腕前(3・完)

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なんかやくたいもない愚痴の繰り返しだけなんですけど「二日酔い気分」じゃなくって酒入ってるだけなんじゃねえすか(挨拶)。ええと町山氏をせっかく褒めたところ むなぐるま氏のところに書き込まれたコメントによるとご本人は調査データに基づいて議論しているつもりだったらしく、え〜

なんかデータが大事だと言ってみたり実際に接することが大事だと言ってみたり、批判してきた相手を「他人の尻馬に乗っかって自分を利口に見せようとする卑小で人間性」(原文ママ)と人格攻撃してみたり、ええっと、本当にどうしてこうなっちゃったんだろう。いや昔からご本人を知っている方なら「変わってやしねえよ」とかいう話なのかもしれないけど。なんかブログに付けられたコメントに怒って「モウコネエヨ! ウワアンヽ(`д´ )ノ ヽ(`Д´)ノ ゝ( `д´)/」(意訳)とか騒いで切込隊長氏にネタにされてるしな

補足的論点(1)。カール・ローブ氏が「勝ったのは福音派のおかげ」みたいな発言をして物議をかもしているが、統計データなどからすでに「そうか〜?」という分析も出ている通り、慎重に検討した方が良い話。というかローブ氏だって政治業界の一員なので、発言には常に政治的な意図が含まれていると考えないと。

そもそも一般的に、ある候補者を支持する理由には共有する価値を信じているなどの精神的なものと、利害関係など実利的なものがあり得るだろう。後者を満足させ次回の投票に向けてつなぎとめておくためには実際の利益を提供する必要がある。一方、前者に対しては「リップサービス」でも十分である、かもしれない。「目標はこうだが障害も大きく、実現できていない」という言葉は実利を求める人々を失望させるだろうが、精神的な支持者はむしろ盛り上がるかもしれない。その「障害」が彼らの敵だということになっているものであれば、なおさら。逆にたとえば精神的な支持者にのみ感謝が捧げられたとしても、そりゃ実利的な支持者はいい気持はしないかもしれないが、しかし彼らの利益が十分に保証されていれば投票行動を変化させることはないだろう。福音派がどのくらい決定的な勝因になったかはともかく、彼らがブッシュ氏の支持基盤の重要な一部であることは疑いない。ローブ氏の発言は彼らに対する、もっとも安価な報酬だった、という可能性だってある。そうなのかそうではないのかは、第二期ブッシュ政権の動向を実際に見てみないとわからないことだろう。もっとも仮にブッシュ政権が福音派の意向をあまり現実の政策には反映させなかったりすると町山氏のような人々は「ほら我々が批判したおかげだ」と言いそうなのだが。

(これは以前に小泉総理の対北朝鮮合意について指摘したのと基本的には同じこと。結局食糧支援はほとんどリップサービスであって真面目に実施されていない。あのとき「小泉は北朝鮮に食糧を差し出して妥協した」とか言ってた人々は何だったのか。)

補足的論点(2)。「見たくなければ見なければ良い」と言えるのはinformed consentがきちんと取れているときのみである。表現の自由もまた他の人権との調整には服する。正しい意見のためならばいかなる手段も許されると言うなら、それはテロリストの主張である(念のために言えば町山氏自身がこんな主張をしたわけではない)。民主主義は手段の正しさのみが主張の正しさを裏付けるシステムである(手段が正しいからといって勝てるわけではないが)。結果が自分の信念と一致しなかったからと言って不正の手段に訴えようとするものは民主政の枠外へ放逐されることになる。「テロリストに人権は保障されない」というのもアップルシードでしたね。

補足的論点(3)。中絶やゲイは宗教倫理的な問題であって選挙の争点にしてはならないか。内心において、あるいは私生活においてゲイであるかどうかということならば、Yes。だが同性間婚姻を認めるかどうかということを意味しているのなら、No。いかなる形の関係に法的保護を与えるかというのは公法的問題であり、公共的サービスという資源をいかに配分すべきかという問題であるから、政治上の争点になる。「どのような関係だろうが私的自治に委ねれば良く、特定の関係に国家が承認や保護を与える必要はない」という主張は十分にあり得るが、その主張自体は(やはり資源配分のありように関わるので)政治的である。ちなみにこの主張を採用する場合、近親相姦だろうが幼児性愛だろうがOKにしていいか、という問題が浮上してくる(私見では後者は「真正の合意」を確認できないので不可、前者は子供の障害発生率の高まる関係の場合には社会福祉予算の配分という問題が出てくるので制限は合理的であり得る。「じゃあ子供を作らない範囲なら自由なのか」と言われると、合意が成立し得る成人間の関係だったら別にいいじゃねえかと思わなくもないが子供って「作らない」と固く決意すればできなくなるってもんでもないよねえ)。

