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大予言(1)
『がんばれタブチくん』の頃だから、多分20年以上は前の いしいひさいち の四コマに、こういうのがあった。さすがにセリフの細部までは覚えていないので現在の例にアレンジすると、こんな感じ。
X 「巨人の渡辺オーナーと西武の堤オーナーが密会したそうだ!」
A 「さてはホモだな」
憤然とするXをなだめる別の年輩の記者Y。
Y 「許してやってくれ、芸能部から移ってきたばかりなんだ」
B 「それはあれですよ、株式の不正取引問題の報道について……」
Y 「経済部から移ったばかりなんだ」
C 「わかったぞ! 高橋・松坂・谷繁の三角トレードだ!! これはスクープだ!」
Y 「すまんすまん、スポーツ部から出たことないもんだから」
なんで思い出したかというと、朝日新聞の紙面で見た西村編集委員(おそらくスポーツ担当)の印象が、ここで登場するスポーツ部から出たことのない記者によく似ていたからである。三人の記者(A・B・C)は服装・容貌ともきれいに描きわけられている。カーディガンを肩にかけた石田純一のようなA、スーツ姿で真面目に語るB、そしてぼうぼうの髪に無精ヒゲで唾を飛ばすC。新規参入問題に続くダイエー再建問題・裏金問題・持分偽装問題など混迷を続けるプロ野球をめぐって、どうやら「敵」認定した人間相手に八つ当たりに近い批判を向けたり、とにかくライブドアを擁護したりする記事を連発している西村氏の外見がCによく似ていたのがあまりにも「そのまま」で、しばらく腹を抱えていた。
前者の例。日本シリーズ第一戦途中の誤審問題についての記事末尾で、コミッショナーの根来氏が事件発生の1時間近く前に球場をあとにしていたことに触れ、こんなことでシリーズ開催を「管理」していたのかと批判する。なにか、じゃあ新潟地震が起きたら総理は新潟に行かんといかんのか。事件が起きたのを認識し、問題解決のためには自分がその場で処理すべきことを認識しながら立ち去ったとでもいうなら批判も妥当だろうが、今回のケースではそのどちらの条件も満たしていない。いったい元法律家である根来氏がその場にいたとして、判定をめぐる判断においてどんな役に立ったというのか。コミッショナーに求められる「管理」とはどう考えてもフィールドで起きる問題を裁くことではなく、プロフェッショナルである選手と審判たちが競技に専念できる体制を整えることだろう。前者については、そうだね、じゃあ次のコミッショナーには細木数子でも選んだらどうだろうね。
後者の例はライブドアと楽天に対する球団運営計画の公聴会をめぐって、経営状態などを見れば楽天優勢であることを認めた上で、しかし1リーグ体制に向かう風潮に新風を吹き込んだ熱意を認めるべきではないかと主張したもの。新風だの熱意だの言うなら、「私も球団を持ちたい」とか手紙を送ったらしい個人の計画とやらも検討してやれよ。選手が安心できる環境をとか、夢を持てる球界をとかご大層な口を叩くことと、経営状況のより悪い会社に球団を任せることはどう両立するのか。
両方に共通している要素はフィージビリティに対する感覚の欠如であると、今回は言って良かろうと思う。そのへんがいかにも「スポーツ部から出たことのない記者」みたいで、本気で冗談じゃないかと思った。人を動かすにもモノを使うにも金がかかるのだし、誰かのふところから金をかっぱいでくるスキームを成立させない限り何もできないのだということを魂に刻んでおくべきだと思うのだが、まあこの国では子供を冷厳な事実にさらすのを嫌う風潮があるからねえ。つづく。
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