしかろうと思うところもあるし、中途半端な聞きかじりで「反発」する(そのターゲットに本当は私はいないわけですが)人にはそもそも同情しないしなあと思うところもあります。後段について、事実関係としてはそうだろうと思いますが、「他にもっとやっている人間がいて、捕まっていない」というのは交通違反取締などに対する異議としてごく一般的で、かつ尊重されないものでしょうね。たまたま捕まった人が「運が悪い」と嘆くのはよくわかりますし、「もっと平等な規制を実現しよう」という議論が起きることも当然かと思いますが、しかしそれが元の行為を正当化することはない、というお答えになろうかと思います。


>hogeさん
3C(因果関係)について、切断される場合についてのお尋ねだと思います。第三者の過失の行為が介入した場合についてですが、判例は一貫して《切れない》という立場です。具体的には、軽度の傷害を与えたところ救急搬送された病院における医療ミスで死亡したという事例でも、因果関係は肯定されます。ご提示の例では、「蹴った」行為が普通の建物なら傷つかないレベルであったとすれば3A(構成要件該当性)か3E(故意)で否定できると思いますが、3Cではないということになります(なお第三者が非常に大きかったというような事情がある場合でもそれは2B(有責性)の方で処理しましょう、ということでもあります)。
3E(故意)については、ご指摘の事実も含めて、事後的にわかった事情からは否定できるということでおそらく問題ないと思います(もちろん当事者が語っていない事情というのもあるかもしれませんが……)。ただ世の中、食べ物に硫黄を混ぜれば毒殺できると(本人はごくごく真面目に)信じこんで実行してしまう人というのも現実にいましたので(大審院判決大正6年9月10日)、手段として合致していないということだけで故意を否定するのも難しいのです。検察の判断に時間がかかったのも、本来の想定としては内心の事情である「故意・過失」を・外的な要素から推定せざるを得ないという本質的な問題が背景にあるとは思います。

>biacさん
図書館側システムの動作については、ご指摘の通りと思います。その上で提示された4つのケースですが、3A(構成要件該当性)の問題として考えるべきでしょう。(2)のA氏・(3)のB氏のアクセスは、《欺罔・誘惑/錯誤・不知の利用》と言えませんから、被害・因果関係は肯定されても、違法性全体として否定されることになります。(3)の誰か大勢についてもそうなるでしょう。(4)の事例も同様で、まあこういう使い方は通常しないでしょうが、クローラで1アクセスだけして動作を止めるとすれば、そのクローラの動作がプロトコルにきちんと準拠している場合、それを《欺罔・誘惑/錯誤・不知の利用》とは言えないでしょう。クレームの電話を(理由がある場合に)1度入れることは、偽計業務妨害の構成要件に該当する行為として評価できません。しかし、何度も何度も入れ続けるとすれば、全体として「困惑」をもたらす偽計として評価されることになります。これが、個々では合法な行為の総和であることは全体の合法性を保証しないという話です。


/*
(4)の事例も同様で、まあこういう使い方は通常しないでしょうが、クローラで1アクセスだけして動作を止めるとすれば、
*/
(4)で600回目がクローラーの1アクセス目だというだけで、その1アクセスだけで止めずにクロールを継続しても思考実験としては同じことでありましょう。

/*
クレームの電話を(理由がある場合に)1度入れることは、偽計業務妨害の構成要件に該当する行為として評価できません。しかし、何度も何度も入れ続けるとすれば、全体として「困惑」をもたらす偽計として評価されることになります。
*/
クローラーによるアクセス ≒ クレームの電話
…という認識、比喩でしょうか?

プロトコルさえ合っていれば、サービス利用側がブラウザー・telnet・Web翻訳サービス・クローラーetc.のいずれを使っているのか、Webサーバー側で厳密に識別することは出来ません。(ブラウザーを「リモコン」で定期的に動作させることだって出来ます。等間隔でアクセスしてきたからブラウザーではない、とは言えない。)
ブラウザーで岡崎図書館の書誌詳細をリクエストすることは、クレームを入れることになるのですか? 正当なサービスの利用ではありませんか?

