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大予言(2・完)
同じことを逆方向から示しているのが「新幹線の安全神話崩壊」というお話。24日の新潟県中越地震の際(被災者の方々のご苦労をお察しいたします)、走行中の上越新幹線「とき325号」が脱線したことを捉えて複数のマスコミがそう表現している(代表例として朝日新聞、しかしこれはここだけの報道姿勢ではない)。
しかしね、震度6強(防災科学技術研による参考震度では7)の直下型地震に震央付近で襲われて安全な交通機関てのはどこにあるのかね。いや私には物理はわからないけれど、某所によれば「とき」の襲われた848ガルという揺れはあの車体をふわっと浮かべてしまうレベルのものだそうで、戻ったときに車輪の下に線路があればいいけど、ないよねえ普通という話らしい。時速200キロ超の世界の危険という説もあるが、やはり直下型の阪神大震災では車庫に止まっていた(もちろん速度ゼロ)の電車が大量に脱線している。あの揺れで脱線しないのは跨座式モノレール(Wikipedia)くらいではないか……ってそりゃ物理的に外れないんじゃないか(笑)。
つまり直下型地震の場合に脱線を防ぐ仕組みというのは、あまり考えようがない。地震初期の微動(速いP波)を検知して本格的な揺れ(遅いS波)が来るまえに送電をストップするシステム(ユレダス)も、直下型の場合には両波の伝わる時間にほとんど差が出ないからあまり意味がない。そもそも重要なのは脱線の有無ではなく死者・負傷者を可能な限り出さないことなんだから、脱線しつつも全乗客の安全を守ったこのケースは大成功と呼ぶべきだろう。
ところがそれを「安全神話の崩壊」と呼ぶ、その「安全神話」というのは何なのかという話である。結果として被害を出さなかったことでは十分でなく、被害を最小化するための仕組みが正常に機能したことでも足りないらしい。要はいついかなる状況でも微塵も危険を感じさせるなということではないのか(「危険を存在させるな」でないのは、BSE問題をめぐる対応などを見ればよくわかる)。
いやまあそれはそれで良い。「震度6強の直下型地震に震央付近で襲われたらケガをするかもしれないから新幹線には乗りません」というのは個人の勝手である。しかし在来線は路盤自体が崩壊するような惨禍に見舞われており、もちろん偶然にそこを通っているときに崩壊していれば大惨事であったろうからより危険な乗り物である。高速道路は阪神大震災のときにも崩壊していたが、今回もボロボロになっているのでそんなところを走るのは不合理だ。一般道について言えば地震では大穴があき台風では水没し普通に走っていても後ろから追突される可能性のある危険極まりない代物であるから、もちろん利用するべきではない。さては最早「引きこもり」になるしかない……と思いきや家の中の階段や風呂場というのは事故死者を山のように出している罠のようなものでやはり危険があぶない。さていったいどうすればよいのか。
まあ死にさらせ、ということである。そもそもあらゆる可能性は危険と同居しているから、すべての危険を除去すればすべての可能性もまた奪われる。非効率を許容すれば資源を余計に消費することになり、そのエネルギーがあれば生きのびられたかもしれないどこかの発展途上国の誰かが死ぬことになる。そこまで言わんでも安心を保証するために国家を肥大させれば個人のプライバシや自由は危険にさらされることになる。お前ら住基ネットだのNシステムだのに対して何を言ってたんだと。
ある手段を採用したときにどのような成果があり危険があるのか、その上でどのような決断をするべきか。それを横文字で言えばフィージビリティであり直截に言えば銭勘定である。崩壊した「安全神話」とやらを生み出したのは、その能力を欠く勘定のできない人々なのだと、まあそういう一席。
ちなみに いしいひさいち には次のような作品もある。御巣鷹山の日航機事故だったか、大韓航空機事件だったかの後の四コマである。
「いつまでも落ち込んでいても仕方ない、とにかく何か航空機の良いところを見付けるんだ」
「できました、これなら完璧です!」
4コマ目、ポスターのコピー「地震に強い」。
「安全神話」なるものの内実はすでに いしい の作品において明かされていた、というわけ。予言者と呼んだ由縁であります。
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新潟県中越地震での新幹線脱線に関する報道について おおやにき: 大予言(2・完) で言及されていたのでちょっとだけ考えてみた。のを書き留めて置く。 いや私には物理はわからないけれど、某所によれば「とき」の襲われた848ガルという揺れはあの車体をふわっと浮かべてし... 続きを読む
どこかのニュース・バラエティで菊川怜だか誰だかが言っていたが、今回の脱線事故を受けて求められているのは、大地震の発生をP波到達よりも前に極めて確度の高い形で知ることのようです。その番組に出ていた地震学者はそういう研究が進んでいると述べていましたが、果たして実際にまさにfeasibleなのかどうか。文字通り大山鳴動してねずみ一匹ということになってしまうのではないか。
いやまあ地震波より前の「予兆」を捉えようという研究はあるわけですが(地磁気とか地下水位とか)、うまく行っていないし行きそうにないというのは東海地震研究で言われていることですな。予兆ではなくP波より速く伝わる何かを関知するというのはあり得るでしょうが、やはり直下型の場合は到達時間にほとんど差が出ないわけですから役に立たない。
やっぱりS波直撃かもということを認めた上で乗客の生命安全だけは守る仕組みを考えるというのが正解だろうという気がするのですが。