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雑感

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引越に疲れたので東京に逃亡しています。新幹線に乗るのに名古屋駅での乗り換え時間が5分しかなく、東山線→新幹線なのでコンコースを東から西まで全部移動する必要があって大ピンチ(参考: 名古屋駅構内図)。なぜそういう事態に至ったかというときっと名城線が10分に1本しかないのが悪いのだと思いますが(一本乗り逃がしたらピンチに直面する時間まで研究室にいた自分の責任からは目をそらす)、とりあえず地下鉄ホームから地上まで4階分くらいの階段を駆け上がり、コンコースの半分くらい、3分ほど走った時点で息切れが激しくなりギブアップ。以降は歩いてなんとか間に合いましたが、体力の衰えを実感する今日この頃であります。まあ2月は寝込んでるか出張してるかだったから、というのもあるわけですが。

乗り込んでからも15分くらいげはげはしていて折角のグリーン車なのに豪勢な気分が台無しですわ、というか周りのお客さんすいません。まあ言うても「ぷらっとこだま」なので普通に指定を買って のぞみ に乗るのと値段変わんないわけですが(普通の切符と違って乗り遅れるとカミクズになってしまうので急ぐ必要があったわけですな)。久しぶりに予定の読める出張だし事前にJRツアーズに寄る機会があったので「ぷらっと」を予約しに行ったわけですが、すでに満席で空きがあるのは希望の3時間後と言われた瞬間に「じゃあグリーンで」と言い放つプチブルな私。いや疲れていたものですから。ちなみに名古屋始発こだま のグリーン車などガラガラであり、「周りのお客さん」どころか9号車全体で2人(私含む)しか乗ってなかったわけではあります。さて。