電話に喩えるなら、すくなくとも1回ごとの利用は正当なサービスの利用と言える形態で考えていただきたいです。電話番号案内(104)とか。

『電話番号案内(104)を1回利用することは、偽計業務妨害の構成要件に該当する行為として評価できません。しかし、何度も何度も(異なる住所の電話番号問い合わせを)利用し続けるとすれば、全体として「困惑」をもたらす偽計として評価されることになります。』 …ということになりますか?

ふむ、結果として3Aは否定されていて(警察への相談時点では否定されていなかったが、事実が明らかになった時点では否定されている)3Cは「たとえそれが通常のアクセスであっても「行為」により「結果」が発生したら3Cは構成される。」ということですね。
では、3Cは単独では「犯罪」事実を構成できないですよね?
極端な例をあげれば「他人の行為により壊れかけていたものをそうと気づかずに触ってしまい壊してしまった」場合にも成立しますし。

で、ここまでいろいろ他の人も指摘していますが、いまだにLibrahack氏は黒ですか?

あとbiacさんへの返答に「クレームの電話を(理由がある場合に)1度入れることは、偽計業務妨害の構成要件に該当する行為として評価できません。しかし、何度も何度も入れ続けるとすれば、全体として「困惑」をもたらす偽計として評価されることになります。」と有りますが、この例えはクローラに対しての正当な例えではありませんね?
クローラを例えるのなら「正常な問い合わせ電話」で例えるべきですね。
「窓口側が一回につき1件しか処理してくれないので何度もかけた」場合は「困惑」をもたらす偽計とは評価されませんよね?

お返事ありがとうございます。ご主張がわからないわけではないので、あまり長々とコメントするのも気が引けますが・・・。

建前はともかく、図書館側(とくに開発元のMDIS)や警察は、原因と責任の所在を理解しているのではないかと私は思っています(技術者がいるなら、なおのこと)。MDIS にしてみればただの手抜きですから、おそらく相談もなく被害届を出されて大事になってしまい、早く嵐が過ぎてほしいと願っているのではないかと。それに、これだけ話題になりましたから、いわゆるスクレイピングで再び同種の事件になる可能性は低いように感じます。IP アドレスの切り替えなど「Yahoo! BB の調子が悪いから e-mobile でアクセスしてみよう」で起きる話です。

その意味で、“再発防止”とは、むしろ本件とは異なる案件で、やはり IT リテラシーの欠けた人々(警察を含む)によって同種の事件を起こさないようにすることだと思います。

かつて、DOS 時代にグラフィックメモリを使うツールが、やはりグラフィックメモリを使う一太郎の文書を破壊するというのでウィルスだと騒がれたことがありました(逮捕されたわけではありません)。技術的に両者は併用できないものだったのですが、素人から見たら悪意によって文書が破壊された“被害”に見えるかもしれません。説明書に書いてあることが理解できないというケースも含め、そうしたことが何ら故意(悪意)もない無実の技術者に多少なりとも責任を負わされるのだとしたら、納得できるものではありません。

もちろん、たとえば「著作権侵害にしか使えないようなツールを頒布しておいて技術は中立だとうそぶく輩」を取り締まるために、無実の技術者が(ごくまれに、であることを望みますが)“間違って”逮捕されるケースはありうるのでしょう。しかし、20日間も拘留しておいてITリテラシーのある担当者が呼ばれることはなかったのか、ないのだとしたらそのことが問題だし、「これは無実だな」と分かったけれど警察の世間体のために“故意認定できるもの”をなんとか引き出した上で嫌疑不十分ではなく起訴猶予にしたのだとしたらやはり問題です。技術者から見れば本件に「故意」などない(脳梅毒事件と違って傷害の意図すらない)ことが明らかなので、どちらかの問題があることが“確定”しているわけです。後者については、「取調べの可視化」が求められている理由でもありますが、自称被害者の無知ゆえに逮捕されたものが、被害者が無知を認めないために被疑者の不利益(嫌疑不十分ではなく起訴猶予)となってしまうという“警察側の構造”には問題を感じざるをえません。

