ビラまき裁判

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マンションに政党のビラを配布した事件に関する地裁判決が出て、ああこれはあほうな喜び方をする人が出るだろうなあと思ったら案の定だったのでどうしよう(挨拶)。事案はマンションの共有部分に無断で立ち入って個別ドアに対して政党のビラを配布していたのが住居侵入罪に問われたものだが、東京地裁の判決は無罪であった(cf. asahi.com)。もちろん本来は判決全文を見たうえで論じるべき問題ではあるが、とりあえず報道の範囲で判決のポイントを指摘すると、こうなる。


  1. 「公訴権の濫用にあたる」という被告側主張は斥けられている。→ 無断ビラまきは訴追することが許されないような「微罪」ではない。
  2. 「表現の自由が住居の平穏に優越する」という被告側主張は斥けられている。→住民の明確な意思表示に反して無断で立ち入った場合、政治目的であっても住居侵入罪にあたることが判示された。
  3. しかし単に「立ち入り禁止」という貼り紙がしてある程度では明確な意思表示とは言えないので、今回の事例では住居侵入が成立しない。→明確な警告・立ち入りの管理システムなどがあるにも関わらず侵入した場合には住居侵入罪にあたる。

特に第2点は上記asahi.com記事でも明確に書かれており(「判決は、明確な「立ち入り禁止」の警告に従わずに立ち入れば住居侵入罪にあたるとした」)、本件はむしろ表現行為よりも住民の安全・プライバシ・意思を重視したものだと理解することができる。というわけで「住民のプライバシーか、表現の自由か」というasahi.com別記事の問題構成で言えば裁判所はプライバシを選択したのであって、「表現の自由通じた」という被告男性の発言(とされるもの)はまったく逆。住民の意思表示が明確になっていれば住居侵入が成立するのであるから、「配布していた人をいきなり逮捕して刑事罰を求めること」の妥当性が問われたとする朝日新聞29日朝刊社説も的外れ、ということになろう。


ところで上記判決によれば、見知らぬ人間がマンション共用部分をうろつくころに不安を感じる住民は、住民団体の決議等によって「総意」を確立して明確に掲示したり、オートロック等のシステムによって部外者の侵入を拒否するという意思を明示すれば良いようである。さてしかし、住民団体が存在して集合的な意思表示が可能なのは、集合住宅の中でもおそらく分譲マンションなどに限られるだろう(自治会があって管理してる賃貸アパートって聞かないよねえ)。オートロックなどが整備されているのも分譲マンションのたぐいか、賃貸住宅でも比較的家賃の高い物件だと考えられる。いや私のアパートはオートロックだからいいんだけど、つうことは住民団体もオートロックもないような貧乏アパートの住人には住居の安全に対するリスクを排除する自由を認めないということにならんだろうか。

誰か小泉政権下における格差社会の進行がこんなところにも!とか言ってもいい事態だと思うんだけど、どうなんかねそこんとこは。「無罪」という結論だけ見て喜んでる場合でもねえだろうと思うんだけど。

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コメント(11)

>貧乏アパートの住人には住居の安全に対するリスクを排除する自由を認めないということにならんだろうか

ホントに貧乏なアパートの住民は大家と毎日顔つき合わせてるから、組合でコンセンサス取らなきゃいかんようなマンションよりも、ずっと合意を得やすいと思うが。

まあ、わざと牽強付会に言ってんだろけど、実がなさすぎ。学食のカレー並み。

>Barさん
(1)ホントに貧乏なアパート(これはそれなりの数ある)で、(2)立ち入り禁止の意思表示に実効性を持たせるために侵入者に注意したり監視していたりできるだけの生活の余裕が住人たちにあって(相当減る)、しかも(3)有産者であるところの大家が「ホントに貧乏なアパート」に住んでるか、毎日顔を合わせるような場所に住んでるようなケースがどんだけあるっちゅうんだねあほらしい。「めぞん一刻」じゃあるまいし、と書きかけてあれだって所有者夫妻は別のところに住んでるのを思い出したわけですが。

なんか因縁付けとしても随分とみっともないわけだがこの人メイルアドレスがnobody@nowhere.comとかであって、あら小倉秀夫さんのいう「匿名の卑怯者」ってこういうことかしら。いいけどnowhere.comは実在するらしいので僭称しない方がいいと思いますよ。ええ。

