こらあかん

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で、この間に「こらあかん」と思ったものの話。記憶は曖昧な部分もあり。

ひとつめは朝日新聞の社説で、まあ「ねじれ国会」でさまざまな停滞が生じていることの指摘は妥当として、結論が「だから早く総選挙を」ってだからそれで自民党(+公明党)の議席数が1/2以上2/3未満になったときになにがどう解決されるのか言ってみろ

ちなみに「自民党+公明党が1/2未満」&「民主党単独では1/2未満」という、これまたそれなりにありそうな数字の場合も民主党中心に組閣するが国民新党・社民党・共産党あたりの意見がことあるごとに食い違う超レームダック政権自公で無理矢理少数与党というこれまたどうにもならない選択肢になるわけだ。で、これらの問題を回避するためには政界再編が必要だろうが、その有力手段としての大連立を潰したのが民主党左派と。

これは先に師匠が『ジュリスト』に書いた原稿についても言えることで、まあご本人には直接申し上げましたが、妥協というのは両者が一定の価値観を共有している場合にしかできないし、慣行を慣行として守ろうとしない相手とのあいだを規律する新たな慣行を作ろうとするのは無茶でしょ、と。その意味で私としてはすでにRATIOで言ったこと以上に新しい要素はないんだけど。

念のために言っておくと、この状況を作った責任は多分に自民党にあって、つまり参院への配慮で国会同意人事の衆院優越規定を削りまくったのが元凶であることは言うまでもない。結果的に得られた《強すぎる権限》を乱用すればシステム全体の崩壊をもたらすことになる、ということを自覚していないのは野党の側だが、そういう人間が権力を握るかもしれないよ? ということへの想像力を欠いていたのは与党の責任。

もう一つ、私が問題にしているのは決定が行えないことなので、衆院優越規定を導入・復活するという選択肢だけでなく参院優越にするという選択肢もある。法案・予算などの優先権によって衆院の多数派が政権運営を行えるようにするが、人事面をテコに参院にチェック機能を持たせるという構造になるわけだ。参院(あるいは一般的に上院)に求められるのが熟慮機能・決定を遅らせる機能だとすればそのような設計にも一理あると思うわけだが、これとてやはり参院の多数派が党利党略のためにはその権力を用いないという保証がない限り(たとえば最高裁判事任命に関するアメリカ連邦上院による審査のように「政治的な立場の違いは任命に反対する理由にならない」という慣行が確立しない限り)混乱するのは同じことやな、とも思うわけではある。

***

ふたつめ。NHKのニュースを見ていたら例の離婚後300日問題について、両親の離婚成立後300日以内に生まれた子は両親のあいだの子と見なされるので出生届が提出できないなどとまだ言っていてどこからツッコんでいいかわからない。

第一にこの規定は「みなす」のではなく「推定する」のであって、みなされるものは覆しようがないが推定されるものは反証できるのだ、というのは法学部なら2年か3年までには叩き込まれる区別である。NHKはその程度のことも知らない人間に原稿書かせたのか。

第二に出生届は提出できないわけではなく、(旧)両親のあいだの子としてしか提出できないのである。もちろんそれは実態を反映していないので問題ではあるし、たとえばDVが原因で離婚した場合にその当事者の名前を・たとえ推定を覆すまでのあいだのことであるとしても・子の戸籍に載せたくはないという感情は理解できる。しかし《子供には何の罪もないので不利益を負わせるべきでない》という理屈で300日規定に反対するのなら、当事者自身がそれに反する行動を取っていてはいかんだろう。戸籍上の記載に由来する感情的な不快とは対照的に、戸籍に登載されなければ現実の生活に不利益が生じるわけである。子の福祉のためにやむを得ず実態に反する出生届を出しましたという当事者にしか、上記のような主張をする資格はないのではないか。

私自身としては、問題があるのは300日規定自体というよりもそれが実態に反する場合の救済方法にあり、嫡出否認の訴にせよ調停にせよ相手方(前夫)の協力が得られないと使えないというのは確かに問題であって改善した方がいいだろうと思う。戸籍の記載についても、このような場合については戸籍が最初から間違っていたのであるから完全に新製するとか、なんであれ異動の経過はどこかに残す必要があるのだということであれば性同一性障害者の場合と同様に法定事由による新製を行なった旨の記載だけが残る新戸籍を作ればいいのではないかと思っている。

だが本質的な問題は結局、結婚・離婚に関する法的手続の意味の軽さにあるのかな、とも思う。もともと、好き合った当事者が同居してすることをして子供を作るといった類のことは法律上の婚姻の有無と無関係に可能であり、婚姻は一定の要件を満たし・手続を踏んだカップルに特別の権利・保証を与えるための制度に他ならない(から主権者命令説ではうまく説明できないんじゃないかと、たとえばH.L.A.ハートは考えたわけだ)。だが現代では、別に婚姻していなくて名字の違う二人がホテルで同宿したところで誰が何を言うわけでもないし、社会保障に関しても内縁で十分受けられる。法律上の婚姻が成立していないことでどれだけ実際上の不利益があるかと考えるに、子供ができない限りないんじゃないかという気がするわけだ。

まあだから「できちゃった婚」が多発するわけで、それまでは同棲だったり付き合っていたりもっと適当な関係だったりするものが子供の存在を契機に法的にきちんとしようと思うようになる。逆に言うと300日規定問題もその結果、法律上誰か別の人と結婚したままの状態を放置していてもたいして問題がないのが、次の人との子供ができてはじめて焦り出すと、つまりは「できちゃった離婚」問題なんじゃないかとは思うところである。

