首脳訪問の意味

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なんかよくわからないトラックバックがあったのだが法整備支援について悩みを抱えている人というのが世間にはそんなにいるんですか?(挨拶)。さて何に怒っているかというと週刊新潮の特集記事の中で小泉前総理の政権末期における外国訪問が「無駄」として批判されている件についてである。そもそも、首脳の外国訪問に実際的な意味があるのかというと、普通はあんまりない。首脳同士の会談の時間は非常に限られているし、通訳も入るから実質的なコミュニケーションの時間はさらに限定される。せっかく時間を作って行ったのに「成果なし」というのもみっともないので、事前に事務方同士で首脳会談においてどういう合意をするかについて相当詰まった議論が済んでいるのが通常である。

小泉総理のアメリカ訪問に対する手土産を何にするかというような点にまで事前打ち合わせは及んでおり、世界でも数少ない野球愛好国同士なのでグローブとボールがいいのではというアメリカ側提案に対して日本側がトラブルを懸念し、結局まあグローブとボールでいいがキャッチボールはなしという結論に至るまで数時間を要したらしい。なお本番ではお土産をもらった小泉総理がたちまちブッシュ大統領とキャッチボールをはじめてしまったのは周知の事実であって、まあ首脳のパーソナリティとか関係によっては事務方の事前折衝を超えた事態が起きることもある例ではある。

じゃあしかし首脳訪問というのは無駄かというと、必ずしもそうではない。だいたい首脳訪問をやって回っているのはもちろん日本だけではない。諸外国の首脳も同様に世界を回っているのであればそれなりのメリットとか意味があるはずである。第一に「成果」をその時点に間に合わせなくてはならないので交渉ごとの進行が促進される可能性がある。まあつまり締切がないと人間はあまり仕事をしないということだが(言い訳ではない)。折角なら首脳が来る機会に話をまとめたいという動機は事務方の動きを良くするだろう。

第二は象徴的な効果であって、まあ両国の友好関係をアピールするとか、訪問先の国で報道されることを通じて一定のイメージ形成を狙うとかである。この点が我々にはよく分からなくなっている部分でもあるのだが、日本に外国の首脳が来たときにたいして注目されないからといって、日本の首脳が外国を訪問したときにもそうだというわけではない。日本の経済外交文化の重みというのは世界的にも相当のものがあり、それは支援の受け入れ国政府にとってみれば格段である。そういう途上国ほど人々の生活に占める政府のウェイトは大きいし、日本のようにさまざまなアミューズメントが社会に満ち溢れているわけでもない。日本の中から見れば「よくわからん国に行って何かしてきたらしい」であっても、先方にしてみれば「日本の総理がわざわざやって来たので動静が注目される」という事態だったりする。

たとえばモンゴルを訪れた日本の首相は小泉総理が3人目だが、今回は単独訪問(他の国の「ついで」ではない)というあたりにも意味があり、モンゴル側は街の中心・政府宮殿の正面にあるスフバートル広場で式典を行なうという過去に例のない歓迎で迎えている。注目を集めたところで両国の友好が確認され、たとえば日本の安保理常任理事国入りに対する支持が表明される。もちろんこれは儀式であって、友好を確認しておこうが何をしようがシリアスな利害対立が起きれば態度を覆されるに決まっている。しかし儀式には儀式としての重要性もあるのであって、何か起きなければそう簡単に態度を変えるわけにもいかなくなる。それが象徴的な効果というものだ。

ウズベキスタン・カザフスタンについては日本の総理として(独立前後を通算して)初の訪問だが、他の国の首脳はとうの昔に両国に訪問している。象徴的な外交において日本は出遅れていたわけで、それを取り戻すのに8億円かかったくらいで(正確には訪問4回の合計費用なのでここだけに限ればもっと少額なのだが)ガタガタ言うなという気もする。だいたい経済協力の額で言えばモンゴルが年間約80億円、ウズベク約120億円、カザフ約150億円なわけで(2004年)、それに対して今回の訪問の費用がどれだけの重みを持つというのか。おまえらの小遣いの話してんじゃねえんだからよと言いたいところもある。

自称政治評論家であるところの森田実氏については元々古いタイプの政局情報屋であって政策や外交に対する識見はもとより期待できず、政局情報についても政治家の世代交代と政治の構造変化に伴ってすでに「逆神」の域に達しているのは有名であるのでどうでもいい。つうかこの人にプラスの評価されるともはや人生終わりという感じなので小泉前総理としても批判されて吉、という話だが、民主党議員によるそれと同水準の批判に乗ってしまった週刊新潮とそんなの飼ってる民主党は何をやっているのか。特に新潮に対しては、週刊文春かと思ったという評を贈りたい。


いい人のための追加: なおモンゴルにとって日本は最大の援助供与国であり、ウズベク・カザフに対してもアメリカとNo.1の地位を争っている。先方から見れば援助を豊富に供与してくれる国だが要人は来ない、途上国のこととあって情報が潤沢に入ってくるわけでもない、いったい日本てなどういう国なのか、という話でもあったわけだ。カネの関係ではなく人の心のつながりが見える外交を重視するなら、小泉総理の訪問外交を積極的に評価すべきだろう。2004年の新潟県中越地震に対して、モンゴルの一般市民・企業からは約600万円の義援金が寄せられた。この600万円にいくらの価値があるか、この600万円をつなぎとめておくことにはどれだけの価値があるのかということを、考えてみるべきだと思う。

悪い人のための追加: もちろん我々としてはこれらの国々の位置にも注意するべきなのであって、ちょっと言い方は悪いがつまりロシアと中国の裏庭である。さまざまな鉱物資源も豊富な地帯であって、ここに手を突っ込んで仲良くしておくことの価値をいくらと評価するかはまあちょいと難しいわけだが、まあこれがわからん人の世界というのは日本と周囲3ヶ国くらいでできてるんだろうなあと、そういう話である。

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