でも新聞報道の判決を読む限りでは、大家が「明確な立ち入り禁止の意思表示」をした張り紙をしておけば、立ち入りを違法とできるように読めるのですが(「判決は、明確な「立ち入り禁止」の警告に従わずに立ち入れば住居侵入罪にあたるとしたが、このマンション玄関の張り紙では、「明確な立ち入り禁止の意思表示がされていない」と指摘し……」)。

>す さん
ども。論点は二つあって、(1)所有者(大家)単独の意思で・賃借人(住人)の意思と無縁に・立ち入りを禁止できるか、(2)立ち入り禁止の意思表示の方法、ですね。
まず(1)ですが、本件では難しいと思います。よほど特殊な場合を除き(*)所有者は賃借人が招じ入れた人間の共用部分への立ち入りを禁止することはできないと考えられますが、本件判決は〈短時間のビラまきのための立ち入りも許されないというような社会的合意は成立していない〉と判断しましたから、〈各住人に直接確認するまでもなく政治的ビラ配布のために招じ入れるようなことはない〉と推定するわけにはいかなくなります。すると所有者としては〈政治的ビラ配布のための立ち入りを許可する住人がいない〉ことを確認する必要があり、結局は住人全員の意思をチェックする必要が生じるでしょう。
(*) ここではいわゆる「男子禁制」(立ち入り自体禁止)のアパートであって、その規制内容を賃借人においても承知した上で入居しているような場合を想定しています。
分譲マンションの場合と違うのは、管理組合のように「住民全員の意思」を団体的に表明するという手段を用いなくとも、上記「男子禁制」のように、賃貸借契約の際に個別に確認するなどの手段が使えるところでしょう。しかし、新規に一定の規制に対して合意を取得しようとすれば(a)現在入居している全員に対して個別にアプローチするか、(b)新規の入居者についてのみ契約時に確認し、そのような契約を結んだ住人で賃借人が占められた時点で「総意」が確立したと考えるか、しかないでしょう。いずれの場合も相当に困難だと言えるのではないかと。
(2)について。本件では、オートロックのないマンションにおいて管理組合理事会が部外者立ち入り禁止の決定を行ない、「1階玄関ホール内の掲示板に広告の投函(とうかん)や部外者の立ち入りを禁じる趣旨の張り紙がある」ということだったようです。これでも意思表示としては不十分だったという判断なので、(a)オートロックを設置するなどして部外者を排除するシステムを備えるか、(b)「部外者」の定義を明示する・理由の如何を問わず立ち入りを禁止する旨を明記するなど、相当明確な表示を・相当目につく場所に行なう必要がありそうです。
というわけで、(1)(2)双方から〈それほど簡単ではない〉と言えるでしょう。やっぱり〈オートロックもないのに美観とか言うな〉という話ではないかと。私個人は〈立ち入り拒否の意思表示ははっきりと明示せよ〉という点には賛成ですが、〈部外者禁止〉でもダメというのは本当だとすればひどいなあという感じ。自民党だろうが共産党だろうがピザ屋だろうが、住人(および住人に個別的・明示的に招かれた人間)以外は「部外者」だと思いますね。


どうもコメントありがとうございます。腑に落ちました。
私の疑問は、ピザ屋や風俗店のチラシがイヤなときにも警察は飛んできてくれるんだろうか、というあたりにもあります。そういう前例があれば、表現の自由云々と紛糾することもあるまい、と思うんですが。

>す さん
ウチはオートロックなのでわからんのですが、個別ポストに投函してくるのは共産党だけという声も、いやピザ屋や自民党も投函してくるという意見もあるようです。ただ、住民に注意されても表現の自由などを理由に抵抗するピザ屋や風俗店というのが存在するものか、どうか。いてくれればおっしゃる通り、これが本当に住民の平穏な生活への志向を守るためのものなのか、それに名を借りた言論弾圧なのかがはっきりするわけですけどね。

横から口出して済みませんが、

>ホントに貧乏なアパートの住民は大家と毎日顔つき合わせてるから、
というBarさんの主張の方が現実に合っているよね。
>有産者であるところの大家が
って
大家のすべてが大資本家みたいな麗しい誤解に大爆笑。
世間には借地にアパート建てて、本人もそこに住んで、経年でボロくなり、安い家賃に抑えざるをえない、当然、家主も店子も貧乏人なんてパターンはいくらでもあるよ。
>因縁付けとしても随分とみっともない
Barさんとやらと貴方との経緯については何も知らないけど、これは、単にあなたの無知というか世間知らず。
世間知らずが罪だとは申しませんが、法律やる人間には、ある程度、世間てものを知ってて欲しいよね。 
それとも、法律と世間って、まるで断絶した縁もゆかりも無いものなのかい?世間あっての法律、法律あっての世間じゃないの。

