続・ビラまき裁判(2・完)

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さて「ビラまき裁判」における「たなこ」氏のコメントに対する応答の続きだが、まあ良かったのはここまで。どうも書かれているうちにだんだん血がのぼってきたのか、このあとの議論はほぼ惨憺たるものである。

第一に「仮に、自民や公明がビラ投函を住民に注意されたら、大人しく止すんでしょうかね」という部分については、逮捕・送検された事例を聞かない以上、問題のない形で配布してるんじゃないですか?としか言いようがない。書いてある通り自民党のビラが個別ドアに投函されているケースはあるようだし、「す」氏によればピンクチラシを住居侵入で摘発しているケースもあるようである。「たなこ」氏は公明党・オウムその他のものもあると主張されており(否定する気はない)、オウムは摘発された事例もあるんじゃないかと思うが、その他の事例が報道された記憶はない。この程度の情報量では上記程度の推測しかできないのであって、それ以上についてはやってみたら?としか言いようがないだろう。「政治ビラを含むあらゆるビラの直接投函禁止」なら住民全体の合意が得られる可能性も低くはなかろうと思う。

ただ実際にやってみるとピザ屋や風俗店と同じ結果になるのではないか、つまり「その場は取り敢えず立ち去って、その後も平然と繰り返すという手法をとるんじゃないの」とは思う。何故なら「たなこ」氏がご指摘の通り費用対効果を考えたら抵抗するより規制を潜脱した方が利口だからである。ところで私が疑問に思うのはじゃあなんで逮捕された人たちはそうしないんですか?という点にある。政治だってご商売だし広告だって社会に対して何かを訴えているわけである。主張内容をひとまず措いて自分たちの主張を社会に広報するという行為に注目すればその効率性とか費用対効果とかテクニックとかは共通に論じることができるだろう。にもかかわらず特定の集団がそのような効率性からは正当化できない行為を繰り返す場合、そいつらは馬鹿なんだという解釈を取らないとすれば(つまり相手が合理的に振る舞う存在だと善意に仮定するとすれば)、「自分たちの主張を社会に広報する」という目的を共有していない、それよりはむしろ結果として社会的不利益を被ることになったとしても自らの主張内容に合致した行動を取ることを目的としていると理解すべきだということになろう。

ところで私が指摘すべきなのはそれは政治ではないということであり、以前にも述べたが政治とは少なくともその一面において「社会からの支持獲得を競うゲーム」であり、その意味で市場競争との共通性を持つ。というか、この支持獲得ゲームに成功しないと次のゲーム(政策の妥当性競争)に参加させてもらえないわけだが、その際に対象となる「支持」が一人一票という極めて特殊な布置をしている点に注意しなくてはならない(これも既述)。つまり政治ゲームにおいては「できるだけ広汎な支持獲得を目指す」という方針を取るべきところ、そのように振る舞わない集団がいるとしたら彼らが参加したいゲームはきっと政治ではないのである。前述のような行動様式に非常に近いゲームとして私が思い付くのは宗教であり、なので先程「実際にやってみるとピザ屋や風俗店と同じ結果になるのではないか」と述べたが自民党には該当しても公明党は違うかも***Deleted for the Security Reasons***

ともあれ、「個別ポストに投函してくるのは共産党だけ」という部分について「稚拙な印象操作」と評されているのだが、まあ2ちゃんねるでも見ればわかる通りこういう声は実際に山のように出ているのであって、私はむしろそれに対してそうではないという意見もあると否定的な見解を併記して中立性を心がけている。この件が実質的な言論弾圧である可能性も否定はしていない。にもかかわらず「印象操作」を言い立てるあたり、私としては印象操作だという印象操作、乙としか言いようがない。「たなこ」氏は「自分の主義主張を無理やり通す為の小賢しいやり方」と私の文章を批判されているのだが、まあ鏡を見てからおいで、と言い放つべきところであろう。

