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Dutch Junk (3・完)
ところでこの写真が何かというと栓抜きである。ライデンの台所用品店でたしか13.5ユーロくらいで買ったものだが、片方を栓に引っかけて手前に引いてあけるという日本の普通の方法と逆なのがちょっと気に入っている。なお何故その栓抜きの写真をここに掲げておくかというと次にヨーロッパに行くときは絶対に栓抜きを忘れるなという自分への戒めである。なんとかしようとしたところキーホルダーが壊れ、何故かは知らないがスーパーでも酒屋でも栓抜きを置いておらず、普通の店は午後6時にはさっさと店を閉めてしまうので入手するのにえらい苦労をした。
なぜそんなに苦労してまで栓抜きを買ったかというに、前のエントリでオランダの物価の高さにぶつぶつと文句を言ったわけだがビールはすごく安いからである。やや正確に言うと、日本で日本のビールを買う場合と比較するとそう変わらないと思うが、日本でヨーロッパのビールを飲むのと比べるとすげえ安い。スーパーに行くとヒューガルテン・ホワイトが1ビン1ユーロを切っており、シメイは青赤白で若干違うものの1.5ユーロ見当。このへんはベルギー産で隣国だから安いのかと思うと、イギリスのOld Speckled Henでも2ユーロしなかった。水を買いに行ったスーパーでこの値段を見てにこにこしながら買い込み、しかるのちに栓抜きを持っていないのに気付いて上記のような出費をしたわけで得したのかどうかどうにも自信がない。
なおオランダのビールというとハイネケンであり、右写真のような、少なくとも私は日本で見たことがないタイプも売られていたが、何故ここに写真を出したかというにまずいので飲まない方がいいよと言うためである。いやまずアルコール度数が2.5%くらいとかなり低くて、まあそれは別にそういうものなら構わないのだが妙に人工的な甘味があり、茶色をしているのだがどうも麦芽を焦がすかわりにカラメルかなんかで色付けただけなんじゃないかと、そういう代物であった。普通のハイネケンはよく冷えてればうまいですよ、ええ。
さてビールだけでも何なのでオランダ料理の話も少しする。世話してくれた若手の研究者に「夕食はどんなものが食べたい?」と聞かれたので「オランダの料理ってのは何ですね」と尋ね返したらなんか考え込んでしまい、どうも料理屋で食べるのはイタリア料理とかギリシャ料理とか中華料理とかインドネシア料理であってオランダのごはんは家で食べるものという感覚が強いようなのだが、パンケーキってのは名物かと聞いたらそういえばそうだというような返事だった。Pannenkoekと書くのでたぶん発音はパネンケークとかそんなんである。いったいオランダ語というのはドイツ語の仲間であって、ウムラウトを使わないぶん綴りが伸びているような気がするのだが、なんとなく見ていると名詞の意味はわかる。ドイツ語を勉強していたのももう10年以上前でだいぶ忘れているのだが無駄ではなかったのだなあと少し思った。
というわけでパンケーキだが、日本のホットケーキでもアメリカのパンケーキでもなく、写真のようなものである。これはたしかベーコンとタマネギとマッシュルームの入ってるやつで、8.5ユーロくらいだったろうか。サイズは差し渡し30cm以上、切れ目は私がナイフで入れたので別に最初から切ってあるわけではない。
まあつまり最初から具を閉じこめて焼いてあるので厚さは数ミリだろうと思うが、面積がかなり大きいのとバターをふんだんに使ってあるらしく結構ずっしりと腹に溜まる。これ単独で夕食に十分な程度だが、こういうおかず系パンケーキだけではなく甘物系というか、たとえばリンゴの甘煮を包んでクリームを添えたようなメニューもあった。基本的に粉モンであって相応にうまいものだが、どこをとっても同じ味なのでしまいに飽きてくるあたりがちょっとした難点である。
ちなみに例の研究者は別にこの店に付き合ってくれたわけではなく、自分は家に帰って夕食をとるのだがうまい店は紹介しておいてやるという趣旨であって、まあそれはそれでありがたい。別に不親切なわけではない、どころか彼は基本的にすごく親切に私の滞在の手配をしてくれたのであって、つまりこういうのがオランダ的な親切なのかなと思った。冒頭の栓抜きの話、たとえばビールを売っていれば客の中には栓抜きを忘れたりなくしたりしたのもいるだろうから横に置いておけば売れ行きが伸びるだろう、ついでにつまみも置けばさらに商売が繁盛するだろうと日本人やアメリカ人なら考える気がするのだが、そういう工夫はせずに商売の領分を守っているらしい。隣の店が18時に閉まるならウチは19時まで働けば売り上げが伸びるはずだという感覚もないのか、あるいは営業時間の法規制があるのかもしれないが、そういうこともしない。なんとなく全体的な印象として冷めた国やなとは思うのだが、もちろんスーパーが24時間開いていれば便利に違いない一方で夜中まで働かんといかん人が出るわけである。便利と無理は同じ板の両面であって、まあ全員が納得できるのなら無理しない社会というのもアリなのではないかと、そういう気はした。
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