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数字
うんまあ私は個人的にこの人のことを研究者だとは思っていないので(過去のエントリも参照)別にそう不思議には感じないんだけど、数字だけは並べておこうかね何かの参考に(挨拶)。何かというと「韓国に追い越されるかも...日本で危機感増大:東大・姜尚中教授、「新韓日関係」テーマにソウルで講演」(朝鮮日報)について。
ひとつめ。「日本の家電メーカーすべてを合わせた売り上げよりも、サムスン電子の売り上げの方が高く」(以下略)。あ〜もちろん「家電メーカー」の定義によるわけですが、とりあえずサムスン電子の売上高が連結で136兆2900億ウォン、約11兆円。日本の家電専業のメーカーから見繕うと、最大のパナソニックが連結7兆7655億円、シャープが連結2兆8472億円、三洋電機が連結2兆2154億円と、これで超えましたかね。数字はWikipediaから拾っただけなので、たとえばサムスン電子は2009年だけど三洋は2007年とか、若干のズレがあります。三洋は売り上げ減少傾向なので本当はもう少し新しい数字を調べた方が信頼性が高くなるけど(「日本は全体的に不況で売り上げが落ち込んでいるはず!」とか言う余地がまだあるよね)、しかしこれ日立や東芝のような総合電機メーカー(重電機器の方が中心)の家電部門も、ソニーのような音響映像系メーカーの家電部分の数字も足してないんだよね。つまり、かなり純粋に家電に絞った数字でこれなので、まあ、それでええやろという話。
念のために全体的な数字でも比較しておくと、サムスングループ全体の売上高が連結で21兆円くらいらしい(2007年)。これには商社や保険会社の売り上げまで含まれるんだけど、まあとにかくそれと日本メーカーの売上高を比較できるように並べてみると、日立が10兆円、パナソニックが前述の通り7.8兆円、ソニーが7.7兆円で超えましたかね。これ以外に東芝が6.7兆円、富士通が4.7兆円、日本電気4.6兆円、三菱電機3.9兆円、キヤノン3.2兆円くらいまでが3兆円ごえで、さらに上掲シャープ2.8兆円・三洋電機2.2兆円といったあたりを加算していくと、まあ比較するのも阿呆らしいと、まあそういうことでしょう。
もちろん日本メーカー単体と比べるとサムスンは規模が大きいとか、そうなった背景としての寡占化を進めた(進めざるを得なかった)韓国経済と、世界的に見れば中規模の企業が群れをなして競争を続けている日本市場の違いなんかについて考えてみることは有益ですが(どちらが優れているかというのには難しい問題もあると思うけど、というか特定寡占企業以外の選択肢が事実上ない社会ってのも住んでて楽しいのかなと、日本人としては思う)、まあとりあえずそういう話ではなかったよね。
ふたつめ。「韓国製自動車に対する評価も急速によくなっている」と言われてもたとえば人々の内心における評価が直接見えるわけではないので、とりあえず客観的なデータで代替してみましょうかね。新車の登録台数。さしあたり評価の低い車を買いたがる人が大量にいるとは考えにくいので、人々の評価の代替的な指標としては使えるでしょう。これ以外に中古車市場における評価とかも考えられるけど、調べにくいので今回はパス。上記のデータは日本自動車輸入組合というところがまとめてネット上で見られるようにしてくれています。便利な世の中だ。
さて、車名別の推移(1995以降)を年ごとに見てみるとわかるのだが、韓国車を代表するヒュンダイでさえ最高は2004年の2524台で、そこから2008年の501台まで単調に減少、2009年は991台まで回復したもののこの傾向が続くかどうかはわからないし、以前の水準には遠く及ばないわけで「急速によくなっている」と評価するのは無理でしょう。ちなみに2010年の1月は17台、2月は12台だそうで、まあやっぱり改善はしとらんな、これは。
デウは2000年に813台を記録したものの2003年は85台まで急落、ここ3年間は一桁にとどまる。キアは1998年の30台が最高でここ5年間で7台のみ。ええと、他に韓国車のメーカーってどこがあったっけ。まあいずれにしても、どこを見ても評価が上がったりはしていないと言っていいんじゃないかな。ちなみにこれらの数字が絶対的な水準としてどの程度かというと、ヒュンダイの台数は一貫してアルファロメオやジープ以下(フェラーリよりは多い)。キアや最近のデウに至ってはマイバッハより少ない(1台で4千万円以上する超高級車)。ないも同然だろそんなの。大手どころだとBMW・ベンツ・フォルクスワーゲンといったあたりはそれぞれ年間3万〜5万台は売ってるわけでね。
もちろん「よくなっている」かどうかは相対的な問題なのでそれでも知っている人の評価は良くなっているという可能性はありますが、そんな大多数の国民は見たこともないようなものの評価の上げ下げで国民のムード語ってもらってもねえ。
まあそういうわけで、私のなかではこの話はああ評価を再確認したなで終わり。もちろん朝鮮日報の報道や翻訳に問題がある可能性は留保しておきます(でも以上のすべてがその部分の問題に起因すると、思う?)。なお姜尚中氏に「(日本)国籍を取得し、東京都知事選挙に出てみろ」と言った方に私も賛成するところがあり、そうすれば東大は失職だろ? 早く誰かが煽るといいんじゃないですかね。当選しても、まあ、もう東大の責任ではないわけだからさ。
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要約の仕方などいおいろありますが姜教授も
