闇金融の繁栄について
1年生向けの講義でgated communityの話になったついでに「格差社会とかワーキングプアとか言いたい人はまず内田百閒を読むように」とか言い切ってしまうわたくし(挨拶)。そうしたらその夜のNHKニュースウォッチ9で闇金融の被害が急増しているという話をやっておりこれが噂のシンクロニシティ。
まあ大略いわゆるグレーゾーン金利撤廃の議論において予想された通りの話であって、過払い金変換要件の厳格化も合わせて要はある顧客から回収できる実質利率が下がったわけだからリスクの高い相手には貸せなくなりましたとサラ金各社が非常にもっともな意思決定を行ない、かといって今まで借金が資金繰りの一環に組み込まれていた人々がすぐにそこから離脱できるわけでもないのでその部分で闇金融が繁栄しましたと、そういうことだろう。実際まあ、生活資金をサラ金がもう貸してくれなくなったのでやむを得ず闇金融に手を出した、という人の話も番組で紹介されていた。
ところでしかし、厳格化前の金利であってもそういう人の家計が長期的に維持可能だとは思えないのであって、当人はがんばっているつもりでも借金返済の収入に占める割合は徐々に上昇していき、最終的にバーストするまでにいくら利息をかっぱげるか(そしてバースト直前で足を抜くか)というのがサラ金各社の腕の見せ所だったわけである。そう考えると、もちろん取り立ての暴力性・犯罪性とか反社会集団の資金源になっているとかいう問題はあるのだが純粋に利率が(厳格化前のサラ金よりも)高くなった点にだけ注目するならば、そういう長期的に維持不能な家計の破綻と信用経済からの排除が促進されてよかったのではないかとか思ってしまうあたり我ながらまだ精神的疲労が抜けていないようなのでもう少し静養を続ける予定。
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そこそこの年月庶民金融に携わってましたが、
>最終的にバーストするまでにいくら利息をかっぱげるか(そしてバースト直前で足を抜くか)というのがサラ金各社の腕の見せ所だったわけである
というのは初耳ですね。
ちょっと昔の闇金でシステム金融という奴は、根っこは一つなので押し貸しで債務を膨らませて追い込んでましたが、あれは事業者相手でしたしね。
情報センターの統計や産学協同で行った調査研究でも、不正確な言い回しで申し訳ないですが八割方が数年以内に完済し、最終的にバースト(破産状態ということでしょうか?)に至る割合はかなり低かったはずです。
直前で足を抜くとは、集中して督促をかけるということですか?破産直前の状態で払ってもらえるものなんでしょうか。
もし、参考になる資料・問い合わせ先等などありましたらご教示願えますでしょうか。
>taniさん
ども。まず表現が穏当を欠いたかもしれんので釈明しておきますが、私は消費者金融が良くないものとか問題ある産業とは基本的に考えていませんし、金利規制については以前の状態で良かったと考えています。また、以下については個々の分散したソースからの情報に基づく考えであって特定の資料はない、というか発掘不能であり、また信頼性については私自身が確実に検証したわけではありません。
まず「バースト」についてですが、自己破産だけでなく民事再生・任意整理を含みます。また、たとえば保証人ではない親が肩代わりして返済したという場合、これは統計上は「完済」でしょうが当該個人の家計は破綻していたわけで、「バースト」に含めるべきだと考えます。いずれも当該個人が信用経済から脱落するというのがポイントですがオレ定義であって学問的な概念ではありません。
次に「足を抜く」についてですが、第一に当該個人としては破綻寸前でも(法的には義務のない)親族等には返済能力がある場合がありますから、督促が無意味ではないでしょう。第二に、想定していたのは借り換えの勧奨であるとか、たしか国会審議でも問題になったことのある「おまとめローン」のようなケースです。
最後に実態の有無についてですが、まず最終的には「バースト」する一部の人について言えば、どの程度かはともかくそういう人は確実におり、消費者金融各社はそういう人に貸しているわけです。もちろん事前にどの程度予見可能かという議論はあるでしょうが、過払返還訴訟などで返ってくる額が結構なレベルになっていることを考えると、「バースト」が予見できる状態になってからも融資の継続(=追加的な利息の支払い)を優先していた、とは言えるのではないでしょうか。
また、きちんと完済できた人も含めての話ですが、利用者側からの融資の申し入れに応えるだけでなく消費者金融各社側から積極的な借り入れの勧誘、貸付可能金額の増加が行われていたことについては金融側・ユーザ側双方の証言がありますし、国民生活センター調査でも出ていますから事実として良いかと思います。エンドポイントには完済・バーストの両パターンがあるわけですが、その範囲でできるだけ利息を稼ぐための営業努力が行われていたのは間違いないでしょう。
