やっちゃった。

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いやMSN産経ニュースで名古屋市長選関係のニュース(【名古屋あのね話】元経産エリート官僚が市長選に出馬表明)を読んでいたわけですが、自公両党が推薦する見込みの候補者について、「若くして山形県警本部長に抜擢(ばってき)され、米スタンフォード大に留学。」と書いてある。ご本人のウェブサイトのプロフィール欄でも確認しましたが、これは「山形県警警務部長」の間違いです。念のために魚拓

これはわりとあり得ないレベルの間違いで、「本部長」というのはその都道府県の警察機構のトップです。東京都で言えば警視総監という、警察機構全体のナンバー2に相当する(ややこしいので公安委員は抜きで)。もちろん各都道府県の規模によって重みも違うし、東京都・北海道以外の場合は各県警の上に管区警察局があるので役割もその分限定されてくるわけだが、それでも警察官僚のキャリアパスで言うと後寄りで出てくるポストになる。山形の場合、本部長の階級は「警視長」とされていて、ここまで昇任するのはキャリア組官僚の場合でも40歳過ぎくらいの話。確認したら山形赴任は1985年から87年で、だいたい30歳から32歳。これで「本部長」はいくらなんでもないだろうという感覚がないわけですな、この記事を書いた人には。

記事だけから見ても山形勤務のあと留学に行ったと書いてあって、普通これはかなり早い時点で済ませる段階なのでかなりの違和感がある。警務部長なら多分「警視正」ポストで、キャリアなら30過ぎで昇任するから他省庁からなら少し若くても行けるのかな......とか、こういうのは警察や行政組織の動きを見ていれば何となく身につく感覚で、サツ回りからはじめる新聞記者の人は当然もっていないとおかしいと思うのだが、まあちゃんと教育できていないのでしょう、産経新聞。

ところでそのあとの部分に関しても、いや私は通産省・経産省の中のことになど詳しくないのでこれはまったくの推測なのですが、中部経済産業局長、つまり地方支分部局の長で退官というのはわりと普通のキャリアパスではないかという気がしており、というのは第一にこの方、公表されているプロフィールを見る限り大臣官房のポストを経ていない。つまり(官僚の内部で比較した場合に)組織の運営側に立ってジェネラリスト的に省庁全体を見ていく立場ではなく、特定分野のスペシャリストだったと考えられるところ、局長→次官に上っていくのは基本的に前者であって後者は課長級〜部長級で退官かなという相場観が私の中にはあるわけです。この方の場合、通商政策局米州課長というのも局の筆頭(その局の「官房」的役回り)ではなく、昇進して部長級になっても「貿易管理部長」で審議官としてでさえ官房に入っていない。やはりなんとなく「打ち止め」感が漂うわけですな。

これ、実例として防衛庁キャリアですが太田述正氏と比較すると面白いかもしれません(前に「週刊オブイェクト」のコメント欄で少し書いたことがありますが)。要するに、出先の長には局長(指定職)に上がれないキャリアの引退への花道という色彩もあるわけです(いや全員がそうだというわけではないですが)。

第二はそのあとのキャリアであって、「日本貿易振興機構」てえのは経産省の外郭団体というか海外情報網というか進出拠点というかであり、次が「日本鉄鋼連盟の常務理事」てのは業界団体ですから典型的な天下りです本当にありがとうございました。いや別に私はそれをくさそうというのではなくて(私自身は「天下り」システムには一定の価値や意義があるので代償措置もなく廃止するのとか良くないという立場であるし)、ここで言いたいのは勝手に辞める人間には普通「天下り」ルート用意しないでしょ?ということ。役所の方で「そろそろ後進に道を譲ってください」という場合にはもちろん撤退路を用意しないとなかなか同意してもらえないわけですが、自分でキャリア形成のために辞めるのはまさに本人の勝手。もちろんそれは本人の権利だから妨害はしない(だろう多分)けど、役所の側の長期的な人事計画に狂いも出てくるわけで、にもかかわらず手厚い待遇を保障するいわれもないわけです。

だから、まあこれも再々引き合いに出して恐縮ですが太田述正氏の場合、退官後に選挙に出た時点でおそらく役所の側からのケアは打ち切られている。だからそのあとは「独立自尊」の人生を歩んでおられるわけです。逆にこの方が上記のように順調な天下りパスをたどっているとすれば、それは退官が「内紛事件などに嫌気がさした」からではなく役所側のルーティンに沿ったものだったという推測を強めるわけで、このあたりだから、じゃあそもそも本当に「同期の出世頭」なのかとか、ご本人の宣伝文句はいいけれどもその内実や真実性について突っ込むべきところなのですね。ところが当該産経記者は、最初から警務部長と本部長を間違えるあたりに露出してしまっている通りそのあたりの相場観がつかめていないので、全部スルーしてしまう。さらに問題なのはこれがやはりノーチェックで出てしまう産経新聞の体制だ、と思うところですが。