「サムスンの”税引き後純益”は」
http://puramu.dip.jp/1105763775
「韓国製自動車に対する”欧州や米国での”評価も」(そうするとちょっと文脈が狂いますが)
http://autos.goo.ne.jp/news/industry/137264/article.html
というふうに、丁寧に表現すれば間違いじゃない形で話せるのですがね。
それより個人的に気になったのは
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独島(日本名:竹島)問題については、韓国に冷静な対応を求めた。「一部の(日本の)政治家が妄言を発しても、韓国が感情的に反応する必要はない。独島はすでに韓国が実効支配しており、これを覆すことは不可能だからだ」と
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この”妄言”というのが竹島の日本領有権の主張のことだとしたら少し驚きになります。
普通の人なら「国民としてやはりその国の立場を・・・」とかいってもいいんですが、ナショナリズム批判の人だから逆に「知識人として冷静に判断した結果、あの島は韓国のものだ」と結論を出したのでしょうか。
それはそれで主張を聞いてみたい。
それにキム・ヨナうんぬんに関しては「スポーツの個人間の戦いを、国の評価に直結させる風潮はけしからん」と物申してくれると思ったのですが(笑)
まあ、いずれ出てくるであろう、より詳細な全文(日本語の講演だろうから)を待ちたいです。
本人がこう言ったのかは不明ですが、「電気メーカーすべて」というのは主要3社のことではないですか。主要6社ではないのでしょう。
あと現代自動車の評価も、日本国内の販売台数でなく、世界全体での販売台数のつもりではないかと思います。
うーむ.ヒュンダイ車に限って言えば,アメリカだったら売り上げ伸びてるのかもしれませんがねえ.そんなの日本じゃあまり知られてませんし.評価が上がってるのか,それとも不況で価格的なお手頃感が受けているのかもよくわかりませんが.
個人的には姜教授の東京知事選だけでなくて,H大のY口J郎教授(日本政○学会理事長!)にもぜひとも北海道知事選に出ていただきたいです.
ええとスパムフィルタに引っかかっているのに気付くのが遅れました。>各氏
>Gryphonさん・@sasakitoshinao経由さん
もちろんこれは朝鮮日報報道なので、姜尚中氏自身はもう少し丁寧な(より正しい)表現をしていた可能性もありますし、なにぶん講演ですから口が滑ることもある程度はやむを得ないだろうと思います。だから善解を試みることはあり得べしと思いますが、「欧州や米国の」評価や「世界全体での販売台数」にしてしまうと、なんでそれを日本社会の韓国観の文脈で言及するかというのがかなり謎になります(「かつては日本の市場だったのに」という言い方ならあり得るかな)。
@sasakitoshinao経由さんの擁護はさらに無理筋で、第一に3にせよ6にせよ主要数社に限定するようなことを姜尚中氏は一切言っていませんし、上に挙げた数字でわかる通り「サムスン電子 対 家電専業主要3社」でも「サムスングループ全体 対 電機メーカー主要3社」でも後者の方が大きくなります。計算してみてください。
Gryphonさんご指摘の他の論点との関係について言うと、まあだからこの人はあらゆる「国家」や「ナショナリズム」に対して批判的な態度を貫いているわけではなくて、日本のそれと韓国のそれを非対称的に扱っているわけでしょうね。少なくとも私は、こういう逆転可能性に配慮しない論者のことは尊敬しません。「尊敬すべき左翼」に失礼だよな、と端的に思います。
>アメリカ在住さん
日本の一消費者の感覚で言うと、そもそもヒュンダイの車が日本で販売されていること自体ほとんど知られていないのではないかと思います。だから評価が上がるも下がるもない。過去の販売実績にしても、レンタカーとかタクシーとか《導入コストが低い》点が注目された事例が中心だった印象もあります(そして総保有コストは別問題であったことに後から気付く)。
ただ、私が直接見ている範囲で言うと、途上国での韓国車の存在感というのはかなりあります。欧米でも(数字は承知していませんが)きちんと売れているわけで、当然一定の評価もある。韓国車がここまで評価されないというのは、良かれ悪しかれ日本という(自動車の場合は明確な)ガラパゴス市場の問題だとは言えるでしょう。
その一方、私の体感の話で恐縮ですが、同じ途上国でも韓国車の普及度合いに結構差があるよね、とも思います。つまりたとえばモンゴルやラオスでは少なく、ベトナムでは多く、カンボジアでは目立たない。どういうことかというと、ラオスは貧しいために中古車が中心であり、おそらく韓国車の供給が日本車よりはるかに少ない。また耐久消費財というより生産財の側面が強いため、信頼性が重視される。モンゴルはさらに後者が極端で、冬に原野でエンジンが止まると死にますから、日本車の中古が大変に好まれている。
一方、ベトナムはやや裕福でそれなりの層が新車を購入できる。モンゴルほど自然環境が過酷でもない。となると韓国メーカーの進出も早いしお手頃価格なので良く選好される。ところがカンボジアになると金持ちは金持ちであって、価格よりも安全性とかゴージャス感・社会的ステイタスが選択の基準になってくる。そうなるとドイツ車とか、日本車でもトヨタではなくてレクサスだという話になってくる。
