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微妙なこと

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客が多くて自分の仕事が進まない(愚痴)。いや私自身に対するお客さんであれば不亦楽乎であって大歓迎なのだが、学部へのお客さんの対応をなぜか私が命じられるという予定が立て込んでいるのであまり嬉しくない。何が嬉しくないといって今月中にあと最低3回もスーツを着なくてはならんことであって、夏のスーツどこにやったかな。なお上記「なぜか」というのは修辞であってこういう事態に至った経緯を推測して理解はしているが納得はしていない。やれやれ。

というわけで多忙なのでたまたま某所で見かけたものをネタに瑣末なことを書く。なおどこで何を見たのかについては黙秘する。コメント欄でもあれば簡単に指摘するだろう程度のネタであり、野暮なツッコミであることは自覚している。さて。

「ノン」と言ったり「ノンラー」と言ったりする。ベトナムで農作業や荷運びをしている人、女性が多いのだが、そういう人がかぶっている笠のことである。平ぺったい円錐の形で、竹ひごに草の葉を編んで作る。「ノン」とは笠、「ラー」は葉の意味であるらしい。小さい「ノン」をいくつか繋げて作った飾りものがみやげ物としてよく売られていたりもする。この「ノン」だが、ベトナム人、なかでも人口比で約90%を占める圧倒的多数派のヴェト族(キン族)の特徴として理解されることもある。ノン姿の農民が、水牛にすきを引かせて水田を耕すと、そういうイメージである。

別の話をする。ブラックパジャマあるいは黒いパジャマで有名だったのはカンボジア共産党、いわゆるクメール・ルージュである。どうも色を使って綺麗に装うというのは資本主義的頽廃だとでも考えたらしく、みんな同じ色・同じ形の黒いパジャマだったという話は有名である。このクメール・ルージュの大幹部なのにみんな同じ黒ってのは気に入らんと言って部下たちにもとりどりの装いを許していたフー・ユオンという男の話が 清野真巳子『禁じられた稲:カンボジア現代歴史紀行』(連合出版 2001)に出てくる。結局彼は、そういう豪胆なところが指導者であるポル・ポトに疎まれたのか粛清されてしまうのだが、それがクメール・ルージュ崩壊の契機になった。

というのは彼の部下たちがベトナムに逃亡し、折からクメール・ルージュと対立していたベトナム[の力を借りて|の手先になって](どちらかは見る人間の立場によって違うかもしれない)ベトナム軍とともにカンボジアに帰ってくるからである。現在の首相、カンボジア人民党指導者のフン・センもそのうちの一人だったはず。で、ポル・ポトたちはプノンペンを追い出され、国境地帯に潜伏することになる。

しかし何故クメール・ルージュとベトナムが対立していたかというと、もちろん同じ社会主義陣営と言っても背後にいるのが中国かソ連かという問題もあったのだが、当事者同士の問題もあった。つまりカンボジアのクメール人のあいだの反ベトナム、あるいは反ヴェト族農民感情である。これがどういう由来かというのは部外者にはよくわからないところもある(およそ反○○感情なんてそういうものかもしれないが)。歴史的な因縁もいろいろありそうではある。しかしクメール・ルージュ期にこれが火を吹いたきっかけは土地争いにあったらしい。クメール人からするとこういう話だ。国境の川の向こうで、ノンをかぶったヴェト族の農民が水田を作って稲を育てていた。ふと見ると川の位置が変わっていて、向こうのヴェト族の水田が広がっているような気がする。気が付くとまた水田が広がっていて、自分たちの土地はまた位置を変えた(ような気がする)川のこっちまでという話になっている。あれ〜?

これはけしからんというのでクメール・ルージュがベトナム領内まで侵入して農村を襲撃する、ベトナム側としてはそこは自国の領内だと思っているから抗議する、クメール・ルージュ側は不当に領土を削ってきたヴェト族の農民をこらしめただけだと思っているからそれをはねつける、かくして両国の関係は悪化していったらしい。長々と経緯を書いたが言いたいことは簡単であって、つまりブラックパジャマはノンをかぶらないだろうというだけの話である。

ヴェト族農民の国境越えという話が本当にあったのかどうかはよくわからない。もとよりそうはっきりした国境が決まっていたわけでもないだろうという気もする。ある程度わかるのは、第一にヴェト族というのはそういうことをやりかねないとクメール人たちが思っていたということであり、第二にまあヴェト族の方から見るとやりたくなったかもしれんということである。クメール人たちが農地に堤を築いて水田を作って耕作していたりしたとすれば勝手にそれを動かそうとしてもそう簡単にはいかないはずであって、ヴェト族から見ればほったらかしでちょいと耕しても気付かないだろうという状況があった、のではないか。