念のために言うと、私はそういう営業努力が悪いことだとはこれっぽっちも思っておらず、それが遠因となって「バースト」する利用者がいたとしても当人が悪いとしか思っていません。言いたかったのはしかし、消費者金融各社が利益増大のためにゆっくりと稼いでいくことによって、本来信用経済の枠内にいる能力のない人を排除するのにかかるコストが増大していた面はあるのではないかと、そういうことです。
ご丁寧なコメントありがとうございます。表現が穏当を欠いた、とは思っておりません。ただ金融の、いわゆるビジネスモデルについて不思議な考え方をしているなと思ったもので。
もしお暇があれば一点お答えいただけるとうれしいのですが、なぜ金融各社が債務者を「バースト」に追い込む必要があるのでしょうか。
業者にとっていいお客とは、与信限度いっぱいまで借り入れて、何年でも利息だけ払い続けてくれる人です。企業ぐるみで金の卵を産む鶏をシメる?債務者が破産等に陥って儲かるのは弁護士だけでしょう。
そうならないように各社かなりの経費をかけて新規与信・中途与信・ビヘイビアスコア・データベースの構築をやっているはずなんですが。
もしかすると「とにかく無理にでも貸し付けてガンガン督促・訪問すればボロ儲け」と思われているのでしょうか。
電話一本かけるのにも経費がかかります。社員を訪問させて、まああり得ませんが完済してもらったところで赤字です。高利といわれますがどんなにがんばっても資本の回転年一回では限度があります。
ちなみに大手の利益率が高いのは仕入れの安さが主な理由です。スプレッドなんてタダ同然でしたし、今では資本提携の形で右から左ですから。
あとあくまで個人的な経験からですが、「バースト」直前の債務者は親族等にはとっくに見放されていて、代位弁済などまずあり得ないですね。
すいませんがもう一点。
>過払返還訴訟などで返ってくる額が結構なレベルになっていることを考えると、「バースト」が予見できる状態になってからも融資の継続(=追加的な利息の支払い)を優先していた
という部分の理屈がよくわからないのですが。取引の長さと、無理な利払いが関係しているんでしょうか?
以下はちょっとした戯れ言なんで聞き流してもらってかまわないんですが、
>本来信用経済の枠内にいる能力のない人を排除するのにかかるコストが増大していた面はあるのではないか
この一文の「信用経済」の部分をいろいろ入れ替えてみると結構シビアな社会の有様になるなと思ったり…
日本のマスコミには、不思議な習性があって、あるときには、「○○は悪いことだ、改めないといけない」と言い、「○○」を改めた結果、副作用がでると(副作用がでると予め分かっているのに)、「副作用がでた!!」といって大騒ぎするのです。
ワーキングプアとか、格差社会について最悪(というは、支離滅裂)な論調は、東京等大都会を抱える地域と、そうではない地域の所得を比較し、「日本は格差社会がある」というものです。大体、必要とする生活費が異なる地域を比較して、所得比較しても無意味だと思うのですが。。。(東京での豪邸は、地方ではごく普通の家なんですが。。。)。
で、なんでこれが最悪かと言うと、実は、マスコミ諸氏は、つい最近まで、国家公務員の給与が全国一律であり、国家公務員に準拠する地方公務員の給与が全国一律であることを(地方では、地方の民間給与を大幅に上回っていると言って)批判していたのです。地域間格差の解消という観点からは、公務員の全国一律給与こそ望ましい姿のはずなんですが、公務員叩きでは、それを批判し、それを忘れたかのように、所得の地域間格差を批判するわけですから。。。。(そういえば、つい最近逮捕されたメーテレの人は、契約社員でした。正規雇用を増やせと言っているマスコミ(の正規職員の高給)は、実は、非正規社員の犠牲の上に成り立っているのですね。。。)
同種の批判の中に、企業の配当性向の上昇に対する(配当に回すなら、賃金に回せという)批判にしても、配当って年金基金等の重要な財源ですし、そもそも、高齢化が進み、就業者が少なくなっている時代に、従業員により多く配分すれば(と言うことは、配当等の金融資産からのあがりに依存している人の収入を減らすことになるですが)消費が上がると単純な考えしかできない、困った事例があります。
社会保険庁の年金記録の不備だって、それをただすためには、個々の国民に一人一つの番号を付け、番号毎に情報を集約する(これって、国民総背番号ですよね)しかないのに、それに反対してきたのは誰なの?って思う次第です。国民一人一人員固有番号をつけ、情報集約をしないことのリスクが顕在化した(というか、年金番号が国民総背番号として運用されてこなかった、という喜ばしいことが明らかになった)のに。。。。(今回の場合、コンピュータ導入に抵抗してきた公務員の存在もありますが)。。。
それにしても、「憲法9条の維持」のために、ティッシュやチラシを配る組合って、やっぱり、公務員は恵まれて居るんですね(と愚痴になりました)。
>taniさん
> なぜ金融各社が債務者を「バースト」に追い込む必要があるのでしょうか。
