ウイルス作成罪とそのおまけ

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「【日本の議論】ウイルス作成罪成立に向けて 相次ぐサイバー犯罪が背景」(MSN産経ニュース)という話題に関係して、また変な議論が多少出てきているようなので、二点。まあいつものような話なんだけどな。

一つめは「法務省によると、ウイルス作成罪では、コンピューターウイルスの作成や提供、供用に対し、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金を科すことにしている。取得と保管には2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金といった罰則も定める予定だ。」という話。いつものようにうっかりダウンロードしてコンピュータに入っていたら犯罪になるのかという疑問を出している人がいるようだが、刑法の一般原則として「過失犯も罰する」旨の規定がない限り、処罰対象は故意犯に限られるというものがあるので(刑法38条1項)、そうはならない。また、故意があったことを証明するのも検察側の責任であって、なかったことを疑われた方で証明する必要はないですよ、ということ。まあもちろん警察の取り調べが実際にはどうかとかいう話はまだできるのだが、しかしそれは規定がどうだろうと同じように起きる問題なのでここで議論しても仕方ない話。

二つめは「また、わいせつ物頒布等罪の処罰対象を拡充し、わいせつな図画や動画といった電磁的記録の頒布行為も処罰の対象とするという。」という点で、なにか一緒に付いてきたと慌てている人もいるようである。しかしこれは、電磁的記録は「図画」かという神学論争があったのでそれに決着を付けるというだけの話で、やはり問題にするようなことではないというのが私見。

どういうことかというと、日本の現行刑法というのはもともと明治40年に制定されたもので、わいせつ物頒布罪についても「わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者」を処罰するよ、と書かれている(文章は口語化されている)。この「文書、図画」というのが制定時の想定としてはほぼ紙に目に見える形で刷られたものを想定していたことはほぼ間違いないわけだが、そこから、じゃあそれ以外の媒体に記録されている場合にも処罰対象になるのかどうかと言い出す人が出てきた。

特にややこしくなったのはビデオテープ以降で、大昔のブルーフィルムであればフィルム上に記録されたわいせつな画像が目で見えるように存在するわけだから《これは「図画」だ》という結論に疑問は出なかったのだが、いかにわいせつな映像を記録したものであってもビデオテープ自体を透かして何かが見えるわけではない。だとすればそれ自体ではわいせつな「図画」と呼べないという主張をする人が現れた。もちろん同じことがDVDだのハードディスクについても言えるわけだ。

まあ実務的には「そんなわけにいくか」という話ではあって、適切な装置を用いれば認識可能だからという理由で「文書、図画」としての性質を認定してきたわけだが、まあこの機会に明確に規定し直すことによって黙らせようかなと、それだけのことだと思われる。

ちなみにここでいう「わいせつ物」というのは、現在の基準で簡単に言えば無修正ものということであってその点が変わるわけでもない。要するに無修正AVのDVDを売ったら捕まりますという、まあそうやなという事態を明確化しただけのことなのである。(9/16公開)

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コメント(1)

「電磁的記録は物じゃない」という抗弁を封じる目的もあるのではないでしょうか。実務では解決済みでしょうけど。

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