しかし仮にヴェト族がそう思ったとすれば、あるいはそれが土地の有効活用になっていると感じられたとすれば、それもまた一方的な見方なのであって、カンボジアの少なくとも一部の農法は耕さないのだと、そういう話も前掲『禁じられた稲』に出てきて猛烈に面白い。そもそも雨季になるとトンレサップ湖の面積が3倍に膨れちゃうんですがみたいな土地で水路を作って灌漑して施肥して耕作するみたいな農法がうまくいくかという問題があり、やろうとして大失敗したのがクメール・ルージュであるという話も出てくる。共産党政権下で禁じられた「浮き稲」という種類は、湖が溢れて水深が増していくとそれに従って最大では6mほども伸びる。乾季が来て水が引くと自然に倒れて収穫期を迎える。生育に必要な養分はトンレサップ湖から洪水が持ってきてくれる。こんな土地で境界線の灌漑の耕作のと言ってもあまり意味がないのもまた事実なのである。土地に労力を投入して耕作すればそれが収穫という価値に転化する、などというお話が通用しない地域も世界にはあまたあるのだ、というとまたリバタリアニズム(の一種)の悪口になる。

さて理由はどうあれクメール人の反ベトナム・反ヴェト族感情をある意味で体現していたのがクメール・ルージュだったわけだが、その後それはどうなったかというと微妙、という話であるらしい。1979年1月7日はクメール・ルージュがプノンペンを追われた日であり、それを記念して1月7日は祝日になっている。しかしそれは同時にカンボジアがベトナムに支配された日、でもある。人民党は、クメール・ルージュ支配が終わったことは何よりも記念すべきだと主張し、他の政治勢力もその点に異論を唱えることはない。しかしではその後のベトナム支配あるいは人民党支配を歓迎するかどうか。1月7日に記念行事をやっているのは人民党だけ、というあたりが微妙な話の微妙な所以である。

*****

なおクメール・ルージュの灌漑政策が大失敗した理由も前掲書に詳しいが、一因として土地の高低とか地形とかに拘泥せず一定の間隔で正確に碁盤状の水路を掘ったからというものがあり、いやそのカンボジアが完全に平坦だったりすれば良かったんでしょうけどね。これ、私としてはフランス革命期の「革命暦」(ほら例のブリュメールとかテルミドールとかフリュクチドールとかいうあれですよあれ)を思い出す話で、あれもやっぱり地球の 自転周期 公転周期(2006.9.21修正) が360日ちょうどだったりすると良かったんでしょうけどねと言いたくなる。このあたりが客観性とか論理性とかではなくとにかく「科学的」であろうとする「科学主義」っぽいところで、単なる現実否定にとどまらない怖ろしいものを感じる次第である。

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おおや さんのコメント (2006年9月21日 02:10):

なおアフィリエイトはやってません。

BUNTEN さんのコメント (2006年9月21日 07:40):

>地球の自転周期が360日ちょうどだったりすると良かったんでしょうけどね

それを言うなら公転周期のよーな気がしますです。(^_^;)

おおや さんのコメント (2006年9月21日 08:48):

>BUNTENさん
まったくその通りでありましてお恥ずかしい。修正いたしました。

TK さんのコメント (2006年9月21日 18:50):

新司法試験、結果が出ましたね。
やっぱり、ローの数が多すぎますよね。
私は教育現場は知りませんが、未修生は戦々恐々ではないでしょうか?
あとは、合格された方が、飲酒運転で検挙されないことを祈ります(東海地方では、朝日と中日が、交通安全運動に今ひとつ乗り気ではない様ですが)。

おおや さんのコメント (2006年9月22日 00:05):

>TKさん
ども。え〜その件については本気で微妙なのでコメントを回避しようかなと(笑)。まあ1年目はいろいろ特殊事情があるので今回の結果が来年以降続くとは思えないのですが、しかし「きちんと勉強していれば大丈夫なLS」「頑張らないと合格できないLS」「修了しても合格できないLS」の差異がはっきりしてしまうだろうなと。
検挙者についてはもうウチからは出ているので***Deleted for the Security Reasons***

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新司法試験、結果が出
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