仮にそうだとすれば、まあこれ300日規定廃止したらさらにぐだぐだになるよねえ。とにかく子の出生前日までに離婚が成立していたらいいとか、それでも「間に合わなかったんです」とかいう親御さんがきっといるのであろうからまあもう子の両親と称する人たちが同意に基づいて出生届を出せばそれでいいのだとかいう方法にすることになるだろうが、そうなると戸籍上どう書かれていようがそれに相当する事実上の関係があるのかどうか全然わからなくなってくるわけでもう戸籍なくしちゃえば?という気はしてくる。念のために言うと私自身はそれも一つの選択肢かなと思っており、住民登録以外に公的な身分記録が欲しいとしても個人単位戸籍でいいだろうし、婚姻制度も別に不要なのではないか(正確には、婚姻契約は不純なので共同体創設機能と嫡出推定機能に分離して適切な登録制度を設ければよい)と考えているから別に構わない。単に、いま300日規定をめぐって苦情を申し立てている人たちがそれだけのことを考えているのかどうかが気になっただけのことである。

***

みっつめは小ネタ。週刊アスキーで連載されていた岩戸佐智夫「著作権という魔物」について、そこで紹介された某氏の発言について以前故障を申し立てたことがあったが、ただそれがご本人の問題なのか、それを記録し文章の形にした岩戸氏の問題なのかわからんなとは書いておいた。

で、その連載がまとまってアスキー新書から刊行されたのだが、その広告で「知的高裁」という語が繰り返し使われている。なんだよそれ......orz いやそりゃ正式名称は「知的財産高等裁判所」(知的財産高等裁判所設置法・平成16年法律119号)であってどう略そうと構わないといえば構わないが「知財高裁」だろう常識的に考えて(なお参考までにgoogle.co.jpでは"知的高裁"229件、"知財高裁"76500件)。

というわけで、まあこれは連載を読んでいたときからの感想ではあるのだが、まとめた方の岩戸氏の能力識見に相応の不安があるというのが一応の結論である。結構面白い人に話を聞いて面白い内容を引き出しているだけにもったいないというか何というか。

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朝日の社説、本当にひどいですね。常々思うんですが、解散総選挙で民意を問えと主張される方々(参議院議員を含む)は、総選挙で自民・公明が勝ったら(過半数をとったら)、衆議院の決定には従う、というのでしょうか?総選挙で野党が過半数を取れずに、ねじれが解消できなかったら、参議院を解散(は、できないので、議員総辞職)して、参議院議員選挙をやり直して、ねじれを解消させるのでしょうか?
 また、問責決議を声高に叫ぶ方々は、憲法が、法的効果を伴う信任決議・不信任決議を衆議院にのみ認めている事の意味を、どのように考えるのでしょうか?
 また、審議時間が足りないから採決には同意しないと言って、乱闘国会を演出した方々が、「後期」老人健康保険制度に問題があるといって、廃止法案を。6日までに参議院で可決する、と言っているのは、どういうことなのでしょうか(何故、若者は怒らないのでしょうか?朝日に、老人の方が、高齢化社会が来るのは随分前から分かっていたのに、きちんと対応してこなかった政府の責任は重い、という趣旨の投書をされていましたが、老人の方々の当事者意識の欠如の甚だしさに、あきれてしまいました)。

まあ、参議院は廃止、これが一番だと思います。

盛り上がってるところ相すみませんが、どうやって trackback を打てばいいのか、三遍見たけどよくわかんなかった orz

>TKさん
ども。まあこのあたり私は民主党のやっていることを何一つ評価しないと言っていいわけですし、朝日新聞がもっともひどいものの他のマスメディアも似たり寄ったりかなと思います。後期高齢者医療制度と問責決議の関係については町村官房長官がかなり明確に批判しており、その発言を忠実に紹介した——というか官房長官会見の内容を常に紹介しているMSN産経ニュースがもっともまともだと思いますが、考えてみれば編集や独自の見解を交えないことで評価されるマスメディアというのも皮肉なものではありますね。

>鰤さん
そんなことWeb1.0の私に聞かれても。なんかhatenaからはうまく飛んでこないみたいなんですけどね。
あとその、なんか鰤さんのコメントがもれなくスパムフィルタに引っかかって私が気付いて復活させるまでのあいだ表示されないようになっています。なんでだろうと思うのですが気付いたら復活させてますのでとりあえずそういうことでひとつ。

いや、ふつうどこかに表示されている(そして昔はここでも表示されていたようにも思うのだが)trackback URL がどこを見てもないのよ、なにこれ?

というだけ話なのですが(それともエントリ本体のURLと共通なのでしょうか、はてなはそうなんだよね/そういやはてなもその意味では表示されてないな)。

初回だったらたんにあきらめればいいのかもしれませんが、昔は簡単に打てていたのでなんでこうなるのと諦めが付かないのです。しかし Spam ログあさりをしてもらうのはちょと申し訳ないな。

……何が条件なんだろうね。というわけで設定を今日は少しいじってみました。どうだろ。

みつけた と思う。このエントリーのTB URL はhttp://www.axis-cafe.net/cgi-bin/mt-tb.cgi/520
になるはずだ。と思う。

あとで試す。

頼むからもっと顕わに表示してくれ。それはともかくエントリのシリアルナンバーが 523 で TB のほうは 520 ってどういうことなんだ。わけわからん。

それはそうと、センテンスごとに 構文が使われているのを見て知恵熱が出た。どういうご利益があるんだろう。。

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