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続・おばけ高齢者

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ようやく前期の講義に関する事務処理が終わったら夏も終わりかけている件について(涙)。さて書類上生き続けていることになっている「おばけ高齢者」の問題については前に一度書いたのだが、その後も続々と事例が出てきているようであり、ついには戸籍上200歳超の老人がいることが判明などと記録競争の様相を呈している。前に『思想地図』の対談で、親の死亡を隠して年金を受け取り続けていた40代無職男性だかの事例に笠井潔先生が言及しており、それは若年層の不正規雇用化などによって今後こういう事例が続々と出てくるという予言でそのとおりだなと思ったものの、まさかそれより先に高齢者が超高齢者を食い物にしている話が露見してくるとは思わなかったよなと

しかし繰り返して言うが、同じように「書類上は生き続けている」事例にも (1)住民基本台帳上も生きているので年金等の不正受給に直結しているケースと、(2)戸籍上だけ残っているケース(住民票は消えている)があり、前者には犯罪の可能性が強いが後者はそうでもない。確かに死亡届を出して戸籍上も消さないと火葬の許可が出ないので戸籍だけ残っている超高齢者の遺体というのはどこかに消えたことになるわけだが、第一に家族による年金不正受給などが動機であれば住民票が消えても困るので何らかの方法で居住の事実を含めて偽装し続ける((1)のケース)だろうし、第二に殺人の隠蔽などが動機で「どこに行ったかわからない」ということにしたいのであれば7年経ったあたりで失踪宣告を取って戸籍上も消すんじゃねえかと思うからである(時効までは待つかもしれんな)。そうでないと相続もなにもできないわけでね。

じゃあ何故(2)のような問題に発展するかというと、その理由は簡単で住民票は市町村の権限で消除できるが戸籍を消すには管轄法務局の許可が必要だからですわな。どちらも実際に管理しているのは市町村だが、前者なら「居住の事実がない」ということを確認したあとは内部手続で済むのに対し、後者はそれだけでは足りず、「まあ生きていないだろう」ということを法務局に対して納得させる必要がある。このあたりの実務について私はぜんぜん詳しくないのだが、聞いた話では親族が残っていないか探すとかいろいろ面倒な段階を踏まないといけないらしく、一方でそれをして自治体に何の利益があるかというと戸籍がきれいになるという程度であろうか。給付の方は住民票ベースでやっているわけだから、妙な戸籍が残っていても別に自治体として困るわけではねえよなという話のようなのである。

しかしまあそれでも百歳以上の超高齢者がぞろぞろいる戸籍ってのも気味悪いよなと担当者が思った場合には多分年に一回とかまあ適当な契機で棚ざらえ的に職権消除の手続をとって問題を解決しており、他方なんか忙しいので先送りしようと思っていたらその後機会を見失いましたとか、最初からやる気がありませんでしたという自治体では生き延びてしまったと、それだけの話だろうと思われる。市民課の中の人に聞いてみたら、「ウチでは申し送りで年に一度やることになってました」とか「聞いたこともありません」とか、差が出てくるんじゃないかなあ。

いやしかしもちろん中には別に財産目的でもなく、とにかく殺してしまったあと遺体を何らかの方法で始末し、発覚を恐れてびくびくしているうちに殺した方まで死んでしまって親子とも住民票を消され、しかし親の方の死亡届は出ていないので戸籍が残りましたという事例もあるかもしれないとは思う。ないと断言することはできない。しかしまあどう考えてもそういう事例よりは、前回も指摘した関東大震災や第二次世界大戦での被災の事例の方が多いだろうと思うし、あるいは(ちょっと調べたら書いている人がいてああそうやなと思ったのだが)戦前なら中国・満洲、戦後ならブラジルをはじめとした南アメリカに「一旗揚げに」出かけたまま帰ってこなかった人も相当多いだろうと思われる。

