Winny事件判決

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う~んと、微妙。結果的には罰金150万円という有罪判決になったわけだが(参照、「ウィニー開発者に罰金150万円の有罪判決 京都地裁」asahi.com)、検察側の懲役1年の求刑に対して期間を短縮したり執行猶予をつけたりするのではなく刑罰の種類を変更した、ということで検察側の主張よりも実質的に違法性が低いという判断をしたのかな、という気もする。その反面、もちろん被告側の無罪主張も退けられている。以前に指摘した通り、法的には「いつか誰かがやるかもしれない」という程度の認識でも幇助犯の故意が成立するかどうかというのが注目点だと思っていたところ、幇助犯の範囲が拡大しすぎることに対する懸念は判決も指摘しているようであり、しかし本件では幇助犯成立を認めている。ということは、特に幇助故意を認めるべき理由が本件にはあると判断したということだろうか。こうなると事実認定も絡んで細かい話なので、判決原文を読まないとわかんないなあと思うところではある。

ただ報道された判決要旨(asahi.com)を見る限りでだが、(1) 違法な用途に使われる可能性が相当程度にあることを単に認識していただけではなく積極的に認容していたというのが幇助故意を認めるポイントであり、一方(2) だが違法行為の発生を積極的に促進したとまでは言えず、利益も得ていない点が罰金刑にとどめた理由かと思われる。その際、匿名で公開したことを結果を認容していたと認定する根拠にしている点も注目されるだろうか。

今回の事例で問題になっていたのは、簡単に言えば「犯罪にしか使いようのないピストルを売れば間違いなく幇助になる。一方、包丁には合法的な用途も多いので、一定の確率で犯罪に使われるとしても、それを売ったというだけで幇助犯に問うのは適切でない。さて、Winnyはどちらか」ということである。適切なたとえかどうかちょっと自信がないが、今回の判決は「包丁だが、すごく犯罪に使いやすくて実際にも頻繁に使われているような包丁を、裏町でこっそりと売ったらやっぱり幇助なんじゃないか(ただ責任は軽いと思う)」という感じだろうか。その限りでは、だから技術革新が危険になる、という類の議論でもないだろうと思う。というか私としてはやはりSoftEtherの開発者などと比べて、逃げ隠れしておいて技術革新がどうとか語るな、という気はするのである。

この点は被告人が捜査陣に対して「技術的に理解不足。分からないなら首を突っ込まない方がいい」という趣旨の発言をしたと伝えられる点(msn毎日インタラクティブ)と関連して気になるところで、これってトンデモ科学の人の典型的な物言いと同じだよねえ。もちろん被告人の技術は本物であっていろいろな意味で実際に役立ってしまったわけだが、技術にせよ科学にせよ本来はその有効性・正当性を主張する側が内容を立証しなくてはならない(というお約束になっている)のに対して、立証責任を社会に転嫁しようとしている点は同じだなと。このあたり、判決要旨が「独善的かつ無責任な態度」としていることと関係があったのかな、とも思われるが、その主張を社会的に検証可能な状態におかなかったものに対しては科学的探求を理由にした免責を与える余地はないのではないか、とまあそういう話である。

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