そもそも同性間婚姻についてのケリー氏の「各州の住民投票に委ねるべき問題だ」という意見を、町山氏は憲法的に正しいとしている。だが大統領が決めるのだろうが住民投票で決めるのだろうが政治プロセスには違いない。もちろんアメリカ合衆国憲法の解釈としてこの問題が州権に属しているのか連邦権限に入るのかは問題になり得るが、問われているのは政治上の問題にして良いかどうか、ではない。中絶についてはもっと明確で、胎児を犠牲にしない中絶はあり得ない。ここで胎児が妊婦の一部であるとすればその処分は個人の財産権の問題に帰すとしてプライバシ権が登場するわけだが(cf. Roe v. Wade)、胎児は(未熟ではあるかもしれないが)母親と独立した存在であるとすればこれは必然的に他者とのあいだでの資源配分の問題になる。後者に立てば中絶の可否は明らかに政治上のissueになり得ることになるし、前者・後者のいずれを取るかもまた政治的問題である。市民の100%が前者を支持しているなら、そこでは中絶は政治上の問題にならないと言って構わないが、現実はそうではない。

なおバックラッシュだとか言われるとばかくさいので補足しておくと、私自身は同性間の「婚姻」というのは筋の良いアイディアではないと思っている。何故なら、(日本法上の)婚姻は(1)共同体形成機能と(2)嫡出推定機能が混在した不純契約だから。同性間において(2)の機能は意味がないのだが、元々両者を結合させておく論理的必然性はなく、いわば悪質な抱き合わせ販売である。従って(1)(2)を別々の契約類型として整理した上で、同性間だろうが多人数だろうが問題のない(1)を開放すれば良く、(2)は論理的に1対1の男女のあいだでしか成立しないのでそのような限定は維持すれば良い(生計をともにするつもりはないが特定の相手としか安定的な性的関係を持たないと決めた場合など、(2)のみを締結するパターンもあり得るだろう)。私個人としては好いた女と所帯を持ちたいと思っているので(1)(2)をセットで購入する所存であるが、人様がどうするかはご自由ご勝手に決めれば良いと思う。つまり私は自由主義者であり、共同体の拘束を肯定するアメリカ流のcommunitarianでも日本のオヤジ保守でもないし、国家の役割を重視しているのでlibertarianでもない。まあold liberalとかtrue liberalとか呼びたまえ。

ところで前述のCNN調査だが、最後の方の項目が面白い。Vote by Size of Community(コミュニティのサイズによる投票動向)だが、もちろん全体的にはケリー氏が大都市で強く、ブッシュ氏は田舎で強い(とはいえどちらも概ね60:40なので圧倒的な差というわけではない)。ところが前回からの変動を見ると、ブッシュ氏は大都市・小都市で大きく勢力を伸ばしている(順に+13、+9)一方、小さな町ではケリー氏に大きく勢力を奪われ(-9)、田舎でも現状維持(0)にとどまっている。これが有権者の動向を正しく反映しているとすれば、民主党は田舎への浸透策が成功したものの都市を切り崩されているということになる。今回の選挙を都市・農村対立の激化と読み解くことが妥当なのかどうか、もう少し丁寧に見る必要があるのではないかと思っている。

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コメント(6)

こんにちわ、あまり人には言えないリンクたどって着ちゃいましたw
リファラーとか見ないでやってください。
特に気の利いたこともいえないんですが硬軟織り交ぜた面白い記事ですね。
お気に入りに入れたのでちょくちょくのぞきに来ます〜

こんにちは。
「腕前シリーズ」の完結、お疲れ様でした。結構な力作になっちゃいましたね(笑)。非常に読み応えがあって面白かったです。
「(原文ママ)」の該当箇所は、私もコメント欄で読んでいて「ん?」と気になりましたが、むなぐるまさんが、こういういかにもタイプミス的なことを指摘したら火に油を注ぐような気がして、恐らくあえて言及なさっていないのに対して、ここでは逆に丁寧に指摘されていたのが、かなりウケました。

さてさて、かの御方のようにブッシュ大統領の再選を容認しない(したくない)人々はこれからどうするんでしょうね。失職させるべく今まで以上に反対運動に精を出すのであれば、その邪魔をするつもりはないので(応援するつもりもないけど)、ぜひ気が済むまで頑張っていただきたいものです。
個人的には、再選されたら「不正投票の疑いがある」とか「ディーンだったら勝てたはず」ということを言い出す人がいるんじゃないか、と想像していたら、すぐには出てこなかったので「おや、今回は静かなものだな」と意外に思うやいなや、やっぱり出てきたので、面白いようなつまらないような。

それにしても、更新休止中にも関わらず議論に参加している、むなぐるまさんの真摯な態度に頭がさがります。
そして、なんだかんだいっても相手にしているおおやさんも親切で真面目な方だなあ、と思います(笑)。

