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四川

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それは野暮じゃなくて馬鹿っつうんだよ(挨拶)。かつて良いと思っていた人が衰えていくのを見るのはいやなものですが、たまたま深夜にテレビを見ていたらそれがダブルで襲ってきた件について。まあ小林信彦氏は結構率直に自らの立場を示していたというか、とにかく自らの経験からも戦争は悲惨なのであって、それを引き起こす可能性のある揉め事を避けることが最善、という意見なのだろう。これはこれでわかる。もちろん問題は、ではこちらが譲歩すれば揉め事は回避できるのか、それがさらに大きな揉め事を引き起こす原因にならないのかという点にある。まあつまり、いつもの善意の贈与の問題ですな。これに対し太田光氏(爆笑問題)は、まあ第一に自分語りしすぎでトーク番組のホストに値していないという問題があるわけだが、小林氏の見方に賛意を示してテロ対策が世界戦争に転化していくというような可能性について熱弁を振っていた。「正義だと思っていたものが戦争につながっていく危険性があるのだから、その正義を疑わなくてはならない」とか言うんだけどさ、なんでこういう人って疑わなければならないということ自体は疑わないのかね。もちろん疑った上である正義をあえて選択しているという可能性もあるわけだが、それも無視してしまう太田氏の「正論」ってのは、小林氏の「とにかく私は恐い」という体験論と比較しても極めて空疎なものに過ぎない。で、嗤うべきなのは太田氏がそういう熱弁を振うことを野暮と言っていたことで、つまりもっと能力があれば芸人として作品にできるんだが自分にはまだそれができない、という意味なのだが、じゃあその「野暮」はちゃんとできているつもりなのか。竹島問題についても聞きかじりのいい加減な話を披露した小林氏を止められていないわけで、要は前提知識も理論知もないのである。芸人だからそれがないのは当然だと言う人は問題の所在がわかっていない。野暮には野暮の作法も常道もある。野暮を承知で踏み込むのなら、その作法を完璧に踏まえてこその芸だろう。なめるな芸人。そうきちんと言ってやる野暮天がいないことが、彼の芸を腐らせている。というわけで番組中一番まともな発言は真鍋かをり氏の「でも今の若者はどう言ったって戦争になんか行くわけがない」(要旨)というものであった。

挨拶ネタが長くなって不本意だが本来は楽しいネタを書く予定だったのである。「四川」という、名古屋港の方にあるちと有名な中華料理屋があって、先日ならば言ってみるべしと赴いたところ見事敗退を喫し、本日再戦でようやく成功したとまあそういう話。

負けたというのは別に休みだったとかそういうわけではなく、無事入店して名物という麻婆豆腐を頼もうとしたところで本格派・辛口という「陳麻婆豆腐」が目に入り、それを頼んでしまった点にあった。「小」を頼んだのに皿一杯に盛られてきたこの料理、まず黒い。辣油の赤い透明な層の下に、豆腐混じりの濃褐色の肉味噌が盛られているが、点々と散らばる黒い粒は察するに中華山椒である。おそるおそる小皿に取って口に含んだところ、甘く濃厚な旨みがまず口に広がり、油断した瞬間にどすんと辛味が襲ってきた。主犯は山椒であり、辣油も相当量が明らかに使われているはずなのだがほとんど気にならない(おそらく口の周囲がひりひりするのは辣油の作用)。それほど辛い。こないだのインデアンカレーといい本当に辛いものというのは何故こう人を一瞬油断させるのかと思うわけだが、ともあれ旨いには間違いなく旨いので食べ進むものの、取り皿3杯ほど食べたところで胃の中に塊の存在が感じ取られ、明らかに身体が「もう食べてくれるな」と言っているのがわかる。もちろん汗だくであって他の料理の味などわからない。この時点でまだ皿には半分程度が残っていたのだがあえなくギブアップとなった。店のおばちゃんが手際よく「お持ち帰りにする?」と聞いてきた点を鑑みるにこの展開は予測されていたものと考えられる。先に言ってくれ、おばちゃん

