おばけ高齢者

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なにやら100歳以上の高齢者が大量に所在不明になっていて問題になっているらしいわけであるが、これは次の二つの問題に分けて考える必要があることに注意。

一つ目は死亡届を出す人がいなかったという状況で、つまり実態としての人間が死亡しても適切に死亡届が提出されない限り戸籍上の存在は消えてなくならないわけである。ある人が死んだということを誰かが確認して届けを出してくれない限り、その人は戸籍上だけの存在として生き続けてしまうわけだ。

そんなことあるかと言われるかもしれないが確実にあるわけで、というのは我が国には関東大震災と第二次世界大戦というのがあり、あれで避難の最中に一家全滅とかいう場合が典型的である。家族は誰も残っていないし、病院や自宅で死んだ場合と違って残された遺体といなくなった家族の照合も極めて難しい。結局「身元不明」の遺体と・消えない戸籍が残るということになるわけだ。現在問題になっている100歳以上の高齢者というのは終戦時に35歳以上、関東大震災(1923)の時に13歳以上だから、どちらの場合でもこのような災禍に巻き込まれた可能性は十分あるだろう。

ところでこれがどの程度の問題かというと、もちろん問題には違いないがそう大した問題ではない。というのは日本の福祉というのは、年金にせよ生活保護にせよ申請主義であって、本人ないししかるべき代理人がくれろと言わない限り給付されることはない 。第一類型のおばけ高齢者の場合、そもそも適切な届を出す人間がいないことが発生原因だったので、そこから給付の申請を必要とする社会福祉の不正受給につながる可能性もないと考えられる。

だとすれば、まあとりあえずほおっておいて余裕のあるときに調査したり戸籍を職権で抹消したりするという対応も、前述のようにそういう人がそれなりの数いるという状況では、適切なものだろう。調査で事実を確定することはかなり難しく、別に放置しても統計の信頼性が多少落ちるくらいのものなのである。

問題はこれと違う第二の類型で、つまり周囲の人間が有利になる申請(年金の受給など)は行ないつつ、不利になる申請(典型的には死亡届)は出さないことによって不当な給付を得るというものだ。

しかしこちらの場合には届出義務を怠り・不当に給付を受け取っていた行為者がいたはずなのであって、事実が露見した段階で(そしてそれは最終的には必ず露見するはずなのであるが)民事的にはその行為者に不当利得の返還を請求すれば良いわけだし、刑事的には捕まえて監獄に入れれば良い、一般予防の見地からはまあこれだけ話題になったことでもあり十人がとこも摘発しておけば抑止効果があるかしら、という程度の話である。もちろん現実にはこの種のことをする人間は無資力であるケースが多く、あとから取り返そうとしても取れる金を持っていないわけではあるし、監獄に入れるぞと脅しても(100歳過ぎの超高齢者の子供とかなので)高齢者にどれだけ威嚇効果があるかと効かれると困る。困るが、この問題をクリアするためには債務奴隷だの身体刑だのを復活させないといけないわけであり、まあそれはぞっとしないねえと思うなら甘受しなくてはならない犠牲だとしか言いようがないわけである。

何が言いたいかというと、第一に前者の事例は被害のない・書類上の問題に過ぎないのでそれを抜きにした実質的な問題がどのくらいあるのかを認識することが重要であり、第二にその結果後者の事例がどの程度深刻なのか、それは虚偽の届出をしたり届出を懈怠して死体を隠蔽していたような行為者を事後的にひどい目に合わせるというのでは不十分な・まともに生きてきちんと届出をしている人を含めて事前にチェックするという巨額の行政経費を必要とする手法によってしか解決できない問題なのかを考えるべきだということである。

つうかそんな新しい実を付けない用途にカネをつぎこむくらいならその分大学教育に回して将来の社会福祉の原資を増やせるようにタネを探した方がマシだと思うわけだが、どうか(ポジショントーク)。

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コメント(2)

そうですね。
調査をしていると、(高齢者でなくても)住民票の所に住んでいない(そして、所在不明の)方々が多くいることが実感できます。

あと、昔、官報を見ていたら、慶応等明治以前の元号の方の失踪宣告が載っているのを発見しました(結構ありました)。これって、何でしょうね?

>TKさん
私自身はそういう実務についてまったく疎いので推測ですが、ご本人かお子さんの代で子供のいない相続が発生したんじゃないですかね。子供がいないと直系尊属、さらに兄弟姉妹の順で相続権が発生するわけですが、失踪宣告で「死亡している」という推定を取っておかないと順位が確定しないので。
30日のエントリを書くときに調べて初めて知ったのですが、(異常な)高齢であるという理由で戸籍を職権消除することは(法務局の許可で)できるのですが、それはあくまで戸籍を整理するという効果を持つのみで、相続をするためには失踪宣告があらためて必要になるそうです。これかな、という話で。

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