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運賃の意味するところについて

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「割高運賃で3000万円ムダ 外務省の在外職員公費旅行」(asahi.com)というニュースがあって、こりゃひでえなという思いが両方である。もちろん記事を読む限り「これは擁護できん無駄やな」と思うところもあるが(たとえばPEX運賃を請求しながら格安運賃で旅行していた事例)、割引運賃が使えたはずだという指摘にはあんたそれ意味わかって言ってるのかと思う。

そもそも割引運賃と言ったって何の理由もなく安くしてくれたりはしないわけで、何かを諦める代償に値引きしましょうと、そういう約束に(基本的には)なっているわけである。知っている人も多いだろうが、航空券の場合は普通運賃だとどの会社の・いつの便でも予約できるし、経路変更を含めた予約の変更もできるというのが基本になっている。割引というのはこの自由を手放して条件を固定していくものなので、まあだいたい航空会社変更不可とかルート変更不可とか日程変更不可のような形で、安くなっていくと同時に自由が失われていくわけである。

でまあ、つい最近のカンボジア出張の際に書いたことではあるが、おそらく上記の指摘を受けてのことだろう、昨年は航空会社変更可のチケットだったものが今年は変更不可になっていた。ところでこの出張というのは昨年バンコク国際空港閉鎖の直撃を受けたやつで、まさにプノンペンからの帰国予定日に同空港が閉鎖され、バンコクをハブとして運行しているタイ国際航空便はほぼ全面停止という状態になった。たしか少なくともバンコクでは2〜3週間その状態が続いたはずである。昨年は自由度の高いチケットだったので急遽アシアナ航空のソウル経由便に振り替えて数時間遅れで帰国することができたが(と言っても頑張ったのは(記事にも名前が出てくる)国際協力センターの皆さんであって私はそのあいだも名大のセンターで講義とかしていたわけであるが)、今年だったらどうなったことか。「そういう事情だったら航空会社の方で何か配慮してくれるんじゃないの?」とか思った人は完全に日本的サービス水準に慣らされてしまっているわけで、そんなもんプノンペン国際空港のカウンターにはタイ国際航空のスタッフなんか誰一人いませんでしたよ。「文句言われないようにさっさと逃げたに決まってんじゃん」とは同行の先生のお話。バンコクでは日系・米系航空会社のチケットを持っていれば比較的早くに軍用空港から運行された臨時便に乗れたみたいだけど、ねえ。

さて、まあそれで予定の日程で移動できなかったとするとさまざまに副次的な問題が発生するわけであって、たとえば夏学期の私の帰国が1週間遅れると最大7コマの補講が発生する(私より上の年代くらいで卒業した人には想像できない事態かもしれないが、最近の大学では授業回数が減ると学生から苦情が出たりするので補講による補填が厳に命じられているのである)。そんなもん週末2回くらい丸々潰さないといかんので私も大激怒なら学生にも迷惑であろう。もちろんその分の被害についてはしかるべき財産的補償を請求すると、そういうことにならざるを得ない。さらに問題なのは現地着が遅れた場合で、いや今回も現地側への調査もコミで出張したのだが、先方政府の副大臣・局長級とのアポイントメントがばりばり入っており(いや本気でH.E.(「閣下」)付きの人たちなのでええっとこういうとき英語の敬称はどう使うんだっけとかアメリカなどを相手にしていると使わない部分の知識を発掘する必要があったわけだが)、「飛行機が遅れましたんでアポずらしてください」とか簡単に言えるわけがない。私クラスの人間でこうなんだから世の中もっとずらせない相手とのずらせない約束なんかいくらでもあるだろうと、そう思うわけである。

