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なにをいまさら(2)

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ある方から伺って大変に感じ入った話に「政治家にとって重要なのは何を言うかではなく、何を言わないかだ」というのがあるのだが、その面のコントロールがまったくできていないことで有名な山岡賢治・民主党国会対策委員長がかつての国会審議をプロレスにたとえたところプロレスの中の人から怒られましたという愉快な件について(「民主・山岡議員が「八百長」発言 プロレスラーが「侮辱だ」と「公開質問」」J-CAST)。

え~私自身はプロレスに関する見識がまったくないのでその辺に関する言及は避けますが、まあ実際問題としてかつての国対政治と言われるものが与野党間の妥協と駆け引きと演出と儀礼的要素に満ちていたというのは本当のことで、それは中島誠『立法学序論』や大山礼子『国会学入門』にも書かれてきたことであるし、私もねじれ国会問題と関係して紹介したことがある("Twisted Diet: A Failure in Legislating Politics in Japan", Legisprudence, vol. 2, no. 3, 2008.)。

だからまあ、そういうものであったことを前提にそれとは違うことをやりたいというのは構わないのだが、問題はいままでそのルールの下でさんざん利益を得てきたやつが自分が払う側になったらちゃぶ台返すというのが許されるかという点にあるだろう。なんだ、ベビーフェイスが音だけ派手なチョップを連発したらヒールが凶器のフォークを取り出したので「お、流血の演出か?」とニヤリとしたら目に突き刺されましたというような話。なお役割は凶器を出すイメージとの関係で割り振ったので別に民主党はヒールだとか言いたいわけではないよ。ヒール頭が良くないとできないしな。

閑話休題、まあもちろん戦争であればこれはありというところはあって、つまり騙し討ちだろうがなんだろうが相手が二度と抵抗できなくなる状態に持ち込めれば終了というのも事実。でも国内政治ってそういう絶対的な対立で、相手を殺すまで続けられるものだっけ。

というわけで、これは要するにいつもの問題である。つまり政治には一定の資源(政治権力とか利権とかそういうものだな)の分配をめぐる諸政党・政治家間の闘争という側面と、分配すべき資源の獲得や増加を目的として全アクターが協力する事業という側面がある。前者はゼロサム型で、相手を打ち負かすことが自分の勝利につながる。しかしそれだけを考えていると(たとえば)経済ががたがたになって気がつけば分配すべき資源がもうない、ということになるかもしれない。後者の非ゼロサム型のゲームが前者に吸収されてしまうことを防ぐために議事手続のような紛争のルールが決められているわけだが、おそらく(山岡氏の親分であるところの)小沢一郎というひとの最大の問題点はこの後者の側面がどうもまったくわかっていないらしいという点にある(だからそれは所詮「政治屋」だよねえと思うのだが)。それは(前者の)紛争を超えて適用されなくてはならないルールなので、変えるなら変えるで全員が合意できるような形をとるか、自分が不利なときにその不利を背負う形にするのでなければ正統性を調達できない。なにをいまさら、「別れろ切れろは野党のうちに言う話」だと、そう思うわけだ。

結局今回、まあねじれ国会時代の参院からそうなのだが、従来の議事運営の慣行をほとんど破ってしまったわけで、ふたたび政権交代が起きれば自民党側は当然に同じことをやり返してくるだろう。そうなると実は一番ダメージが大きいのは万年少数党である共産党や社民党なので、というのは投票に持ち込まれたらまったく存在感を示せないのでその前の議事進行段階で抵抗できないと大変に困るからだが、普天間基地問題だけでなくこの手続保障の無視というのも社民党を最終的に裏切らせる契機になったかもしれない(社民党はもともと議事手続上もほぼ泡沫政党扱いなのでもう影響はなかったかもしれない)。もちろんそうなっても記憶力とかintegrityに対する尊重とかのない鳩山氏をはじめとする民主党の政治家たちは政権与党時代のことなどなかったように騒ぐのだろうし、たとえば同じ「強行採決」という言葉を使ってしまうあたりに自民党時代のそれと今回の事例との違いがわかっていないのかわかりたくないのかしているマスメディアやそれを見ている善良なる市民は同調して騒ぎ立てるのかもしれないが、モノのわかっている人にはすべて見透かされることになってしまう。

このあたり、結局例の「事業仕分け」もそうなのだが、次の選挙に勝つための手段として煽りたてたのはいいとして、その影では「2番目ではいけないんですか」問題で理系の先生たちを怒らせていたり、JICAの仕分けで国際支援関係の人々をげんなりとさせていたり、労働政策研究・研修機構回りで関係者たちから「ああこいつら馬鹿なんだな」と思われたりしているわけだ。もちろん選挙が一人一票である以上どれだけ専門家たちを怒らせようが遠ざけようが大した影響はないわけだが(所詮専門家というのは少数勢力だしな)、それでどうやってまともな統治を実現するつもりなのかという気はしてくる。まあ権力を持っていれば向こうから近づいてくる人材というのももちろんいるわけだが、その挙句が陰謀論者とかですか残念ですねという話もある。

だからまあ民主党政権がアマチュアリズムの行く末みたいな経路をたどっているのも周囲にさまざまに香ばしい人々が湧いて出ているのもまあそうだろうねえという話であって、最終的にどうなろうが過去を覚えている人々からは「なにをいまさら」と嗤われることになるんだろうなあと、そう思うことではある。

***

とか書いていたら公開前に鳩山総理が辞任を表明してしまい、このエントリ自体が「なにをいまさら」になりましたと、そういうオチ。(6/3公開)

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