ぼくもわたしもリバタリアン

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大屋雄裕「リバタリアニズムにおける『自由』?」(森村進(編)『リバタリアニズム読本』(勁草書房 2005)合評会コメント) 東京法哲学研究会。というわけで、コメンテータ3人のうちの1人として報告してまいりました。この本自体については3者の見方がほぼ一致していて、良い本である。那須さん(摂南大学)の表現を借りれば「2冊目に読む本として」、ということになるでしょう。リバタリアニズムの広がりや内部の意見の差異を感じ取るには良いけど、これだけだと中心的主張は見えないかもしれない(私見)。1冊目としては例えば森村進『自由はどこまで可能か:リバタリアニズム入門』(講談社現代新書 2001)なんかがいいんじゃないかと、このあたりも概ねコンセンサスなんじゃないかな。

さて、では私がどういうコメントをしたかというと概ね3点(以下、当事者である私の主観が混入している可能性についてはご留意いただきたい)。


  1. でも結局「リバタリアニズム」という固有の思想があるのかどうかよくわからない。
  2. それが最大化すると称している「自由」が積極的自由なのか消極的自由なのかもはっきりしない。
  3. さらに言うとその「自由」の基盤自体が危機にさらされるという現状に対して「自由の最大化」という処方箋は意味がない。

(3)から行くと『思想』論文の話で「アーキテクチャによる支配」による物理的空間のコントロールを通じた我々の意識しない制約が問題になっているのに、そのあとの「自由」の問題を論じても意味がない。あるいは、それが有意味だと考えるのは「自己決定できる自律的な個人」の存在を前提してるからじゃないのかと、そういう話。後者については、国家をなくせば市場によって自律的な分配が達成されるってそんな市場のある地域は限られているでしょう?(モンゴルとかラオスとか)という話もあって、まあ因縁と言えば因縁なのだが、モンゴルの草原の例(耕作すると土地が荒れてしまうので、所有権を設定せずに皆で適当に移動しながら使うのがもっとも効率的)はロック的な労働所有説に対する反例として面白いのではないかと思うがどうでしょう。まあ森村先生はアーキテクチャ的な権力についてお考えになったことがなさそうであり、この論点については満足な応答がなかった(と思う)のでそこまでの話。(2)にははっきりと私の場合は消極的自由のみ(要旨)という応答があったのだが、逆に(森村流)リバタリアニズムの限界が見えたのではないかと思われる。

(1)についてはすごい応答で、出てくる結果がだいたい同じなら「リバタリアニズム」と呼んでいいんじゃないか(要旨)という話であった。エントリのタイトルはこれに由来していて、こうなると(a)リベラリストを自認しているが再分配の範囲や国家の機能について制限的に考える私自身や(b)「功利主義リベラリズム」から政府の介入範囲を抑制するA君(そのテーマで600枚を超える修論を書いた莫迦(誉め言葉))もリバタリアンになっちゃうんじゃないか、知らなかったねえとそのA君とあとで話しあったことである。これには逆の話もあって、すると政府の規模については制限的だが再分配を非常に大きく認める「左翼リバタリアニズム」というのはリバタリアニズムに入るのかという問題。正直ようわからん。あと森村先生の場合は自分の理論に自己所有権論による基礎付け帰結主義による基礎付けを両方使うのだが、両者の結論が矛盾したときはどうするんですか?というもっともな疑問(伊藤滋夫先生)に対してははっきりとは決められないことを率直に認めるべき(要旨)という回答でいやその。まあこの問題については1月の東京法哲学研究会における森村先生のご報告に対し質疑で私がツッコんだところであって、そのときのご回答からもう追及する気をなくしている。

結論的に言うと、「森村リバタリアニズム」についてはもうある種の閉ざされたパッケージで、対象がはっきりしているので論じやすいのだが改善とか進化はなさそうという印象であり(別にそれが一概に悪いと言いたいわけではない)、一方リバタリアニズム一般については例えばそれが可能になる社会的文脈に関する議論も行なわれているそうでちゃんと変化していくのだろうが、それだけにとらえどころがないという状態も続きそうだと、そういう感じであった。まる。(3月26日に書きました。)

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