いやもちろんそうは言っても、たとえば天候不順のときはどの会社のどのクラスの航空券を持っていても飛行機は飛ばないわけである。しかしこれもはっきりと言えばそういうときの対応もカネの出し方で違ってくるわけであって、冬のモンゴルで帰国便を待っていたら来るはずの飛行機が降りられなくて「また明日」ということがあったときに(なおチェックイン・出国後)、エコノミーの旅客は本気で何もなしに追い払われていたのだが、我々はたまたまビジネスクラスだったので交渉の末にホテルの提供と代替便の手配を勝ち取ったということがあった(なお大韓航空)。結局高い運賃というのはそのように、人為的問題の影響を受けないで済んだり自然現象の影響を最小化できるとかいうことの代償なのである。もちろん幸いにして何も問題が起きなかったときには安い運賃の場合と結果的に変わらないように思えるわけだが、だから無駄だと言うんなら警察も消防も廃止してしまえばよい。各社の飛行機が頻繁かつ順調に飛んでいるし、もしトラブルが起きれば航空会社が誠実に対応してくれますなどというのが世界のどの程度の範囲で通じる話なのか、ちったあ考えろと言いたいところなのである。

なお国内便についても「早割」なんかを使えば安いという指摘があったそうで、これもまあ半分はそうだと思うのだが、たとえば私が明日使う予定の「特割1」なんかは(えらいこと安いのだが)予約変更は一切できないし乗り遅れると相当の手数料が飛んでいくというチケットである。発展途上国からの研修生とかにそういうチケットを使わせるとどういうことになるか、ちょっとウチなりどこなり留学生の相手を結構している大学のオフィスで一月ばかりも働いてみると良いよ。(最近たまたま読んだところの)牧原憲夫『民権と憲法:シリーズ日本近現代史(2)』(岩波新書新赤版・2006)が縷々指摘している通り近代とは身体の規格化に他ならないのであって、規格化できてないから途上国なんだよ。床を張ってから壁を塗り、光ファイバーに終端機器を取り付けてからそれを置くための棚を付けはじめる人たち(実話)を相手にするご商売に万事予定の通りコトが済むのが当然の社会に住んでる人の「常識」を押しつけられても困るんだよなと、そう思ったことである。

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Comment(3)

tree さんのコメント (2009年11月 3日 22:52):

「健康管理休暇制度」って在外職員なら誰でも使えるわけではないし、何のために存在しているのか?という点を説明していないとアンフェアですよねえ(実際の運用がどうなっているかは別として)。

この記事を新聞で読んだ時、なんというか、マスコミに典型的な記事(特定の方向に誘導)という感じがプンプンしました。でもまあ、「利ザヤを稼いでけしからん!」と思ったのも事実ではありますが...

匿名希望@常連気取り さんのコメント (2009年11月 4日 01:34):

ええ~、口をすっぱくしていい続け、
たぶんおおや先生にも申し上げたような気がしますが、
少なくとも近年のこの手の記事・報道は
わかっててやってるのではなく、
本当にわかってないままやってるんですな。
別項の質問主意書の件然りですが。

一年二年でこうなったのではなく、
十年二十年かけて(いやもっとか)ここまで行き着いたわけで、
おおや先生が何をおっしゃろうと、
いまさら事態が改善されるとは思えません。

もはや末期状態です。

おおや さんのコメント (2009年11月24日 17:09):

>treeさん
本当にねえ、途上国での勤務・生活がどれだけ肉体的・精神的に過酷なことかとか、朝日の人なら松本仁一先生に聞いてみればいいのに。実際の運用がどうなっているかは別として。
まあ明確な利ザヤ稼ぎなんかはやっぱり許容できない事例なのでそういうことをできなくすること自体が問題だとは思わないのですが、これ書いた直後に、今度はタクシン元首相関係のカンボジア・タイ間外交摩擦が原因でまたバンコク・プノンペン便が飛ばなくなりまして、折から名大主催の国際シンポジウムのために招待していたカンボジアからのゲストの帰国経路変更に事務担当者がかけずり回るハメになったわけです。
もう日本人は本当にリスクをナメ過ぎなので、折良く民主党政権になったことでもあるしみんなでそのへんに関する感覚を取り戻すと良いのではないかと思ったことですよ(投げやり)。

>匿名希望さん
いやまあおっしゃる通りであっていまさら私程度のものが何かしたところでマスメディアのなかのひとの態度とか知識水準とかが変わるとは思わないのですが、しかしまあ潰れるなら潰れた先のことを考えておかねばなるまいよと何か思い始めるあたりが(嶋津前理事長曰くの)無根拠な責任感というものかもしれんと思うわけですよ。まあやっぱり明日世界が滅びるとしてもリンゴの木を植えますね、私は。

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