段取り

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参議院衆議院の衛藤副議長が民主党の議事運営について批判したのが「異例」だとして民主党関係者から批判されているらしく(「衛藤副議長が与党に苦言? 民主「唐突」と反発も」MSN産経ニュース)、つまり通常はこの種の発言をする場合には事前通告するものだということのようなのだが、事前に言ったら本会議やらないつもりだろ? と思うわけで、というかこういうことをする人々が言えるようなことではないよねえ(「民主、問責提出の参院本会議開催を異例の拒否 参院選、7月11日投開票正式決定」MSN産経ニュース。ちなみに事実自体は、たとえば朝日新聞も報道している。たとえばマイタウン鹿児島「さあ参院選 各陣営が本格始動」(asahi.com)には、「再選を目指す自民の野村哲郎氏(66)は、参院本会議のため、東京に足止め。結局、民主党側が本会議を開かず、流会で会期を終了した。」との記述がある)。

でその、これは噂として出ているという水準の話なのだが、なんで問責決議案を出されたら困るかというのは確かに多少謎である。というのは連立与党は(社民党の離脱後でも)参議院の多数はまだ握っているのであって、決議案を提出されても粛々と否決すればよいはずだ。また実際衆議院では不信任決議案に対してそうしたのであって、なぜ参議院ではそうしなかったかという問題になる。で噂というのはなんかすでに選挙準備のために地元に戻っていた議員がかなりいて、そのまま投票すると問責が可決されそうだったからという話で、あのこれはあくまでそれが本当だったらということで言うのですが、馬鹿じゃねえの。問責が出そうだということは予測されていたし、自民党の側では採決に備えて呼び出しをかけていたわけで、なぜ同じことができなかったのか、参議院国対の凡ミスだ、ということになろう。

ところで今国会における内閣提出法案の成立率が55.6%に留まるという報道があり(「<国会>16日閉会 政府提出法案成立率、戦後最低に 」毎日新聞)、これは通常80%台であることを考えると異例としか言いようのない数字で日本の法システムの特徴などについて留学生に講義している担当者としては大変に頭が痛いのだが、その理由を野党となった自民党の抵抗に帰すことはできない。というのは連立与党は衆参両院で多数、衆議院では再可決に必要な2/3すら手に届く数字を握っているので、再可決は可能だが参議院の多数を失っていた「ねじれ国会」の安倍・福田・麻生自民党政権期より野党の抵抗を排除する能力では上回っているはずだからである。

さらに言えば、鳩山総理・小沢幹事長の政治資金問題や口蹄疫に対する赤松農水相の対応のようなスキャンダルというのも言い訳にはならない。その種のトラブルが自民党政権末期になかったというわけではぜんぜんないし、そもそも一定の確率でこの種の問題は起きるのだから、それを考慮してスケジュールを組むべきものだからである。

すると問題は、いま言及したが、スケジューリングの問題だということになる。日本の議会制度においてもっとも稀少な資源は審議時間だというのは、だから野党の基本的な戦略は「時間切れ」狙いであり、議会全体の性質が少数派に意見発表の機会を保障する「アリーナ型」でも少数派の意見を取り込む「変換型」でもなく「粘着型」になっているというのとあわせてMike Mochizukiがつとに指摘したことであり、それ以上に議会人であれば体感で理解していなくてはならないことであろう。だから自民党政権は、成立を目指す法案に優先順位を付け、限られた会期中に重要法案を間違いなく成立させられるように、衆参両院で審議時間が確保できるように、スケジュールを組んできたわけである。

報道でも、今国会における民主党政権のこの点における対処が「ちぐはぐ」としか言いようのないものであったことは指摘されている(「参院選、先送りも 「政治とカネ」終盤国会にズシリ...」MSN産経ニュース)。この点における事前の計画能力の不足と対応の失敗が、例外的な低成立率の原因だ、ということになろう。

そして問題はこういうことである。政策の立案とか決定とかについては、与野党のあいだに立場の違いとか情報量の格差とかがあることを認めないでもない。他の先進国の野党が、それでも自前でブレインを組織したりシンクタンクと連携したりしていることを考えれば甘えてんじゃねえのという気がしないこともないのであるが、しかし外交防衛問題とか、やっぱり限界もあるだろうとは思う(それにしても「抑止力」の概念くらいはよおとかいう話は余談になるので措く)。

しかし、議会運営のルールについてそのような非対称性はないはずである(議院運営委員会の理事を出せない規模の小会派については多少同情の余地はあろう)。むしろ野党時代にはそれを活用して抵抗する立場にいたのであるから、なぜそれがまともに使えないのか、適切な事前準備ができないのかという批判に対してなし得る弁護はないように思われる。端的に言えば段取りのできないダメな人しかいないの? という話だろう。

「政権交代準備完了」とか吹いていたわりには、政府としての統治だけじゃなくて政権与党としての議会運営の準備もできてなかったのね、という悲しい話なのであった。 (6/20公開)

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コメント(2)

>参議院の衛藤副議長

衆議院の間違いでは?

>蜃気楼さん
ご指摘ありがとうございます。修正しました。

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