お風邪を召してらっしゃるようなので、お体おいといください。
私も風邪をひいてしまい、現在、山瀬まみさんのマネ(古い…)が絶好調です。

>まーくん さん
いらっしゃいませ。

>spicaさん
うを、リアルで捕捉されている。いや私はまじめというより思ったことを言わずにおれない社会不適応者であるというだけなのです。これ以上腹ふくるると困るし。
まあ当分は「喪の季節」というか、否認→怒り→受容というプロセスが続くのでしょう。選挙の公正さを疑う言説は出ましたが、あまり根拠がないという話になったと むなぐるま氏が伝えてくださっていますね。
一方おそらく中心的な人々はそれどころではなくて、今回の敗因の分析と対策立案という、4年後を見据えた行動を急いでいると思います。ケリー氏自身は4年後を狙うと示唆したようですが周囲は冷淡なようで(そりゃこれだけ手ひどく負けりゃあなあとは思いますが)、「次」を狙うレースはすでに始まっているのでしょう。最有力はヒラリーさんなのかな。
私は生来呼吸器が弱くて寒くなると常に咳き込んでいるので逆にたいして不調というわけでもないのですが、風邪は長引くと厄介ですからお体にはお気をつけて。

おおや さんは「異性間婚姻」と「同性間婚姻」は異なるものとお考えのようですね(異性どうしの婚姻については「資源分配」を問題にしないのにたいし、同性どうしの婚姻は「資源配分のありように関わる」との仰せ)。
もしそうなら一点だけお伺いしたいのですが、「異性間」と「同性間」とを異なるものとするいっぽうで、「同性間」と「近親相姦」「幼児性愛」などが地続きであるとお考えなのは、なぜですか?(以上、私の誤読でしたらお許しください。)

>酒井さん
ども。まず、「異性間婚姻」と「同性間婚姻」は《いずれも》「いかなる形の関係に法的保護を与えるかという」「公法的問題であり、公共的サービスという資源をいかに配分すべきかという問題であるから、政治上の争点になる」と考えています。私が否定したのは「私的関係だから政治的争点にならない」という主張です。
次に、「近親相姦」と「幼児性愛」は《許容できない関係の例》として、「あらゆる関係を許容すべき」という立場を否定するために用いています。この時点で私が主張しているのは「法的に許容され・保護される関係と禁止される関係のあいだに境界線は必要だ」ということで、「同性間婚姻」が(あるいは「異性間婚姻」も)境界線のどちら側にあるべきかはまだ議論していません。

その上で「「異性間婚姻」と「同性間婚姻」は異なるもの」と考えているかについては、第一に「異なる」と考えています。それには現行日本国憲法が婚姻を「両性の合意のみに基いて成立」すると定めているから(24条1項)という日本ローカルの論点もあるのですが、それよりも人口再生産との関連性が一般的・確率的には大きく異なるからという事情があります。前者においても再生産を行なわないと固く決意しているケースや生殖能力を欠くケースはありますから、それを制度的に保護したところで人口再生産を促進する確率は100%ではありません。しかし後者が人口再生産を行なう可能性は少なくとも現時点においてゼロですから、国家が人口の維持に正当な関心を有する場合(これが正当化できるかどうかはまた別の論点ですが)、両者に対して概括的に異なる取り扱いをすることは正当化し得ると考えます。
ただし第二に、(1)前述の通り「異性間婚姻」が必ず人口再生産に結びつくわけではなく、(2)当然ながら婚姻しなければ再生産が行えないというものでもありませんし、(3)また「同性間婚姻」は再生産自体には寄与しませんが生産された個体の扶養には貢献する可能性があります。であれば、「同性間婚姻」と「異性間婚姻」というカテゴリーのあいだに取り扱いの差異を設けるのではなく、人口生産や扶養の事実それ自体に対する保護(助成・サービス給付・控除など)を設ける方がより望ましい制度ではないかと考えています。これが最後の方の「婚姻」契約批判で述べたところですね。

別の言い方をすると、私はそもそも同性間だろうが異性間だろうが「婚姻」契約というもの自体が筋悪であると考えており、あえて言えば後者の方がより不純だと主張していますから、その意味でも「同性間婚姻」と「異性間婚姻」を区別していると言えば言えるかなとは思います。

よく分かりました。
国家目線では、共同体にとって有益な「人工再生産」をする異性間性交は婚姻という形で承認し特権を与え、共同体にとって無益あるいはコスト負担の意味で有害な性交(同性間性交、近親相姦、幼児性愛の三つはこの意味で地続きになる)は承認しない、ということには正当性がある、とおおや さんはお考えである、ということですね。
ていねいなご返答、ありがとうございました。

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