ソースが不確かで申し訳ないのですが、「相手が企業だったら、逮捕などなかった」とも聞きました(本件でないかもしれません)。時折、Yahoo! トピックスに載ったせいで“壊れてしまう”サイトを見かけますが、その“破壊力”を Yahoo! トピックスを選考する人が知っていたとしても、報道対象のサイトのキャパシティを判断材料にはしていないでしょう。

「李下に冠を正さず」と言ってみたところで、「これ李の木だったの?」というくらいの話なのです。

く3C における切断は成立するのではないかと考えます。
まず、この製品の同系製品において2009年時点でセッションの維持がリソースの消費を起こすことは既知の内容です。つぎにメーカーはなんら領域を指定することなく情報の共有は行えていたと言っているので使われかたによってリソースの枯渇が発生することも既知の内容です。次のバージョンにはこの不具合は存在していませんので既知と類推することの妥当性はあると考えます。
ベンダーとメーカーは同一の社なのでこの事を知りながら図書館になんら説明を行っていないのは、バージョンアップなりを受注することを動機として、何らか運営上の不具合が起こればよいという未必の故意があったと推定されます。
よって、今回の事象は第三者による異なる故意により起こされたものです。
クローリングは実質的サービス停止と因果関係がありますが、第三者のより強い故意によってのみ関係性が成立するものであるので、切断されるべきではないでしょうか?

クローラでのアクセスが 3A を「欺罔・誘惑/錯誤・不知」でとして成立させるという論理がよくわかりません。
というより、biac氏のブラウザは「欺罔・誘惑/錯誤・不知」に該当しないという話と整合しないと感じています。
クローラもブラウザもHTTPクライアントの種類を分類する言葉ですがその境目は明確には存在していないはずです。
3A については「いかようでも成立する」と考えられている。HTTPは 通信の認証を行わなければ常に「不知」なプロトコルと考えられていると思っていたんですが、違うのでしょうか?

>biacさん
第一点、要するに単発ないし散発的なアクセスか、継続的・頻回のアクセスかという点を問題にしています。最初の一回だけを取れば、あるいは個々のアクセスを取れば、両者は区別できませんよね。インターネット上にアクセス可能な形でデータを公開している以上は通常のアクセスを受けることへの黙示の同意があると言ってよいでしょうから、《一回だけ抜き出したアクセス》が偽計業務妨害の実行行為として評価されることはないでしょう。しかし、行為の評価はそのように分解したパーツとしてではなく全体として行なわれますから、止めた場合と止めなかった場合とでは区別され得ます(このあたり、細かく掘ると「『靴紐を結ぶ』というのは何個の行為か」というえらい問題に発展するのですが)。
第二点、無言電話事例について《それは一回でも不適切な行為である》という指摘があったので、《一回なら少なくとも正当と言える行為》の例としてクレーム電話を使いました。従って、ご提示のような電話番号案内の例でも結構です。その上で最後の点、その通りで、継続的・頻回の電話番号案内の使用が全体として偽計業務妨害の構成要件に該当する行為と評価されることはあり得ると思います。本当にさまざまな住所の電話番号を聞きたいだけかもしれませんが、それは故意の問題として(つまり業務を妨害する意思があったかどうかという問題として)評価されることになるでしょう。