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元官僚が順調に出世したのかコースを外れたのか読み取ることが詳しい人は可能なのですね。

佐々淳行氏も華やかに見えて、最終的には出世コースをある時点で外れた(と少なくとも本人は認識している)らしいのですが、詳しい人はここから読み取れるのでしょうか。

http://www.sassaoffice.com/magazine/pg42.html

正直門外漢にはわかりませんけど。

>Gryphonさん
正直私などヲチャとしてはごく低レベルなのであまり自信を持って言うのではないですが、もともと「現場の第一線で活躍している」というのは《組織運営の裏方をやっていない》ことと同義であるところ、三重県警本部長時代の警備で問題が発生したこともあって主軸からは外されたのかなという印象を持ちます(ご本人もどこかでそういう趣旨のことを書かれていたような記憶があるのですが)。そうでなければ戻ったあと防衛庁ではなく警察庁内のしかるべきポストから局長でしょう、という。
ただ、何となく警察の場合は人事・予算という運営の中心を経ない・現場一線中心の方も偉くなっている印象があるのと、「主軸から外された」といっても防衛庁に移ってからは局長→官房長を経て外局の長である防衛施設庁長官(官僚No.2)で上がりですから出世するコースに乗っているわけで、ご本人の能力的な問題というよりは組織側の事情(他に有力候補者が多数いた)の方がメインなのかなとは思います。

いやしかし、おっしゃるような記者の相場観は能力の問題としてある意味しかたないにしても、大屋先生がPCの前に座っているだけで(ですよね?)済ませられた調査すらできてないのはどうなんだと、業種こそ違えど校閲としては思うわけです。本人のウェブサイトと照合すれば気づけるのに。そのあたりが相対的に弱小新聞社であり、校正にリソースを割きにくいのであろう産経の悲しさなのかもしれませんが。朝日あたりだと、まあ毀誉褒貶あれどこの手のミスは少ない気がしますし。

それ以前の問題として、「名古屋あのね話」は紙面には載らないウェブ企画のようなので、「そもそも校閲通してない」というすてきな事情があったりするかもなあと考えて不安な気分を抱いたりもしたり。新聞社といえどもネット関係では誤字だらけというのはつとに感じていたところではありますが、つい先日も某紙のウェブニュースで「中川財務省」という極私的組織成立の瞬間を目の当たりにしてorzとなったものです。

歴代次官の経歴を見ると、経産省の場合は次官までのキャリアパスが割とバラエティ豊かなようですね。時代によって花形部署が変わりやすいが故でしょうか。ただ、wikiで細川氏の経歴を見る限りずっと国際畑なので、こういうケースはご指摘のとおり次官は難しいでしょうね。まあ通商政策局米州課長まではセーフでも、経済産業研究所上席研究員の時点で「打ち止め」と言って良いのではないかと。

佐々氏の場合、警備畑なので警察庁長官まで上がれる可能性もあったのでしょうが、やはり三重での失点の影響が大きかったのではないかと思われます。むしろ、失点があったにもかかわらず防衛施設庁長官というのは、それまでの実績を斟酌した厚遇と言うべきのような気がします。

ありがとうございます。
佐々氏の自虐ネタですが

「乱世のときに、現場で『いてまえ!』ってやっている人間は、平時になると『(閑職に)行ってまえ!!』と飛ばされるんだよ」

という発言を以前しておりました。

>なかの人 さん
正確にはタシケントのホテルのベッドの上でPCの前に寝ころんで調べました(笑)。いや宿泊先のタシケント・パレスホテルは「ロビーだと無線LANが無料、部屋からは有線で有料」だったのですが、部屋が2Fだったのでベッドの特定の位置ならロビーからの電波がつかめることを発見したのです。まったくの余談ですが。
《ウェブ企画なので校閲通してない可能性》については、思い当たりませんでしたがその通りかもしれません。なんかこう、ネット時代だから懸命に速報性を追求して他メディアに対抗するのだ……とか思っているのかもしれませんが、早いだけなら直接発表だのネットの噂話だのの方が早く、マス対象でもテレビにはかなわない。新聞の(古典的)価値は信頼性なんだからちゃんとしてくださいよと言いたいところなのです。

>三国さん
ご教示ありがとうございます。米州課長のあとに官房に入っていれば違ったのかもしれませんが、という感じを個人的には持ちました。佐々氏については私もそう思います。ただご本人としては《マイナスを差し引いてもプラスの量なら他の候補者を凌駕していた》という思いがおありなのかもしれません。この点については、上の方に行けば行くほどミス一つで「失格」になりかねない世界なので原点主義になるのも仕方ないのでは……という気も、最近の私はしています。

>Gryphonさん
わはは。しかしそれは(上記の通り)組織としてはある種健全なことでもあるしなと、もちろん佐々氏とは桁違いに小さな世界ですが最近の使われ方がめっきり「飛び道具」であるところの私としては思うわけです。しかしその、さっさと『(閑職に)行ってまえ!!』してくれれば私は自分の原稿が書けるんだが。

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