本文での、被告の方たちが判決を夢見がちに受け取っているというような感想文はそう見当はずれではない、というか、私もそう思ってニュースを呼んだクチだけど、
コメント欄の遣り取りを見ていると、どうも、おおやさんの自分の主義主張を無理やり通す為の小賢しいやり方が見苦しくて…。

(前半)>個別ポストに投函してくるのは共産党だけという声も、いやピザ屋や自民党も投函してくるという意見もあるようです。
(後半)>ただ、住民に注意されても表現の自由などを理由に抵抗するピザ屋や風俗店というのが存在するものか、どうか。

1何故、前半は「ピザ屋や自民党」なのに、後半では「ピザ屋や風俗店」なのか?
仮に、自民や公明がビラ投函を住民に注意されたら、大人しく止すんでしょうかね。

ピザ屋や風俗店がビラを住民に注意されたらどうするか。
その場は取り敢えず立ち去って、その後も平然と繰り返すという手法をとるんじゃないの。
ピザ屋や風俗店が表現の自由などを理由に抵抗したりしないのは、費用対効果を考えたら馬鹿馬鹿しいからってだけ。
お商売でやってるんだから、費用対効果だけで何をどうするか決めるのが普通であって、政治的な主張やら社会に訴えたい何かの為にビラ配るのと反応が全然違うの当たり前じゃない。

それから、誤解かもしれないが、
>個別ポストに投函してくるのは共産党だけという声も
って、なんか、稚拙な印象操作のように思えるんだけど。
ついでに言えば、
私は自民、公明、オウムなどなどのビラを個別ポストに投函された経験あるよ。あと、発行者がどういう団体なのかまったく名乗っていない、やたら豪華な(紙質、印刷が)共産党中傷ビラもね。しかし、多分、偶々住んでいる地域かなんかの関係なのかもしれないが、共産、社民、民主のビラは投函された覚えがないのね。

>〈部外者禁止〉でもダメというのは本当だとすればひどい
>住人(および住人に個別的・明示的に招かれた人間)以外は「部外者」だと思いますね。

そう思うのは勝手だけど、その部外者全部に住居侵入適用せよってのか?あまりに過激じゃないかえ(笑)。
過激な住居侵入犯お縄だ論者としては、喩えば、ホテルの泊り客でもないのに、ロビーで待ち合わせとかしてる奴はどうなるのか訊いてみたいね。

それから、これはどうでもいい事だけど
>〈オートロックもないのに美観とか言うな〉
オートロック無くても美観に拘った(高級とまではいかんが)マンションなんてのも世の中にゃ、まま、あるよ。
主に、子供のいる家族向けとかでね、環境が良い地域でね、共用の庭を広くとって、「開放感と安心感兼ね備えました。安全な地域で、地域に開かれた生活でお子様をのびのびと」みたいなウリのマンション。
オートロックの城に閉じこもってないで、もうちょっと、自分を開いてみた方がいいんじゃないの?めがねの色も変わるかもよ。

>たなこ さん
ども、いやBar氏のような匿名の人と過去の因縁も何もない、私は単にろくに勉強もしてないくせにむやみと偉そうな人間が大嫌いなだけのことです(なお上記「匿名」は実名・筆名を合わせた「顕名」の対立概念として使っています)。
で、たなこ さんもその気配が漂ってますが、書いてるうちに頭に血がのぼりましたかね? 関連して調べものをしたらちょいと面白いデータも出てきたのでご返事は別のエントリに起こしますから、しばらくお待ちくださいな。

調べたらピンクチラシ配布での逮捕事例は結構あるみたいですね。自治体によっては配布目的所持もダメなところも。これはこれでやりすぎなような。

>す さん
ども。ピンクチラシは条例違反じゃねえですか。刑法犯の住居侵入をとられた例は聞いたことがないような気がしますが、報道されていないだけかもしれません。
過去に問題になった例としては電話ボックスに盛大に貼られるというのがあって、しかしそれを犯罪化しようとしても現行犯で押さえるのがすごく難しい。配布目的所持が規制された背景にはそういうのもあったかと思います。

ピンクチラシ×住居侵入×逮捕でぐぐると出てきます。
立川の裁判でも検察側が、政治ビラだけを検挙してるわけじゃないという例として示しているようです。

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