二つの法曹(1)

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「最高裁長官に島田仁郎氏、刑事裁判に精通」(Yomiuri Online, 10月2日)……あれ?

「最高裁長官、堀籠氏起用に固まる」(asahi.com, 9月24日)……おや。念のために言うと9月には(確か)毎日や産経も同旨の報道をしていたので、上は朝日がどうこういう話ではない。何かあったかな?

さて初の新司法試験の結果も出てあちらこちらで悲喜もごもごではないかと思うが(表で言いにくいあたりが実にもごもごである)、そんなところに別の話が。「司法修習生、107人が「落第」 過去10年間で最多」(asahi.com, 9月28日)。

法律家になるための最後の関門にあたる司法研修所の「卒業試験」で、受験者の7.2%の107人が合格できずに「落第」するという異例の事態が起きた。最高裁が28日発表した。記録が残るここ10年間では最多で、落第者数は昨年の約3.5倍。最高裁は「合否基準は変えていない」としているが、今回は司法試験合格者が初めて1500人規模に増えた期の試験。法曹人口増を図るための司法試験合格者数の増大が一因とみられる。

へえ。何の話かというと法曹(弁護士・検察官・裁判官)になるためには従来、基本的に司法試験に合格する必要があってこの合格率が2〜3%という超難関だったのは有名な話。しかし合格しただけではダメで、そのあとに司法修習という昔は2年間、最近は1年半の研修がある。前後に座学の勉強があって、真ん中には裁判所・検察庁・弁護士事務所での実務研修。まあ要は見習いで実地を体験するわけだ。なお修習生のあいだは修習手当とかいう要は給料もどきが出て、そのかわり兼業バイト不可ということになっていた、はず。私自身は公法科だったので司法試験のことはよく知らない。

この司法修習のしめくくりに試験があって、通称は二回試験という。基本的には、とても難しい司法試験を終えて見習いも無事に務めたから卒業免状をあげましょうという程度の話であって、従来あまり不合格者は出していない。裁判官・検察官として任官したり出世するためには修習やこの二回試験での成績が重要という話もあるが、逆に言うと弁護士になるつもりならたいして関係ないわけで、落ちこぼれなければ大丈夫と思うと遊びに走る人間も出てくる、というあたりは東大法学部の光景とあまり変わらないらしい。そっちは公務員試験を受けないなら成績はどうでもいいよね、という話。

ところが今回は大量の不合格者・合否留保者が出たという話でまあ大変。もちろん特定の科目で何かトラブルがあったとか、急に判定基準が嵩上げされたという話である可能性もあるが、複数の弁護士さんのブログなどを覗いている限りそうでもないらしい(不合格者が一番多かったのは刑事弁護だがこれはそう難関科目でもないはず、とか根拠も挙げられているが上述の通り私自身はよくわからない)。仮にそれが正しいとすれば修習生のレベルが落ちたという仮説が非常に真実味を増すわけであって、一方ではLS修了・新司法試験組が合格率48%という試験で法曹になることを考えるとそちらもレベルは低いのではないか、こりゃ日本の法曹の将来はどうなるものかという危惧があるようだ。
……あるようなのだが、実はLSにとってこれは悪い話でもないんじゃないかと思ってみたりもする。前提としてLS是か非かという論争があり、まず法曹の増員は社会的要請であることを前提として(ここ自体に異論があり得ることはひとまず措く)、そのためにLSという「プロセス型養成」の機関、つまり組織的・継続的な専門家教育を行なう学校が設置されたわけだが、そんなことせんでも旧司法試験の定員増やせばええやんけという意見は根強くある。実際、旧司法試験の合格者数は戦後長いこと500人だったのを段階的に1500人まで拡大してきたわけで、もう一息増やして3000にすればLSいらんと、まあそういう話。

こういう人からは、まあそういう人でなくとも新出来のLSという制度は極めてあぶなっかしく見えるわけで、合格率が今年は48%、来年以降厳しくなっても多分30%台、そんなもの選抜として機能してないじゃないかと、まあそういう疑念も出てくる。旧司法試験合格者と新司法試験合格者は、名前は同じ「弁護士」でも別のもの、同じ扱いはできないという声もすでに出ていたようではある。

でまあ、今回の結果はそれに対して旧司法試験合格者だってダメじゃんという話なわけだ。まあ当然といえば当然だが、合格者を増やせば最底辺のレベルは下がるわけで、二回試験を同じ基準でやれば不出来な人間も増えるよなと、そういうことになる。朝日によれば合格者数が700人だったころ二回試験の不合格者は5人以下だったのが、1200人水準になると30〜50人というあたりか、1500人になった今年は100人オーバーで、つまり増やした300人で50人ばかりは不合格者が増えた計算だから、もし3000人水準にしたら500人くらいは不合格になるかしらねえと想像をたくましくしてみるわけである。まあそれ以前に、実務修習の受け入れ能力を考えたら旧試3000人体制なんかできねえよという話があったからLS案になったのだろうがそのあたりは棚の上にあげておいて、と。

こう言うとじゃあLS修了者は大丈夫なのかと聞かれると思うのだがさあどうかねえ、私は公法科出の基礎法屋だから彼らの実力云々と言われてもさっぱりわからなくて我ながら無責任なことである。ただまあ、上述の通り単純な定数拡大では上手くいかないんだからLS制度で(手直しはするにしても)何とかやっていくしかないよねえというのが一つ、もう一つは修習生や法曹というものに対する考え方を変えた方がいいだろうという話になる。この話、つづく。

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