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ステキ地方債(2)
閑話休題。従って、「市民税10%削減」という種の提言が財政支出の削減によらずに実現される場合(支出削減が、行政事務の効率化によるものであれ給付水準の引き下げによるものであれ、十分に実現するのであればそれは財源負担者との関係においては問題を生じさせないので、以下の議論は当てはまらない)、そのような政策がコンフリクトを起こすのは以下の二者に対してである。
第一に、「暗黙の保証人」である政府に対して。通常の民間事業者にたとえて言えば、債務者たる企業が勝手にその主力サービスを無償化したり価格の引き下げをやったとするならば、その企業に対する連帯保証人の観点からは債務不履行が発生する危険性が高くなるわけであるから、苦情を申し立てることになるだろう。逆にこの場合、仮に連帯保証人に十分な信用があるのであれば、貸し手の側からは別に差し支えないことになるだろう(連帯保証人から回収すればよい)。
この問題があるために、地方財政法(昭和23年法律109号)は地方自治体の公債発行に対して都道府県知事ないし総務大臣との協議、一定以上財政が悪化している場合には知事ないし大臣の許可が必要なことを定めている(5条の3・5条の4)。地方自治体が、最終的には国家保証によって清算されることを期待して野放図な財政運営を行うことを抑制するための制度である。もちろん前述の通り自治体の効率化・給付削減によって支出減を実現するので債務額は増大しない(新たな公債発行の必要はない)とか、あるいは効率化を実行するための一時的な投資を行うために債務残高が増大する(従って最終的には政府にとってのリスクが低減されることが期待できる)場合にはあえて反対する必要はないであろう。だが仮にそうではなく、一方的に連帯保証人にとってのリスクを増大させるような計画であったならば、それに反対して許可を与えないことが本来は期待されているとも言える。
もちろん上記の通り、政府にとって反対すべき場面であるかどうかはそれによってリスクが増大するかという、かなり具体的な計画に基づいて判断しなくてはならない要素に依存している。従って、名古屋市から公債発行への同意を求められたらどうするかと質問された鳩山総務大臣が「条件次第である」という旨の返答をしたのは当然ということになろう(正確には「十分に話し合って、減税の内容とか、今後の市財政の見通し等を十分に踏まえて、私が適切に判断しなくてはならないと思いまして、今、いいとか悪いとか言うことではない」。総務省「鳩山総務大臣閣議後記者会見の概要」(平成21年5月1日))。
だが問題は、すでに述べたように自治体の借金には「暗黙の政府保証」が付いており、そのために大臣や主張の政治的立場云々とは関係なく本来的に利害対立が発生し得るのだという事実をどの程度の国民が(マスメディアを含めて)理解しているのか、理解していない場合にリスク管理の観点から当然の反対が政治的対立に由来するものだと誤って理解されたり報道されたりする危険はないかということである。仮に、政権与党と首長の党派的対立を背景として、国家・自治体間の紛争がそのような文脈に誤読されることを予想し、それに基づいて生じ得る社会的批判を避ける必要から総務大臣は許可を与えないという選択肢を取りにくいであろうとステキ市長氏(ないしその周辺)が読んでいるのであれば、この種の問題に関する我が国マスメディアの報道水準を念頭に置く限り、なかなかその読みは鋭いかもしれないと思うところもある。さらに続く(6/13公開)。
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