  • 人権擁護法案が大モメになっているわけで、まあ法案自体については中身を見ていないし、今までの体制についても基本的に無知を決め込んでいたので言及を避ける。批判に対する篤実な反論はbewaad氏がやっておられるので、そちらを参照されたい。具体的な法案を抜きにして言うと、私としてはこの種の立法に消極的賛成である。つまり言論・表現の自由というのが大原則として尊重されるべきであり、しかも「言論には言論で」という対抗言論の理論の射程が発言能力の拡大によって「一般人」(従来的なセンスで)まで届こうとしている状況において、本筋はやはり「個人」の強化による対抗言論理論の徹底にあると思うわけだが、しかしまあ現実に発言力の圧倒的な差というのは存在するので、それがある場合に・それを是正する範囲で言論の自由の制約もやむなしであるか、と思っている(*1)。
  • ところで現在の大モメを見ていると、普段の意味で左側と右側に対立している人々が両方とも法案に批判を向けていたりするのが面白い。で、両方とも「相手が悪用・濫用するに違いない」と言っている。まあつまり政治闘争があっても一定のルールは守られるべきだ・守られるだろうという信頼を相互に持っていないのだし、問題とされるhate speechの範囲について社会的合意が存在していないということなのだろう。この点、「人権」概念の中身についてきちんと議論することもなしにとにかく「人権侵害」「差別」という批判を振り回してきたことの帰結という冷たい見方もできそうである。アメリカにせよ西欧にせよ、もちろんグレーゾーンはあるがダメなhate speechの対象はわりとはっきりしているような気もするので、それとの差が気になるところ。
  • その関係で最近話題になっていたものとして、ハーバード大学総長のローレンス・サマーズ氏による発言というのがある。詳細はむなぐるま氏のエントリに詳しいが、自然科学の優秀な研究者における女性の割合が低いことについて、(1) 女性が厳しい仕事を求めない、(2) 生物学的その他の理由で女性の適性が低い、(3) 役割分担意識や就職差別などの社会的要因という三つの仮説を挙げた上で、この順番で重要性が高いのではないかという私見を述べたもの。アメリカの雰囲気というのはわからないが、学部教授会で不信任案が可決されるなど騒動になっているらしい(*2)。
  • で、これに米沢富美子氏が反論したという話を朝日新聞が嬉しそうに夕刊に書いていた。別の記事だけどリンク。2005年度のロレアル・ユネスコ女性科学賞を受賞されたそうなのだが、その受賞式典で「女の直感と辛抱強さは本来、科学者に向いている」と発言されたそうな。
  • この発言について、ご本人を批判する気は、あまりない。多分ご本人の考えの率直な表現なのだろうし、米沢氏は物理学者であってフェミニズムを含む社会思想とかhate speechとかの専門家でも何でもないからである。しかしこれをもってサマーズ発言に対する「反論」と扱うというのは、こう率直に言えば、あほかという話である。
  • というのはこの発言、女性には直感と辛抱強さという特性があるということを科学者に向いているという主張の根拠にしているのだから、サマーズ氏が挙げた三つの仮説の(2)同様、男女のあいだに本質的な差異が存在するということを前提してしまっているのである。社会的な要因より生物学的な要因を優先しているという点では、従って、サマーズ氏となんら変わらない。違いは単に、その特性が自然科学者に向いているのか向いていないのかという点にあり、この点については「仮に選抜過程その他が公正であることを前提すれば」(これが疑問だというのが仮説(3)の主張なのだが)結果によって仮説の成否は決定可能だろう。つまり「適性が向いていないから数が少ない」という仮説と「適性があるから数が少ない」という仮説のどちらが合理的かという問題に帰着してしまう。答は、まあ通常の理性のある人には、明らかだわな。
  • だからそこに議論を持ち込んではいけなくて、まあ確かに男女間に本質的な差異がないという仮説も未検証、というか検証不能なのだが、とにかく目の前に(3)の点での不平等があるのだから仮説(2)を検証できる条件がないですよと主張するというのがフェミニズムの取り得る戦略であると思うのだが、米沢氏の「反論」はこの点を真っ向踏み破ってしまう。で、それをどうも「反論」だからという理由だけで肯定的に評価する人というのは人権とか差別とかいう問題について何を理解しておられるつもりなのかね、と思うわけである。マスコミからしてこんなだから人権擁護法案がモメるんだよな、とまあそういうお話。
  • ちなみに女性研究者の問題、私も以前に学内某委員会で事情を伺ったことがあるのだが、日本でも同様の現象があり、簡単には理由がわからない。だから可能な原因を並べてみて、とりあえず「仮説」ないし「私見」と注記した上で仮説を立てて議論するというのは科学者として当然の手続きで、これが批判されるというのはやはり言論の自由の危機だろうなとは思う。特に男女間の問題では肉体的には相当の本質的な差異があることは事実であって(「男」「女」というカテゴリーをまず設定するならばという注記は必要だろうが)、問題はそのような差異と研究者としての適性に関係があるのかどうかという点にあるのだが、関連性があるかもしれないと考えること自体は不合理ではないと考える。
  • というのは、(少なくとも日本の場合は)分野による違いが大きいので「自然科学」とか一括りにはできないのだが、その中には研究にあたって「体力」(筋力だけではなく、寝ないで実験を続けるとかいう持久力も含む)が必要な分野というのが、明確にある。その分野で女性研究者が少ないとしたら、その理由は肉体的能力ではないかと考えても不合理ではないだろう(もちろん、それだけで説明がつくかどうかは別問題だが)。そうなるとこれは、無根拠ないしまったく非合理的な批判としてのhate speechというものではなくなってしまうのであり、だとすれば言論の自由の範疇として守られるべきである。その結論が気にいらないというのなら(そのような価値観を私はまったく認めるが)、反証を示すなりより説得力のある仮説を示すという形で攻撃すれば良いのであり、発言自体を封殺するというような手段によるべきではない。
  • ところで「簡単には理由がわからない」と言ったのは、実験系なら体力的な問題が考えられるし、土木や林業みたいに泥くさい(ごめんなさい)分野なら価値観の社会的な刷り込みみたいな理由が想定できるのだが、数学というどちらにも該当しなさそうな分野の男女格差が非常に大きいという、まあこれは事実があるからである。お話を聞いた先生の印象(正確な統計とかではない)ということではあるが、いわゆる有名なとか、重要業績を挙げた数学者のうち女性の占める割合は1%以下ではないかということであった。なんでなんだろう、ということで一同頭を抱えた次第である(まあロールモデルの不在という理由は考えられるが、それだけでこんなに大きな差が出るものか)。なかなか難しくて、私の中でも明確な結論は出ていないし、まあ今のところそれを急ぐ必要もないかな、とは思っている。
  • ところで調べたら地下鉄東山線・新幹線の標準乗り換え時間は15分だって(JR時刻表による)。よく間に合ったな……今度から気をつけよう。
(*1) この点、問題は違うが基本的な議論について、参照、大屋「プライバシと意思」。
(*2) なおリンク先のcnn.comは「ハーバード大教授会」としか書いていないが、他紙報道およびハーバード大学のウェブサイトから見るに「人文科学部」Faculty of Arts and Sciencesの、かつ教授Professorのみから構成される会議で採決された模様。ハーバード全体に10ある教員集団(学部・大学院)の一つに過ぎない……と書くとたいしたことないようだが、多分これ日本でいう学部教育と研究者養成のほとんどを担当している部局で、構成員も全体で900人以上と巨大。他の組織は法科大学院(Law School)やビジネススクールなどの(日本でいう)専門職大学院が中心で、構成員も最小で50人程度、最大で200人程度。全体のほぼ半数を占める教員集団の意思表示と考えると大騒動ですな。

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よこはま さんのコメント (2005年3月21日 11:32):

