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岩波講座憲法

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P1000282というわけで刊行されたようです。大屋雄裕「根元的規約主義は解釈改憲を放縦化させるのか」井上達夫他編『岩波講座憲法 第1巻 立憲主義の哲学的問題地平』岩波書店, 2007, pp. 283-300. なんかしかし表紙デザインが日本国憲法前文てえのは気味悪いなあ。こういうの物象化とか物神化とか言いませんか、マルクス主義の方では。

内容についてはすでに述べたところもあるが、タイトルは編者からの指定であり「しらんがな」と答えてはどうもいかんような風情であったためいろいろ説明してみたという次第である。

ええと、『法解釈の言語哲学』を書いているときには自分でもはっきり意識していたわけではないのだが、そこでの議論というのは大きく二つのフェイズに分かれていて、第一はルール懐疑というものは始めると根元的規約主義にしか行きようがない、理論的に途中で止まることはできないという話である。これを反転させると根元的規約主義に陥りたくなければ懐疑を始めてはいけない、従って『法解釈の言語哲学』は実在論の基礎固めとして機能するという安藤説になるわけであり、まあ私個人としてはそういう使われ方もアリではないかと思っている。

しかしいずれにせよこのフェイズでの議論は論理必然的にそうなってしまうというスジなので、結論に対して「それは不都合である」と言われても私も困ってしまう。血液型不適合で骨髄移植をすると拒絶反応が激しくなるので不都合だと抗議されても起きるものは起きるわけである。浦部法穂が「憲法の規定の枠を超えた意味の変化をも、なお『活きた憲法条項の意味』として肯定すべきなのか(……)然りとするならば、憲法の規定の意味は、『社会的規範意識』しだいでどのようにでも変わりうるものだということになり、制定憲法の存在理由は、ほとんどなくなってしまうであろう」と述べているのに対し、私が「不都合な真実から目をそらせば、それは消えてなくなるのだろうか」と書くしかないのは、これが第一のフェイズに属する問題だからだと、そういうことになる(なおともに上記論文294ページ)。

ただまあ、理論的には規則の拘束性とかないんですと言ってほったらかすと不都合であるという認識は私も共有するところで、だからどうにかして拘束性が社会的に発生するような仕組みとそれを維持する方法を考えてみましょう、というのが第二のフェイズである。こちらについては要するに人工的な制度をどう作ったら問題が公正かつ効率的に解決できるかというような問題であり、解答は決して唯一ではない。というか私は「公正かつ効率的」と言ってみたくなるが唯一の尺度は功利の最大化であると考える立場の人もたとえばいるだろう。第二のフェイズの議論はあくまで、達成度合いを計る私自身の尺度に照らした一つの妥当と考えられる提案だ、ということになるのではないか。

そこでまあこの論文でも、第一のフェイズで結論が不都合なので前提を否定するタイプの議論を批判した上で、第二のフェイズにおける私自身の構想から立憲主義の意味と価値について論じてみた。結論を一言で要約すれば(もちろん論文でこうは書いていないが)、長谷部恭男的愚民政策は良くないんじゃないですか? とまあ、そういうことになろうか。

なおフェイズを第一と第二に分けて整理するような用語法については先日の科研費研究会で使ったものであり、橋本努先生が『法解釈の言語哲学』についてお書きになった書評(ありがとうございます)についても以上を前提にすると少し理解しやすいのではないかと思う。ところでいま確認のために見に行ったら上記書評が若干公開時から変更されているような気がするわけだが、別に背後にある人間関係というのも不思議なものではないと思うのでお気遣いいただく必要があったのかどうか。学者にとって最大の学恩の返しかたは師匠の著書を絶版にすることだというのは京極純一先生あたりの言葉だったような気がすると、まあ私は不肖の弟子なのでそれほどの攻撃力はないわけだが、それだけの話である。「シーザーの血は流されねばならぬ。諸君、断固彼を殺ろう、だが、怒りに押し流されてはならん。いわば神々に捧げる供え物の気持で、彼を屠るのだ」(ウィリアム・シェークスピア『ジュリアス・シーザー』第二幕第一場)。

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