>@Liriruさん
いえ、私の意見は「3A(構成要件該当性)・3C(因果関係)については逮捕時・事後ともに否定されていない(だから「嫌疑なし」にはならない)。逮捕時には推定し得る要因があり、その後ほぼ否定されたのは3E(故意)」というものです。もう一度確認してみてください。もちろん上述の通り一箇所でも否定されれば最終的に犯罪は成立しませんから、現時点で考えれば行為者は「ほぼ白」でしょうし、神さまの視点に立てば最初から「白」だったかもしれません。
後半、上記の通り私はクレーム電話も正当な行為だと思いますから違いは出ません。窓口が一回一件しか処理しないので何度もかけたという行為については、一般的には(事実として)受け手に「困惑」を生じさせないでしょうし、また仮に事実として困惑したとしても「そんなことで困惑するんじゃない」と(規範的に)被害の存在を否定すべき例だと思います。しかし例えば、biacさんご提示の電話番号案内の事例で(かつ一度に一件しか回答しないとして)、同じ住所の番号を何度も問い合せ続けたとすれば「困惑」しても仕方ないよな、ということになるかもしれません。

>mohnoさん
現状の認識については、私もそういうことなのではないかと思います。起訴猶予にした点について、警察の面子を守るというような配慮が働いたとすれば問題であって、それを擁護する気もありません。ただ、かなり早い段階で「やべ」ということが分かっていたとすればなぜ勾留延長(字はこっちです)したのかというのが疑問で、面子のためだけの処理なら10日間でできただろうと思うのですよね。技術者の観点からは納得できないかもしれませんが、故意の有無について捜査を尽くさなくてはならない点があると検察が考える事情があったのではないか、と考える所以です(それ以外の客観的事情については比較的容易に確定できたはずなので)。
再発防止策について基本的にあまり異論はなく、しかし警察・検察のITリテラシを強化するという対策にはかなりの限界があるので、中立的で専門性の高い組織がコンサルを受けますよ、ということを津々浦々まで知らしめることと、そのような組織と警察との信頼関係を構築していくことをターゲットとして考えるべきだと思っています。

>s_mizukawaさん
面白い論点だと思います。ベンダーに関する事実関係もまあおおむねそのようなものであろうと思いますし。問題は、しかし(未必の故意ではない)明確な故意による行為なら因果関係が切断されるということは判例からも言えると思いますが、(1)ご指摘の状態があったとしても「そういう事態が生じるかもしれないが、それで構わない」(結果の予期と認容)という未必の故意に留まり、いわば「故意性」が低いと考えられること、(2)かつベンダーは何かを「した」(作為)のではなく「しなかった」(不作為)に留まるところ、不作為を問題にできるのは先行して作為義務が存在するときだけであり、ベンダーには不具合のあるソフトウェアを改修する対社会的な義務はないので(契約相手に対しては・契約に基づいて存在し得ますが)、本件における不作為を問題にすることは困難だと考えられる点にあります。私としては、ご指摘の事情はわかるが因果関係を切断するとは言えないという結論でしょうか。
二つめのコメント、すいませんがご趣旨がよくわかりません。上でbiacさんにお答えした内容が、あるいは対応しているのかもしれません。

あらためてお返事ありがとうございます。

「面子のためだけの処理なら10日間でできただろう」については、被疑者が10日間の間には「サーバーへの負荷を分かった上でやった」という調書に署名しなかったのではないかと思います。図書館が非を認めればよかったのでしょうが、そうもいかず、警察の面子が守れないので勾留(←誤字失礼しました)延長して、「まあ、君はそのつもりじゃなかったかもしれないが、結果として相手に迷惑をかけたのは事実だし、可能性がまったく想像できなかったわけでもないだろう? うちに帰れば君を待っている人もいるんじゃないのかね」(←テレビの見過ぎ)くらいのことを言われて被疑者が観念したという構図は容易に想像できます。

私は陰謀論には与しませんので、当時の報道を見て「どんな古臭いサーバーを使っているんだろう」と実際に図書館のサイトを見てみたら、Windows/IIS/ASP+Flash が使われていて、しかも古めかしくもなく、ほんとうに1秒1回程度のアクセスでダウンするものだとは思いもしませんでした。逮捕されたのが私だったとしても、10日間絞られるくらいでは「潔白」以外の調書には署名しないでしょう。

※当時のツイート
http://twitter.com/mohno/status/14732777301
http://twitter.com/mohno/status/14732879947