後に同行者が調べたところによると、なんでもこの「陳麻婆豆腐」、通常の「麻婆豆腐」に対して辛さ10倍だそうである。どうやって調べたのかは知らない。とにかく調査が不足していたという戦略ミス、合わせるに白飯ではなく麺類を選択してしまったという戦術上のミスが重なり、あえなく登頂失敗となったわけである。そこで我々は今回、前回の反省を生かして (1)目標は通常の「麻婆豆腐」にする、(2)白飯と合わせて辛味を緩和しつつ食べる、(3)目標以外の料理については辛いものを避ける、という三つの方針を立て、再登頂に挑戦した次第である。相手は四川なので渡河の方がいいかなと一瞬思ったが、やっぱり四川なので山でいいような気がする。話を続ける。

最終的には前述した通り登頂に成功したが、今回も微妙な戦術ミスは発生した。前菜に頼んだ棒々鶏が辛かったのである。どういうことだ。もちろん胡麻の旨味はしっかりしているのだが、ソースが赤い。明らかに唐辛子である。計算違いに慌てつつも小海老とカシューナッツの炒めもので気を取り直し、目標・麻婆豆腐に挑む。辛さ1/10という計算になるはずだが、おおや式辛さ判定法(どれだけ汗かくか)によれば単独で概ねインデアンカレーと同等である。あちらは飯とまぜてこの程度、こちらは白飯に逃げられる状態の辛さなので単独ではおそらくインデアンが勝つが、じゃあ「陳麻婆豆腐」は何なのかいったい。危険物か。ちなみに、食べられる範囲でしっかり美味しいので文句は別にないが、旨味自体は「陳麻婆豆腐」に比べて相当に薄い。どうも辛さ10倍の一部は、多量の豆板醤にあるのではないかと思われる。

炒め物は上出来だったので次回は辛いもの抜きで来ようと思っているのだが、どうやら あんかけスパゲッティを堪能したらしい よこはま氏には次回来名の際にぜひ「陳麻婆豆腐」登頂をお薦めしたい。なおもう一つこの店の非常に愉快なこととして、それだけまともな料理を食べさせるにも関わらず外見がどう見てもそのへんのラーメン屋だという点が挙げられる。お値段もラーメン屋に毛が生えた程度なので実にすばらしい。雰囲気にまどわされてうっかり通り過ぎないよう注意が必要である。

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「おおやにき」の中華料理屋四川の紹介記事で、おおや氏が「陳麻婆豆腐」に完敗した旨記されており、そこで私は光栄にも、おおや氏の果たせなかった志を遂げる敵討ち役として指名し... 続きを読む

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よこはま さんのコメント (2005年12月 1日 16:14):

高校合唱部のイニシエーションで、(確か国立駅南口にあった)ボルツの30倍カレーを食べて以来、ちょっとやそっとの辛さでは驚かない私ですが、おおや氏が完敗した辛さどれほどのものか気になります。是非挑戦してみたいと思います。ところで、「四川」の陳麻婆豆腐は、「四川飯店」や「中国名菜陳麻婆豆腐」で出しているものと同じですかね(四川飯店のファンページhttp://szechwan.jp/には、名古屋港の四川は出ていなかった)。

おおや さんのコメント (2005年12月 2日 13:29):

>よこはまさん
「四川」の主人は「四川飯店で修行した」そうです。店の作りや雰囲気も全然違うので、正規の系列ではないでしょう。「陳麻婆豆腐」については一応写真を見つけましたが(中国四川料理の会 http://asiandishes.hp.infoseek.co.jp/report/kai025.html)、私見によればこの写真は露出が合っていないと思います。こんなおとなしい色じゃなかったですって。
四川飯店で食べたことがないので料理自体の比較はできないです。すいません。名古屋駅のszechwan restaurant陳で麻婆豆腐を食べたことはあるのですが、私が作った方がましな代物が出てきましたので比較対象としては不適切かと。

おおや さんのコメント (2005年12月 2日 13:32):

補足。見た目の感じで言うと、ファンページの陳健一麻婆豆腐店の紹介にある、「正宗麻婆豆腐」に近いようです。

よこはま さんのコメント (2005年12月 3日 08:29):

いろいろお教えいただき有難うございました。将来の訪名の際の挑戦に備え、とりあえず「蒙古タンメン 中本」の北極ラーメン(http://nakamoto.aez.jp/の「メニュー」欄参照)で鍛錬を積むことにします。

匿名希望@修行中 さんのコメント (2005年12月 4日 09:53):

http://gourmet.yahoo.co.jp/gourmet/restaurant/Tokai/Aichi/guide/0301/M0023000858.html

