たてつづけに3冊読了。

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そんなことをしている暇があるのかと小一時間(略)。平行して読んでるからなかなか読み終わらないんだよね。うち1冊はハズレでしたので省略。

  • J. L. キャスティ『ケンブリッジ・クインテット』藤原正彦・美子訳、新潮社1998。←John L. Casti, The Cambridge Quintet, Addison Wesley, 1998.
  • 伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』、名古屋大学出版会2003。

キャスティ。1949年のある夜、人工知能の可能性について「五人の知の巨人」が集って議論をしたという想定のフィクション。登場人物はウィトゲンシュタイン(哲学者)、シュレディンガー(物理学者)、ホールデイン(遺伝学者)、チューリング(数学者)、スノウ(小説家・物理学者)。

まあふつう。知能の再現性について肯定的なチューリングと、生活形式の共有を重視するウィトゲンシュタインの対立を軸に展開させるという筋書きで、基本的な問題はよく踏まえていると思う。入門書としてはよいのでは。

ただしあくまでフィクションなので後世の議論を先取りしている部分がある(eg. サールの中国語部屋)点に注意。またウィトゲンシュタインの見解はクリプキ的理解に依拠しており、いわゆる生活形式説を強調している(さすがに主張可能性説にはなっていない)。ウィトゲンシュタインの行動はかなりそれっぽく描かれていてよい。

翻訳の問題。一貫して「ヴィトゲンシュタイン」と呼んでいたり、最後に「フォン・ライツ」なる人物(多分フォン・ウリクト)が出てきたり、まあ畑違いだから仕方ないんだけどなあという感じ。最大の問題は、原著の書誌がカバー・奥付・訳者あとがきのどこにもきちんと出ていないところ(目次あとに書いてはあるのだがcopyright表記の年号なので書誌を確定できない)。家庭内のできごとを書くよりそこをきちんとしろと訳者には言いたい。

伊勢田(ここから25日追記)。占星術や創造科学、超心理学といったいわゆる疑似科学を題材として、科学とそうでないものを識別する「線引き問題」を説明しようとしている。興味を持ちやすい内容を扱っていることもあって、科学哲学の教科書としては成功しているのではないかと。普通に読んでて面白いし。

著者の結論について簡単に説明すると、「単純に線は引けない」というもの。一つの基準を作って科学とそれ以外を仕切ろうとする試みはどれもあまりうまくいっているとは言えなくて、別の考え方が必要である。ベイズ統計学のような確率的思考を導入して、程度の問題として扱おうというもの。極めてまっとうだと思うのですが、ああやっぱりベイズ主義を勉強しないといかんのか。数学わかんないんですけど。

一点だけ気になったことを書いておくと、著者は観察の理論負荷性の問題はあまり深刻に捉えなくていいのではないかと述べている。正統科学でも疑似科学でも、理論の基礎になるような観察データのレベルで非常に深刻な不一致を見たりはしていないではないか、というわけ。この問題に関してはそう言ってもいいように思うのだけれど、やはりそれは我々と基本的な観察をも共有できないような根元的な他者を排除したあとの段階だからではないだろうか。つまり疑似科学問題の外側に、「根元的に違う科学」とか「根元的に違う世界観」があるかもしれないということ。しかしもちろんその場合には、我々の観点からそれを科学なり世界観なりとして認識することができるか、という問題もあるわけだけれど。

余談ですが著者の伊勢田先生とは某委員会で一年間ご一緒していました。この本のあちらこちらでこう何と言うか、「まんまですな」という感想を抱いたわけではあります。

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同じWrightでもVon Wrightは「ウリクト」、Crispin Wrightは「ライト」。結構紛らわしい。

von Wrightについては今でも「ライト」と英語読みする人もいるのですが(eg. 飯田隆先生)、しかし「ライツ」はいずれにせよねえだろうと思うわけではあります。

> 知能の再現性について肯定的なチューリングと、生活形式の共有を重視するウィトゲンシュタインの対立

わたすがこんなことを書くのも難ですが,天才ほ○同士の対決ですな.w

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