大屋さんのおっしゃる「IPアドレスの変更から故意を推認」についても(判例わかりませんでしたが)、それは推認できる事情が重なってのことでしょう。本件に限れば、「判例をこねくりまわして無実の技術者に責任の一端を負わせようとしている」と見えても、まあ致し方ないところです。

たびたびお答えいただき、ありがとうございます。
もう少々お聞かせいただければ幸いです。

/*
第一点、要するに単発ないし散発的なアクセスか、継続的・頻回のアクセスかという点を問題にしています。
*/

技術者として、その区分がまったく理解できません。
・原理的に、区分可能なのか?
・区分可能だとして、どうして同じ期間内に他からなされたアクセスと分離し、独立した事象として扱って良いのか?

第一点については、具体的な数字でお尋ねします。

私は先月の19日に、岡崎図書館のWebサーバーに対して、約3秒につき17回のHTTPリクエストを、2分ほど継続して行いました。これは単発ないし散発的なアクセスでしょうか、継続的・頻回のアクセスでしょうか?

/*
継続的・頻回の電話番号案内の使用が全体として偽計業務妨害の構成要件に該当する行為と評価されることはあり得ると思います。本当にさまざまな住所の電話番号を聞きたいだけかもしれませんが、それは故意の問題として(つまり業務を妨害する意思があったかどうかという問題として)評価されることになるでしょう。
*/

こちらについては、たとえば同じラーメン屋に毎日出前を頼んでいると、ある日突然、偽計業務妨害の故意を調べるために逮捕される可能性がゼロではない、と理解させていただきました。

システムエンジニアを生業とする自身の感覚からすると、ベンダー側で既知な事象が商用(実利用されている)サーバで顕在化した場合に、適切な説明をせず、「大量アクセス」とミスリードしたのは犯罪的行為だとしか感じられないんですが…。じゃ、このミスリードがより強力な故意を為した行為、という見立ては無理筋でしょうか。顕在化した後にアクションしてるので、単なる認容では済まないと思うんですが。
心情的には、こういう不誠実な対応(介入)は許されないって思うんですが。

理論構造の補足に「(1)通常のブラウザによる個別の利用とは異なる・頻回のアクセスであること」という記載があるのを見落としていたので、二つ目のコメントは問いかけとして適切ではないので読み捨てて下さい。
で、改めて、
「(1)通常のブラウザによる個別の利用とは異なる・頻回のアクセスであること」という記載をなさっているということから、今回のアクセスが「欺罔・誘惑/錯誤・不知の利用」に該当する、という判断が適である。と考えられているように思います。それが何故かが理解出来ないでいます。
個別が適切なアクセスであっても一定の頻度を越える頻回であれば「欺罔・誘惑/錯誤・不知の利用」と扱う過去例があるのであろうと思いますが、今回の頻度は、国会図書館が対応要求している頻度と同様な頻度であるので、図書館が大量アクセスによる被害として、被害届を出したとしても、構成要件として成立するのはおかしくないでしょうか。
被害者が多いと感じる量は被害者の主観によって成立するのでしょうが、今回の量は量を問題にしてはいけない量であることが第三者的に定義されているのではないでしょうか。

>mohnoさん
可能性はあると思いますが、一方で行為者は逮捕前の取調段階で調書に署名しているそうですし(もちろんそうすればすぐに帰れるのかという思いがその時点であっただろうことについては否定しません)、最終的に検察の(容疑を認めるような記述になっているらしい)調書にも(延長後の)勾留期限前に署名していることになります。事実はもちろんわかりませんが、私自身は調書の内容を認めるために時間がかかったという推定には否定的です。
後者について、まず警察の視点からすればそれ以外にも(ページ名変更に追従したなど)故意の存在を推定する事情は重なっていたということでしょう(その一部がベンダーの主張を丸飲みしてしまったことに由来している可能性は大いにあると思いますが)。その上で、まあわたしは「問題」があるとは言っても責任があるとは言っていないと思いますが、とにかく無実なので同様のふるまいを断固として続ければ、確率的には同様の事件が再発するでしょうね、とは予測しておきます。人気のない暗い道をひとりで歩いていてホールドアップに遭ったとして、私は被害者に当該事件に関する責任など微塵もないと思いますが、しかしプノンペンの話だったとすれば本気でただの阿呆だと思いますし、世の中に悪者と間抜けがいる確率は決してゼロにはならないので、東京の話だったとしてももう少し気をつけたほうがいいとは言うでしょう。ああもちろん相手が私にとってどうでもいい人間であれば「そうですかそれはかわいそうでしたねあなたはなにひとつわるくないのにね」とか言っておくといい人のふりができるかもしれないなあとも思いますが(とかこういう書き方をするからまた怒る人が出てくるんだろうけど)。

