前の記事: 趣味と実益 << | >> 次の記事: ネットイナゴ?(2・完)
ネットイナゴ?(1)
CD-Rには捨印が捺せないということを発見する orz (挨拶)。いやまあそもそも捨印という監修自体がけしからんといわれればそうなのであるし、補正も郵送で受けてもらえるようになったからいいんだけどね、別に。
「ネットイナゴ」という言葉を最近諸方面で見るようになり、つまり「炎上」現象を引き起こしている一群の人々(というのがいるとして)を形容する言葉らしく、まあ「ネットウヨ」とかよりは実態に即しているかなあと思わなくはないがやはりちょっと納得がいかないという気が最近している。
第一は「イナゴ」でいいのかしらという話であって、だってイナゴはああいう生き方をする(しかない)生き物なのであってそこには善意も悪意もないわけであるが「炎上」の場合はそうじゃないだろうと思うわけである。このあたりは前に学会報告で仮説展開したわけだが「炎上」の主役は善意の人々であって、だから止まんなくて問題になるわけではある。で、おイタ自慢をしたりあほうなことを人前で言った人が善意の人々から批判されるというのはこれ自体悪いことでも何でもなく、もちろんシロウトさんがいきなり批判ラッシュを受ければ驚くだろうが、人前で発言するということが秘める危険性については事前に自覚しておくべきだったというだけのことだと、私としては言いたい。無限の他者に直面する覚悟がないのならブログなんか使わないでmixiで日記書いてろ、と思っているとそこでも「友人まで」とか「友人の友人まで」とかの制限をかけ忘れて炎上するわけである。どっとはらい。
というわけで「炎上」現象自体については集中的な権力の存在しないネットワークにおける自律的な秩序維持の手段として肯定し得る部分があるというのが私の意見だが、しかし当然ながら問題事例というのもあるのであって、それは大多数の善意の人々を騒動自体を楽しみにしたり何らかの意図によって発言者にダメージを与えることを目的とする悪意の人々が煽り立てる場合であり、その手段としては虚偽の事実の書き込みや相手の発言に対する故意の曲解が挙げられるだろう。この善意と悪意のコンビネーションが問題事例である「炎上」のメカニズムだとすれば、前述の通り天然自然で善悪なきイナゴをもって形容することは不適切かな、という気がするわけである。
第二は「ネット」の問題なのかなあという点であって、しばらく前に原稿書きの都合でいわゆる「隣人訴訟」の事例を調べていたわけであるが、あんまり変わらんのではないかという気がした。三重県の新興住宅地で起きた事件で、隣人に預けた(気になった・実際には隣人の子供と一緒に遊んでいたので「大丈夫でしょう」と返事しただけ)子供が子供同士遊んでいるあいだに近くの貯水池で溺れて死んでしまったことに関し、死んだ子供の親が一緒に遊んでいた子供の親に損害賠償を求めて提訴したという事例である。もともと近所付き合いという善意の関係において発生した事故で、明確な事前の契約や同意があるとも思えない状況からすればなんで訴訟の前に和解で話をまとめられなかったのかというのが法律家的には注目点であるわけだが、まあそれはともかく昭和58年の一審判決で損害賠償が一部認容されると原告側家族に対して批判の手紙や電話が殺到したという。で、耐えかねた家族は訴訟の取下げを希望したのだが、そのためには被告の同意が必要であるところ被告はこれを拒んだ。すると今度は被告側に批判の手紙や電話が殺到したのでやはり耐えかねて取下げに同意するに至ったというのである。
で、これと現在の「炎上」現象はどこが違うのかな、と思ったわけだ。大きく違うのはおそらく、当時用いられた手段——手紙や電話——は全部でどのくらい着いたのかが受信者にしかわからない・送信者には「1件」としか認識されないのに対して、現在のブログやmixiの日記のケースではコメントやトラックバックの総量が送っている側からも認識可能であるという点だが、逆に言うとそれくらいなのではないか。もしそうだとすれば、「炎上」現象の背景にある「ネットイナゴ」という特異な人的集団というようなモノイイはそもそもから瓦解するよね、という気がするわけである。つづく。
Trackback(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: ネットイナゴ?(1)