こちらで御座いますね。
時間があれば今度行ってみます。
いつもながらおおや先生の名古屋食事情への
偏愛と申しますか探究心の高さに感服いたします。

匿名希望@修行中 さんのコメント (2005年12月 4日 16:19):

食欲を満たしたところで今回のENTRYを冷静に分析しますと、
結論は真鍋かをり萌え~、
ということでよろしいでしょうか。

匿名希望@食事後 さんのコメント (2005年12月 4日 16:22):

食欲を満たしたところで今回のENTRYを冷静に分析しますと、
結論は真鍋かをり萌え~、
ということでよろしいでしょうか。

おおや さんのコメント (2005年12月 6日 07:59):

>匿名希望さん
私はキャラ萌えしない人なので違います。当初は「何も知らない女の子」役であるはずの真鍋氏に一番本質的な発言されるっておまえらどうよ、と書こうかと思ったのですが、そもそもそういう役割期待を前提にすること自体が差別的というか失礼というかだなと思ったのでやめました。というかあの番組はもしかして「自分では「無知な女の子」に説教しているつもりなんだけど端から見ているとその女の子より無知なオヤヂに対して表向きは素直に感心して見せている女の子の手玉の取り具合とか腹の黒さ(誉め言葉)」を鑑賞するものだったのでしょうか。さすがにエンタテインメント史というか、笑いの歴史については太田氏の方がきっとよく知っているであろうと思っているのですが、しかし我々が見ているものは編集の結果でしかない以上、その段階で「無知な女の子」の図式が作り出されていたり、真鍋氏があらかじめそのような役割期待を承知して演じている可能性もあるよなとは思うわけですな。
ところで私は普段ほとんど自炊なのであまり名古屋食文化の探求に熱心なわけではないですよ。自分から食べ歩きに出たりもしないので、知っている店はこのくらいというだけです。はい。

TK さんのコメント (2005年12月 6日 23:50):

本文には全く関係ないのですが、
今回の構造設計偽装問題の解決ですが、実定法学者の方々にお声が掛からないというのも問題ですが(実定法学者にとっての問題ですが)、法哲学者の方々にもお声が掛からない(し、発言もされていない?)のも問題と思うのですが、どうなんでしょうか?
こういう問題こそが、職業法律家の方々の飯の種だと思うのですが、こういう大問題が、法廷ではなく、行政の場で、行政の立場で解決される、というのを傍観していて、弁護士過剰時代に職業法律家は生き残れるのでしょうか?

mamodolian さんのコメント (2005年12月 7日 10:03):

「むぼーび」の話ともリンクしますが、やっぱり「とりあえず、NO」と言っとけば喜ぶ人が世間には半数はいるんでしょうな。
「正義を行おうとすれば世界の半分を敵にまわす」ってのはしみじみ真実だと思いますよ。(「正義」の定義はおいとくとして)

あと太田氏は「理解も共感も出来ない他者(byウチダタツル)」に対する恐怖が強いんだろうな、ってのはTVブロスの連載からでも(また薄っぺらいンだ、これまた)伺えて、なかなかに興味深いことですよ。

おおや さんのコメント (2005年12月 9日 15:56):

>TKさん
ども。ん~、ミネルヴァのフクロウは夕暮れに飛ぶものですし、事実関係が明らかにならないあいだにうかうかと発言するというのも気の利いたことではないような。
法廷による解決には相当の時間が必要ですし、それまで(たとえば)問題のマンション群が現状保存されたりするとたまったものではないわけで、とりあえずこの事態の緊急対処というあたりまでは行政に委ねるしかない。被害拡大防止の後のナシの付け方については法廷で職業法曹が、今後の制度のあり方に向けては審議会だの研究会だので法学者が参加していくことになると思いますよ。法哲学者が呼ばれるかどうかは知りませんが、私に原子力安全分野で声がかかったりするわけですから、捨てたもんでもないんじゃないですかね。

>mamodolianさん
ども。まあそういうことであるので、その種の「自分を永遠の外部と同一化することによって制度への無制限の批判可能性を享受しつつ制度の改善・運用にコミットしない姿勢」の源泉としての「不可視の基礎付け主義」てえのを「規則とその意味」で強く批判したわけなんですが。あの論点は結局のところ笠井潔『テロルの現象学』の焼き直しなんですが、わかってもらえたんかな読者の人には。

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