総じて言えば韓国車が強いのは《ほどほどの信頼性、ほどほどの性能、ほどほどの価格》という市場で、もちろんかなりの広さがあるからその範囲では競争に勝っているしご商売もうまく行っているけど、上にも下にも広がりはありませんという感じでしょうか。これは(日本を除く)先進国でも同じ傾向があるんじゃないかなあ。
まああくまで以上は私の個人的な印象をもとにした議論に過ぎませんが、どうも一般的に韓国企業のご商売にはそういう傾向があるよね、マスでは強いけどニッチは全部落としてるでしょうという気はします。で、マス市場の後ろからは中国が追っかけてくると。
姜教授講演のソースハケーン。FTの記事です。
South Korea is no longer the underdog
By David Pilling
http://www.ft.com/cms/s/0/229a921e-217c-11df-830e-00144feab49a.html?nclick_check=1
The near-hysteria back home surrounding her efforts to win an Olympic gold is all the more intense because her closest rival, Mao Asada, is from Japan, the old colonial enemy. In a nation used to seeing itself as an underdog, overshadowed by neighbouring China and Japan and all-but ignored by the rest of the world, sporting victory in an international arena takes on a supercharged significance.
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「今、日本ではキム・ヨナ・シンドロームがものすごい。日本は韓国に追い越されるのではないかという話も盛んに出ているほどだ」
Samsung, not long ago considered a poor-man’s Sony, overhauled Hewlett-Packard last year to become the world’s biggest technology company by sales. This year, it should make more money than the top 15 Japanese electronics groups combined.
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「日本の家電メーカーすべてを合わせた売り上げよりも、サムスン電子の売り上げの方が高く
Meanwhile, carmaker Hyundai has warmed its corporate hands on Detroit’s bonfire. Now the world’s fastest-growing auto-manufacturer, it has increased US market share from 3.7 per cent to 4.4 per cent in just 12 months. Toyota’s problems will only add to its momentum: it is one of the companies offering a $1,000 discount for a Toyota trade-in.
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韓国製自動車に対する評価も急速によくなっていることから、危機感が高まっている」
舌足らずで不正確な部分もありますが、口頭発表のさらに抄訳記事なんで。
記事タイトル「韓国に追い越されるかも…日本で危機感増大」。韓国に追い越されるのは日本の輸出産業で危機感を抱いているのはその関係者という意味では。日本市場の数値で姜教授の講演を検証しても仕方ないような。
エジプトはヒュンダイが結構存在感がありました。手ごろな値段で新車が買えるのが魅力みたいですね。代理店の広告攻勢も結構盛んだった感じ。もっとも日本車の中古と現代の新車の間には未だ超えられない壁が存在するとタクシーの運転手はいうわけですが、きっと韓国人観光客には正反対のことをいうに違いない。
ここ数日ばたばたしてたので落ち着いて茶を喫する余裕がないが、お彼岸までにはなんとかしたいなあ。こちらはきょうは大分冷えまする。大屋氏にもどうぞご自愛を。
>バグってハニーさん
ありがとうございます。家電の方についてはサムスンも日本企業も連結の数字で比較しましたから、世界全体の売上高の話だと思いますよ。まあ日本市場でサムスン電子と日本の家電メーカーの売上を比較しても勝負以前の問題ですし(これにはもちろん「ガラパゴス!」と叫んでもいいわけですが)。
自動車については、おっしゃる通り、世界市場ないし欧米を念頭に比較した可能性はありますね。その場合は良くなっているとも思うし、そのことに日本の特に輸出産業関係者が危機感を覚えている可能性は十分あると思います。ただ、上でも書きましたが、それは日本全体の雰囲気とは若干ずれた話なので、そこを飛ばしているとすれば不用意だとは思います。