そもそもイナゴは蝗害を引き起こしません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9D%97%E5%AE%B3
>漢語の「蝗」に誤って「いなご」の訓があてられたが、日本で水田に生息し、食用になる分類学上のイナゴ類がこの現象を起こすことはない。
-----
誤訳なんです。本来の蝗はサバクトビバッタの相変異体です。
そもそもネットイナゴでは感じが悪い気がするので、英名locustを使って「ネットローカスト」あたりにすれば用語として普及し易い・・・かなぁ。
後はネットピラニアとか。
イナゴという呼び名にしたのは、日中戦争時に中国側が日本軍を「皇軍」に虫偏をつけもじって「蝗軍」と蔑称した故事を知ってる左翼系の人の発案なんじゃないかと密かに思ってますが、こういうのの検証は掲示板時代から(外部非公開が簡単に可能な)SNS時代に移った昨今だと難しそうです。「プロ市民」の場合2ちゃん一人勝ち時代だったせいで発祥(用法のスライド?)がいつだったのか特定できているようですが(例えばhttp://hp1.cyberstation.ne.jp/negi/DEMO/topic/t044.htm参照)
あとものすごく少ない可能性として歴史改変小説の「蝗身重く横たわる」が発祥な可能性が(zap)
↑妄想逞しくする前にググってください。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CD%A5%C3%A5%C8%A5%A4%A5%CA%A5%B4
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20070616/netinago
>↑妄想逞しくする前にググってください。
いや、ぐぐったんですが、「ネットイナゴ 語源」でぐぐるより「ネットイナゴ」だけでぐぐった方が正解に到達しやすいのはなぜなんでしょう?…って言い訳になりませんねOTL
あとRepulse氏の張った上のリンク先のさらに先の産経新聞(!)記事で蝗軍ネタが既出だし…
「蝗軍」については皆さん、勘違いしていると思います。
http://mltr.free100.tv/faq08d06.html#07234
【質問】
日本軍が大陸で「皇軍」ならぬ「蝗軍」と揶揄されていたのは,行く先々で日本軍が米を食い尽くすから?
【回答】
日本軍を罵倒した言葉として「蝗軍」という言葉が使われていたのは確かですが,別にこれは「日本軍が行く先々で米を食い尽くす」からではありません.
中国では古来より,敵国・敵軍の表記には相手を人間以下の存在と決め付けるためにケモノ偏や口偏,虫偏をつけるのです.
例えば英吉利もアヘン戦争当時は[ロ英][ロ吉][ロ利]と表記されたりしました.
「蝗軍」というのもこれと同様の用法であり,日本軍が行く先々で米を食い尽くそうと逆に米を民衆にばらまこうとそれとは無関係に,どのみち中国に敵対した以上,虫偏をつけられることになったのです.
出張帰りのわたくしです。最近Air Hだと遅すぎて我慢できなくなりつつあるのですが、たぶんコンテンツのサイズの方が増えたせいでしょうな。
>JSFさん・Repulseさん
ご教示ありがとうございます。イナゴは冤罪というのはいいとして、しかしローカストでもピラニアでもやはり善意や悪意はないような気がしますねえ。餌をまけば発生して当然だから「赤潮」というのはちょっと気に入りました。
本来はそのうち悪意の人々だけを「ネットイナゴ」とか呼んだはず、という話もどこかであり、しかしするとかなり誤用が蔓延しているなあという印象はあります。
虫偏の話、あああのひとたちそういうの好きですよねという話ですが、ちょっと文字パレットで確認した程度だと「皇」がつくりの《よくない字》というのは「蝗」くらいしかないというのが原因でしょうか(口偏や獣偏は見当たらない)。中国語の事情なのに知らない日本人が深読みしてしまう、というケースとしては高島俊男先生が「預言」などを挙げておられ、まあつまり同文同種とか言うてもこの程度のことだと、これは少しでも中国語を勉強すればすぐにわかるはずのことですが、思うわけです。はい。
ちなみに出張中に別プロジェクトへの動員が下令されましたのでまたしばらくなにもできません。ノシ