戦争や災害による一家全滅というのは戦前・戦中まではまったく珍しくない事例だし、1960年代まで日本は成功を夢見た人々が出ていく国だったことを忘れてはならない。後者の場合、本当に落ちぶれ果てて死んでしまった人というのもいれば、現地で成功して「土着化」し、大往生を遂げて葬式をあげて墓も作ったが日本大使館に死亡届を出すのは忘れましたという人もいるだろうと思われ、まあ要するに二世以降は日本との関係も希薄なわけだし、こういう戸籍手続は南アメリカなどにはないものであるので(つうか一部東アジアにしかない)忘れる人いるよなという話である。震災のさなかに深川で被災してそのまま葬られた人とか、原爆投下のあとに身元不明のまま埋葬された無数の遺体とか、あるいはブラジルの大地に骨を埋めた日系移民というのも「死亡届→火葬許可」というルートを通らなかった「消えた遺体」だといえばそうなのだが、しかしそこに取り立てて問題にすべき事件性などがないことは言うまでもない。報道されている事例も基本的に「(1)で不正受給発覚」「(2)がいました!(別に犯罪とか関係なさそうだけど)」のどちらかである。要するに違う問題なのを一緒くたに「おばけ高齢者」にしてしまうから、存在しない問題を見てしまう人間が歴史感覚のないあたりから出てくるよと、そういう話なのだ。

***

でまあ今頃になってこんなフォローを何故するかというとWEBRONZAで(またしても)三浦展氏が「死体遺棄の可能性を示す高齢者行方不明」とか言い出しているからで、なんかこう「さすが踏みますねえ」とか円熟の芸を見ている心境にだんだんなってくる。自分も書いているのでボジショントーク気味だが、しかしWEBRONZAってお金払わないと読めないところの方が品質低いんじゃないかねえ。まあ人民への知の還元とかそういう観点からはその方がよいかもしれず、いずれにせよ私自身はお金いただければ別に何でも構わないのだが、商売としてそれはどうなのかと他人事ながら心配になってくる話ではある。

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Comment(4)

Vampire.S さんのコメント (2010年8月31日 22:50):

>WEBRONZAってお金払わないと読めないところの方が品質低いんじゃないかねえ。

只で読める場所は広告として機能する必要があって、それなりに査読しているんじゃないでしょうか。

そして、本体の発刊目的はとにかく「主幹の言いたいことを言わせること」にあるとすれば、手段と目的が合致するような気がします。

匿名希望@自信喪失 さんのコメント (2010年9月 1日 17:32):

言論機関の質の低下は今に始まったことではないので、特別驚くことはないと思います。
私は素人なりに朝日新聞よりは読みがあると自負してきたのですが(たとえば2005年の郵政解散のときは小泉首相は絶対に解散すると見切っていたが、朝日新聞の記者は誰ひとりそう思っていなかった等)、最近の政局では私も読みをことごとく外して自信喪失です。
たとえば、社民党は絶対に連立政権を離脱しない、菅首相は消費税について具体的な数字には言及しない、選挙で民主と自民はイーブンぐらいだろう等、すべて外しましたが、決定的なのは、今度の民主党代表選に小沢前幹事長が出るわけがないというものでした。これには絶対の自信があったのですが、見事に外れました。
小沢氏としてはぎりぎりまでブラフをかけて、幹事長ポストを取るつもりだったと思うのですが、菅氏がこれをはねつけたのも予想外でした。
代表選では小沢氏が勝つと思いますが、こうなるとこれも外れるかも知れません。最長で三年選挙がないことを考えると、今後の国政はどのように動いていくのか、おおや先生としてはどのようにお考えなのか大まかに伺えますでしょうか。

豊後各駅停車 さんのコメント (2010年9月 5日 13:57):

「きょうだいは他人の始まり」とはよく言ったもので、弟に5年会ってない、というか一生会えないだろう。
私は割とポジティブなのに、弟は「兄に関する記憶は全て消し去りたい」と思っている。切ない。

匿名希望@もうだめぽ さんのコメント (2010年9月15日 07:02):

というわけで、やはり民主党代表選の予想も外れました。国会議員票では小沢氏が勝つだろうという予想も外れました。私も朝日新聞の記者およびWEBRONZAの識者(おおや先生除く)並みに落ちぶれてしまったようです。しばらく謹慎して一から修業をやり直します。

修行の慰みとして、今後の政権および国会運営について、おおや先生はどのようにご覧になっているのかお聞かせ願えますでしょうか。

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