>biacさん
第一点、その質問にbiacさんの期待するような方法で答える法律家はいないでしょう。「前後の事情で異なります」という答え方もありますし、「(単位時間あたり)n回なら『頻回』です」と言えばn-1回のペースのアクセスを続ける技術者が出るだろうという答え方もあります。社会が法律家に期待しているのは、一定の明確なルールを守って事例にそれを適用することではなく、「結論として妥当だ」と社会が承認するような帰結を導くように「弾力的な」解釈を実現することです。この話は前に書いたことがあるのですが、中古ゲーム販売が合法であると判示した最高裁判決があります。おそらく技術者を含めた国民の多くはそれをよしとしたと思いますが、法的にはウルトラCでした(なにせ《書かれていないルール》を適用したのです)。
この点、専門的には私が『法解釈の言語哲学』で論じた問題で、《行為時にその行為が合法か・違法かを確定することはできない》という内容になります。AさんとBさんが時点tにおいて契約書に適切な方法でサインしたら、その契約は時点t+1において有効かと聞くと、法学部でも多くの学生は肯定します。しかし時点t+2において「実はAさんは契約の内容を誤解していた」(錯誤)という事実が発覚するかもしれず、その場合当該契約は無効になりますが、無効の効果は時点tにさかのぼって発生します。つまり、実際の時点t+1においてはみんなその契約は有効だと思っているのですが、t+2になってから《実はtにおいてすでに無効であった(従って当然t+1においても無効である)》ということが決まる、ということになります。行為の評価はこのように常に事後的にしか為され得ず、かつ事実に対する評価も常に事後的にしか為され得ない以上それをもとにする行為の評価は確定しないというのが、簡単にまとめた同書の結論です。逆に言えば、だからこそ我々は時効や除斥期間、即時取得や登記といった制度によって事後の再評価(ないし蒸し返し)を封じるようにしてきたわけですが。
第二点、偽計業務妨害は故意犯ですから事前に故意の存在を推認させる事情がないと逮捕状も出ませんがという茶々は抜きにすると、たとえば同じラーメン屋に営業時間中30分おきに出前を頼み(なお調理から出前のための往復に30分を要するものとする)、もって当該ラーメン屋の営業に支障を生じさせた場合、そのような結果になることへの予期と認容があれば偽計業務妨害罪の成立が肯定される余地はあると言うべきでしょう。この際、代金はきちんと都度払っているとして(当たり前で払っていなかったら別の罪になりますが)、しかし本当に来客の多い家で全部きちんと完食していましたとなれば故意を否定する要因になるでしょうし、食べずに捨てていたとなれば故意を推定する要因になるでしょう。当該ラーメン屋が出前配送料としてそれなりの金額を請求していたとすれば同様に故意の認定に否定的になるでしょうし、顧客サービスとして店内と同じ金額しか請求していなかったとすれば《サービス提供者側の予定していなかった不正な利用である》と判断される可能性が増すでしょう。
事例の最終的な判断は、このように多くの周辺事実に依存しますから、それらをすべて捨象して「黒とされる可能性はあるか?」と聞かれたらありますとしかお答えのしようはありません。それにしても、「毛が多い人はハゲではない」と言ったのに対して「三本生えていればハゲでない可能性があるということか」と聞くようなもんやな、とは思いますが。