ありませんね、おっしゃる通り。金融各社にとってもっとも望ましいのは、完済することもバーストすることもなく淡々と利息を払い続けてくれる債務者でしょう。したがって逆に、破綻する運命にある債務者を早期に破綻させるインセンティブもないとは言えると思うのですが。それが取引の長さと利払いの関係でもあって、私の印象が正しければ消費者金融で一般的な返済方法は月々の分割払いですから、取引期間が長ければ支払った利息の総額も増大するでしょう。分割によって一回ごとの返済額を減らすと短期的に「無理」な支払額ではなくなりますが、最終的に「バースト」する場合その支払いは「無駄」だったということになる、というのがご質問いただいたところの趣旨です。
ところで興味深かったのは
> 「バースト」直前の債務者は親族等にはとっくに見放されていて、代位弁済などまずあり得ないですね。
というところで、私が過去に読んだ当事者の体験談ではかなり代位弁済を狙っておられたのです。ただその方は信販系ノンバンクという話だったので、業態の違いがあるのかもしれません。
> この一文の「信用経済」の部分をいろいろ入れ替えてみると結構シビアな社会の有様になるなと思ったり…
うふふ、だからね、疲れているとこういうことを書いてしまうのですよ。
>TKさん
まあもうマスコミについてはこういう生き物だとしか私自身は思いませんが、昔と違って過去の発言にせよ報道にせよ簡単に検証可能になっているご時世にやっていけるのかな、とはすでに書いたことではあります。民主党がブーメランに当たるのも同じ理屈ですね。
なお公務員給与は一応全国一律ではなく、というか本俸は一律ですが「地域手当」の部分で物価格差などを反映しているという建前であり、しかし実態とは乖離していたので先年修正された経緯があります。下がる地域の組合が無茶苦茶うるさかったですが、まあ「国家公務員」といっても本当に国の各地域間で転勤する可能性があるのはごく一部ですからね……(なお本当はその調整措置をめぐってキナくさい話があったわけですが省略します)。
度々すみません。
私が何か読み落としているのかもしれませんが、
「したがって逆に、~インセンティブもないとは言える」
の部分が難しくて解りません。
淡々と利息のみを払い続けてくれる債務者が、業者の身勝手な都合としては一番望ましいのはその通りです。
おおやさんの認識は、いずれ破綻する債務者に対して弁済期限の長期化をもって月々の返済負担を軽減し、最終的な利息総額を増大させる、ということでしょうか。
また「無駄」というのは誰が何に対しての事でしょうか。利払いが社会的に無駄ということですか?。
一社あたりの平均的な貸付額は20万円程度であり、出資法上限29.2%の契約ならひと月31日として利息4,960円です。
最低限月々利払いのみとして、元本と同額になるまで約3年半。ここで破綻するなら表面上利益無し。実際は新規貸付与信コスト期間中の管理コストと破綻直前の督促コストがあり赤字。
すでに申し上げたとおり代位弁済など、あったら儲けもの程度ですし、破産等になれば丸損です。
これがどうして
>最終的にバーストするまでにいくら利息をかっぱげるか(そしてバースト直前で足を抜くか)というのがサラ金各社の腕の見せ所だったわけである
と断言できるのか、理解できないのです。 そもそもそういった状況に陥る債務者のパーセンテージが低すぎて、腕を見せるどころかコストのかかるアクションをしたくないのが本音です。
また、過払返還については、装置産業化した金融の実態に対応していなかった貸金業規制法の、法の不備を突いた弁護士の身過ぎであって、単純に額=利息というわけではありません。
ただ、情報ソースが信販系であったということなので、ターゲットが主婦層・借入金使途がショッピングならば、そういう事もあるかもしれません。
主婦相手の与信は、本人収入がないので夫の経済状態を見るそうです。ならば代位弁済の可能性もありそうです。また、クレジットカードに付帯させているなら、使用傾向から破綻を予測できるかもしれません。
どうも貸金の問題になると、それぞれの業態の違いにも関わらずごっちゃにして語られてしまうので戸惑います。例えるなら、保育園から大学院、音楽教室や予備校専門学校、ついでに怪しい日本語学校までひとまとめに「教育」として論じ、法を整備するような。
なんだか文句ばっかり言ってるみたいですが、決しておおやさんを難じる意図はありません。むしろこんな得体の知れない奴に真正面から応えていただけて感謝しております。
>taniさん
まず私が意図していたことについて申し上げると、《月々の支払額を軽減するなどの方法によって破綻までの期間を延ばす → 最終的な利息の支払総額を増やす(バースト時の負債額も増えるかもしれない)》ということであり、それが無駄だというのはご指摘の通り《社会的に無駄だ》という趣旨でした。
しかし前者が金融業者にとってメリットになるのはご指摘の通りバースト時・直前に債権が回収できるという前提に立った場合のみですから、taniさんが挙げられたように代位弁済の期待できないケースではそうならない、ということは理解できます。
で、興味深かったのはたとえば信販系の一部であれば私の言ったような状況があり得ないわけではないが、逆に収入ある本人を対象にしている独立系の消費者金融だったりするとおそらくまったくそうならない、業態ごとの違いがかなり大きいという話で、正直に言って私はほとんど意識していなかったので大変に勉強になりました。ありがとうございます。