*****

次の部分では〈部外者禁止〉について「過激な住居侵入犯お縄だ論者としては、喩えば、ホテルの泊り客でもないのに、ロビーで待ち合わせとかしてる奴はどうなるのか訊いてみたいね。」と揶揄されているが、これは部外者かどうかという論点を部外者の立ち入りをどの程度・どの範囲で許容するかという論点と混同した議論であり、論理的に破綻している。というか泊り客以外の・ロビーで待ち合わせしている人間たまたまビラを配りにきた居住者以外の人間が〈部外者〉に入らない(から〈内部者〉だと主張しているかどうかは留保が必要だろうが)と言う時点で日本語の言語感覚が崩壊しているという気もするわけである。だいたい、ほとんどのまともなホテルでは宿泊客以外がロビーやレストランを越えて客室エリアに入ることを禁止していると思うが(スイートルームは別かもしれない)、「泊り客でもないのに、ロビーで待ち合わせとかしてる奴」が部外者でないとすればなんでそんな規制を加えることが可能なのか。泊り客だって従業員用通路などへの立ち入りは禁じられているわけであって、つまりホテル側の立ち入りをどの程度・どの範囲で許容するかという意思に従属しているわけだが。

ここは住人(および住人に個別的・明示的に招かれた人間)以外は「部外者」であるとしても、社会通念などから考えて「部外者」にも許された立ち入り範囲があるのであって、ビラまきはその範囲に入るのではないかという立論をすべきところであり、現に地裁判決はそのようなロジックに立っているわけだ。この点、細かくは平穏説と住居権説で説明が異なってくるところがあるが、しかし前段については私も否定する気がない。建造物の周囲にある・塀などで囲まれて区別されたエリアを「囲繞地」(いじょうち)と言うが、住居たる建造物の囲繞地も「住居」に入るので(福岡高裁昭和57年12月16日判決)、例えばマンションを取り囲む塀を乗り越えたがある部屋の窓を破って侵入する寸前で御用となったという場合にも住居侵入罪の構成要件を満たす。ところで団地の場合には集合ポストが各棟の階段の下(つまり敷地内)にあったりするし、門扉を入った内側の建物玄関にしか呼び鈴が付いていない住宅というのもありそうである。このとき、ビラ投函のために集合ポストまで敷地内に入ったり、住人を呼び出すために施錠されていない門扉を開けて玄関まで行くことは、形式的には囲繞地への立ち入りにあたるわけではあるが「部外者」にも許された範囲だと言ってよいだろう。この点、平穏説(住居侵入罪の保護法益は住居の平穏である)ならそのような立ち入りは平穏を乱さないと説明するだろうし、住居権説(保護法益は住居権者の意思である)なら住居権者の暗黙の承認が推定できると言うだろう。

いずれにせよ、ホテルでの待ち合わせはそのように平穏を乱さない・か・ホテル側の暗黙の承認があると解される例である。そのことは、待ち合わせ目的でなく特定の客室に強盗に入ろうとして凶器を隠し持った人間がたまたまロビーに入った時点でそれが発覚し逮捕されたという事例を考えた場合、どちらの説でも住居侵入の成立を認めるだろうという点にも示されている。待ち合わせが許容されるのは、宿泊客以外も部外者ではないから、ではないのである。