>s_mizukawaさん
一つめ、「犯罪的」という形容を使いたい気分はよくわかるのですが、やはり「製品に問題があることを告知すべき法律上の義務があるか」というのが問題だと思われます。で、それは一般的にはない。消費者(というのは情報・能力において事業者と大きな格差があるということを前提にして)に対する場合に特別法で設定している場合があるということは、逆に言えばそれ以外の場合には存在しないわけです。また、警察に対して本当のことを言う義務というのがそもそもないわけで(あったら彼ら楽だろうなあと思いますが)、やはり無理筋だと思います。
二つめ、国立国会図書館法の第25条の3第2項だと思いますが、[国会図書館の]「館長が記録を適切に行うために必要な手段を講じなければならない」なので、法律的には「他の人の同レベルのアクセスにも耐えられるようにしなさい」とは書いてない。いやまあ普通そうするだろうとは思いますけれども、たとえば国会図書館からのアクセスとそれ以外を区別し、前者にだけクローラに対応できるだけの資源を割り当てるというシステムがあったとすれば(なんでそんなややこしい設計するんだとは思いますが)、この規定には反しないです。もうひとつは、「適切に」記録するのには対応しなさいということなので、最初からrobots.txtでアクセスを拒否するのは問題ですが、たとえば国会図書館のクローラが同時にすごい数のアクセスをかけてくるような悪質なものだったとして、それにも対応できるだけの能力があるサーバを導入しないと違法状態になるかといえばそうではない。「それは適切でない」と反論できる余地があるのですね。
結局この国会図書館のクローリングが(誰のものであれ)「大量アクセス」にならない基準を法的に定めたという理解には無理があります。現実にはこれがある程度の基準にはなるでしょうし、故意を否定する重要な要因にはなると思いますが、構成要件該当性をただちに否定するものではない、という位置付けでしょうか。

重ねてお返事ありがとうございます。

「ページ名変更に追従した」がまさにそうですが、スクレイピング自身が“問題”なのであれば、なるほどわかりました、ということになります。ただ、先の2番目のツイートにも書いたのですが、その問題は情報を持っていこうとする問題であって、サーバーを停止させようとした問題ではありません。(そのために1秒1回というのでは、全然足りませんので)

また、実際のサイトを見る限り、とてもプノンペンを思わせる貧弱マシンでCGIが動いているというようなサーバーには見えず、夜間開放された新宿御苑のような頑強なサーバーに見える、というのが最初のツイートです。

しつこくて申し訳ありません。

構成要件を成立させる「相手が甚だしく困惑」ですが主体は「図書館」と解釈してます。で、それを客観的に表現したものが「被害届」。なら、「図書館」が「被害届」を取り下げたら何か変わったりしませんか?
業務妨害罪は親告罪じゃないのは調べたんですが、第三者が認定出来る被害が他にないなら、被害が無くなると思うので「違法性」が構成出来なくなるのではないかと。
「繋がりにくい」と言われた。という図書館の言があるから、消えないでしょうか。そもそも「被害届」は取り下げ出来ないものでしょうか?

> 「前後の事情で異なります」という答え方もあります

単発ないし散発的なアクセスか、継続的・頻回のアクセスかは、原理的には区分不能である、というお答えですね。なので、たとえば「前後の事情」などを都度だれかが勘案して(悪く言えば恣意的に)決めるのだ、と。

さて。今回の事例では、クローラー実行前の事情は無いですね。
実行後の事情は? それはたとえば、閲覧不可という被害が出なかったら、大量アクセスではなかった、ということになりますか?
端的に言えば、被害が出たから大量アクセスであった、と?

(3B)被害が起きたから、大量アクセスであった。大量アクセスであるから、(3A)構成要件該当性がある。大量アクセスであったから被害が起きたので、(3C)因果関係がある。
…3A~3Cに分解して示していただきましたが、これではけっきょく被害が出たから (2A)違法性がある、としか言ってないように感じます。
(3A)と(3B)は、いちおうは独立して判断されるべきものではないのですか?