ロールモデルの不足にも重なりうるでしょうが、岩井克人の定番のネタなのですが、ケインズによる新古典派経済学批判と同型の議論を彼に先駆けて行ったポーランドのカレツキーは、ケインズに招かれてイギリスに行ってショックを受けたが、そのうちやはり経済学の中心にいたケインズだからこそその批判が流通力を有しえたのだと考えて心の平静を取り戻した、ということです(岩井克人『資本主義を語る』(講談社)302-303頁)。やはり、言うまでもなく、とりわけ学会に対する重要な貢献をなしうるか、またそう見做されるかどうかにおいては、知のヘゲモニーは存在するのでしょう。
しかしだからといって、ジェンダー体制批判やポストコロニアリズムなどを振り回していれば(構造の解明の上でも政治的パフォーマンスの上でも)どうにかなるとは、少なくとも私は思いませんが。

おおや さんのコメント (2005年3月21日 18:52):

>よこはま さん
ヘゲモニーの可能性は十分考慮すべきだと思うのですが、しかしいまどきの理系だと論文は国際誌に書きますし(つまり学会は分断されていない)、referee制で筆者の属性もマスクされますから、要因としてそんなに大きいかなとは思うわけです。

小僧 さんのコメント (2005年3月23日 01:50):

理系の学問の場合それを専攻とするまでにさまざまなジェンダーバイアスが掛かるでしょうから
心理学等と違い専攻開始時点でかなりの人数差があるのではないでしょうか.

そうすると修行時代に何時でも学問上の議論を出来るような気の置ける友人は女性の方が少ないでしょうし
育児で忙しいから計算時間やら考える時間が少ないと言う話もどこかの Web site で見た覚えがあります.
現状から男女の有意な差が減る方向へと知らず知らずのうちに変わるかは疑問ではあります.

おおや さんのコメント (2005年3月24日 00:55):

>小僧さん
人数差の問題は確実にあると思いますね。で、ロールモデルの問題や(分野によっては)体力的な適性の問題もある。複合的な原因があるのは間違いないと思うのですが、そこで我々に何ができるかというのも問題なのです。例えば入試でアファーマティブアクションをやったら効果が見込めるのかとか、ロールモデルの提示はもっと積極的にできないかとか。私個人としては放っておけば何とかなるとも、現状で十分で改善の必要はないとも思っていないのですが、うかつにいじれば副作用が確実に出るというあたりが悩ましい。まあ法学部は(少なくとも私のところは)男女が適当に交ざっているので、完全な男社会だったり女社会だったりする場合に生じるような問題は少ないのかなと思っています。これが妥当な割合かはわかりませんが、それはあまり検証のしようがないですからねえ。
ゆとり教育問題なんかもそうですが、生得の差異があるかどうかは別にしてずっと18年間くらい積み重ねちゃった問題を我々のところだけで解決しろといわれても困るんだよな、っつう話もあるわけですけどね。ええ。

小僧 さんのコメント (2005年3月25日 00:05):

基本的には私もピンカーの NHK books にも載っているように空間把握能力等には男性と女性との差はあるのだとは思いますが
素朴な扱いだと「本能」にも「フェミおばちゃんの物言い」にも落っこちてしまうので不用意には語れない問題と認識しています.

人間の知的能力の基礎で DNA 暗号に乗っかっているのは何かなんて当分分からないでしょう
(イメージを作りだす回路の初期条件かも知れないし回路が発展して行く方向性かも知れないし...)

どちらにしろ affirmative action をする前にうぶなガキどもにどうやって女性をうまく扱うか教える方が先のような気もしないでもないです
いまは違うのかも知れないですが人数比の他にもある意味無邪気な好奇の目にさらされるのは女性の方もかわいそうだし
#人の事は言えな(げふんげふん

二伸
育児でたいへんというのは貴大学の理学部広報 No.6 の対談のなかで多元の方も述べられているようですね.

おおや@田町駅構内 さんのコメント (2005年3月29日 17:34):

>小僧さん
基本的におっしゃる通りだと思いますな。そもそも男性対女性と捉えて平均値を比較するとなんか違うのかもしれませんが、個体差がとても大きいでしょうし。だからタブー化せずに、きっちりと留保を言語化した上で議論するべきだと思っています。
# 私自身はどうも3D空間の把握能力が乏しいようなので飛行機の操縦には向いていない模様。
## それ以前の問題は無視。
往々にして「女性集団の中の男性の扱われ方」の問題が注目されないのも問題だな、と思ったりします。日本では助産婦さんはまだ女性独占だったと思いますが、そこらへんどうよ、と。

ちなみに他学部の広報誌なんて読みゃしないんですぞ。自分とこのだって真面目に読んでや*** DELETED for the Security Reasons ***

たにぐち さんのコメント (2005年3月29日 21:33):

てゆうか東京におるのですか。

おおや@多摩 さんのコメント (2005年3月29日 22:31):

>たにぐち さん
午後に研究会と打ち合わせがあったので上京していました。明日には名古屋に戻ります(履修登録の最終日なので)。

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