*****

さてこのように興奮された結果なのかどうか、最後の部分では壮大な誤読をかましておられる。私の記述の「〈オートロックもないのに美観とか言うな〉」という部分を取り上げて「オートロック無くても美観に拘った(……)マンションなんてのも世の中にゃ、まま、あるよ。」とお書きなのであるが、元の文章は判決に従うとオートロックのない共同住宅において部外者立ち入り禁止の意思表示を行なうことがかなり困難になってしまう、「〈オートロックもないのに美観とか言うな〉という話」になってしまうが、それは「ひどいなあ」という文脈である。この事例では部外者立ち入り禁止の旨がマンションの掲示板に掲示してあったのだが、判決はそれを明確な意思表示とは言えないとしたのであるから、逆に言うとオートロックのないマンションの住人が部外者の立ち入りを禁止しようと思えば建物入口真ん前の誰が見てもわかる場所にでかでかと「政治目的を含む一切のビラについて、個別配布する目的での立ち入りを禁止する」とか掲示しておく必要があるということであって美観だいなし。すると実質的にはオートロックがなくとも美観を重視したい共同住宅の住人たちから部外者の立ち入りをコントロールする自由を剥奪していることになるのでひどいなあと判決を批判しているのだから、それに対して前述のような指摘をされればそうですか、それはありがとうございますとしか言いようがない。

つまり「たなこ」氏は(私の要約した)判旨と私自身の主張を取り違えた上で、その幻想の「私」に対して「オートロックの城に閉じこもってないで、もうちょっと、自分を開いてみた方がいいんじゃないの?めがねの色も変わるかもよ。」などとおっしゃっているのであって、私としてはひとの眼鏡の色を心配するまえに味噌汁で目ん玉洗ってこいとでも言うべきところであろうか。自分は世間を知っていると標榜する人間ほどまともにモノを見ていないという法則はここでも妥当するようである。

*****

ところで「たなこ」氏の名前が読んでいても書いていてもしょっちゅう「たらこ」氏に見えるわけだがこれはキューピーちゃんの呪いであろうか、私が疲れているだけか。サビのメロディが頭の中でエンドレスになってしまうので公害の一種ではあるまいかと思うわけではある。(9月23日に書きました。)

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コメント(6)

囲繞地
×いじょうち
○いにょうち
ご苦労様です。

こんにちは。圧勝の御祝いにうかがいました。ご苦労様です。

ある程度どのようなコメントか予想して見に行きましたが、あまりに予想通りのコメントだったので笑ってしまいました。崩壊してますねぇ。勢いで絡んでみたものの、惨憺たる議論しか残っていないのを自分でもわかっているので、そんなふがいない自分自身に血が上ったということでもあるのでしょう。そういう貧弱な理論武装しかできていないときには普通は下手なコメントを書くのを遠慮するものですが、自分の行動を抑制する前頭葉近辺に萎縮の兆候があるのかもしれません。まあそれは言い過ぎとしても、中3あたりから丁寧にやり直せば、こんな言語感覚でもまだなんとかなるかも。

いやーそれにしても勝てるはずのない喧嘩を売ったアホにどさくさに一発かますのって快感w。

続・ビラまき裁判(2.完)読ませて頂きました。妥当なご意見であり、説得力もあると思います。ミケ

>anonymous cowardさん

横槍ですがおおやさんの手を煩わせるほどでもないので。

>囲繞地
>×いじょうち
>○いにょうち

ちっとぁー座右にまともな辞書置いたらどうですか。
「いじょう」という読みを知らんのですか。

>通りすがり さん
ども、ええと問題は法律用語としての読みなので、座右の辞書では片づかない場合も多いのです。

>anonymous cowardさん
というわけで次のエントリをご参照下さい。

>bunさん
いや勝ち負けの話なのかどうかよくわかりませんが、たとえそうだとしても素人さん相手では何の自慢にもならんでしょう。書いているうちに興奮していらんことを言う、という点では私も褒められたものではないわけで。
素人さんをいじるのも良くない趣味というご批判もあるでしょうが、まあこの点についてはコメントを書き込んだ段階である程度ご覚悟があるだろう(もしくはあるべきだ)と思うのと、他の読者への便宜を考えてご海容いただきたいところ、ではあります。はい。

ビラまき裁判
実に興味深い判決が出たことだと思います

10年程前の学生時代であれば
ワクワクして判決文を読んだのでしょうが・・・

続・以降の記事には頭が下がります
こちらも実に面白い結論だったとおもいます

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