あるいは、被害の有無以外に、本事例で異なる実行後の事情がありえますでしょうか?


> 「結論として妥当だ」と社会が承認するような帰結を導くように「弾力的な」解釈を実現することです

現状、私のような法律の素人である IT 技術者が直面しているのは、まさにその『「結論として妥当だ」と社会が承認するような』Web アクセスプログラム (クローラー含む) のあり方を導けるような『「弾力的な」解釈を実現』していただきたい、ということです。いや、実現していただかないと、前へ進めない、せっかく著作権法が改正されたのに、前進どころ退歩しなければならなくなる、ということです。

今世紀に入る頃から本事例が起きるまでは、Google のような Web アクセスプログラムを作って動作させることは、社会的にも法的にも (今春までの著作権法を除いて) 問題無いというコンセンサスが取れていると思ってきました。
しかし、本事例でそれが覆されてしまったのです。

「大量アクセスは業務妨害罪に問われる可能性がある」 ということですよね?

IT 技術者としては、動作させるだけで犯罪になる (可能性のある) ソフトウェアを作るわけにはまいりません。
IT 技術者がやたらと本事例の法的解釈にこだわるのは、つまりは次のことを知りたいからです。


「大量アクセスで業務妨害罪に問われる可能性の無い Web アクセスプログラム」

…が満たすべき特性、あるいは…

「大量アクセスで業務妨害罪に問われる可能性の無い、 Web アクセスプログラムの運用方法」

…を知りたいのです。

/*
たとえば国会図書館のクローラが同時にすごい数のアクセスをかけてくるような悪質なものだったとして、
*/

補足させていただくと、もちろんそんなことはないわけで。

国立国会図書館から昨年 9月付けで公開された 「改正国立国会図書館法によるインターネット資料の収集について」
http://warp.da.ndl.go.jp/bulk_info.pdf
の p.6 に次の記述があります。
/*
収集対象機関ウェブサーバの負荷軽減のため、ダウンロードの間隔を1秒以上あけます。
*/

「たとえば同じラーメン屋に営業時間中30分おきに出前を頼み(なお調理から出前のための往復に30分を要するものとする)、もって当該ラーメン屋の営業に支障を生じさせた場合、そのような結果になることへの予期と認容があれば偽計業務妨害罪の成立が肯定される」というのはばかげているというのが一般的な評価じゃないでしょうか。ラーメン屋は、出前の範囲を設定したり、料金を決める自由があります。

犯罪的というのは、犯罪と考えられるくらいひどい・不道徳だけど具体的に罰する法律が無いから犯罪「的」というのでは。

横レスですが
>>biacさん
>端的に言えば、被害が出たから大量アクセスであった、と?
本件事例ではおおやせんせいの理論では
1.クローラのn回のアクセスがあった(時刻t)
2.警察が介入、大量アクセスと認定(時刻t+1)
時刻t+1において警察の中の人が
このアクセスは大量なんだなぁと認定したことによってはじめて
時刻tにおけるn回のアクセスが大量と評価されるので、
このアクセスは大量なの?と言われても(時刻tでは)不明、という結論かと。
(「行為の評価はこのように常に事後的にしか為され得ず、かつ事実に対する評価も常に事後的にしか為され得ない」とある)

t+1での「大量アクセス」なる文言は日常的用語法および
理系の考える「大量アクセス」の用語法とは異なるので
件の結論(逮捕)になったのではないかと愚考。
現在(時刻t+2)では警察の中の人が
「大量じゃなかった」っていう認定をしているのでしょうが。


>「大量アクセスで業務妨害罪に問われる可能性の無い Web アクセスプログラム」
>…が満たすべき特性、あるいは…
>「大量アクセスで業務妨害罪に問われる可能性の無い、 Web アクセスプログラムの運用方法」
>…を知りたいのです。
それは満員電車で痴漢と間違われない方法を考えろと
言うようなものではないでしょうか。などと。

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